Sarah Vaughan『Crazy And Mixed Up』
このブログでヴォーカリストをとりあげるのは初めてかもしれません。
歌モノのジャズは予定調和感が強いものが多くてあまり聴きませんが、中には好きなシンガーもいます。
そんなわけで今マイブームになっているサラ・ヴォーンを取り上げたいと思います。
サラ・ヴォーンといえばエラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイに次ぐ三大ジャズシンガーの一人ですが、知名度のわりに今ひとつ存在感が薄いと思うのは僕だけでしょうか?
サラは活躍し始める年代が2人に比べてちょっと遅く、しかもハードバップ全盛期と重なっています。
「サラと言えばこの1枚!」という決定打が無いことも印象の薄さに関係あるのかもしれません。
ビリー・ホリデイなんかはその生涯だけで酒が飲めるぐらい波乱万丈な人生ですし、エラはレコーディングにおいて恵まれたチャンスを掴んでいて、それに比べるとサラはパッとしないキャリアと言えます。
今回取り上げるのはサラ晩年の名作と言われる『Crazy And Mixed Up』です。
ヴォーカリストの多くは脂の乗った若い時期に名盤を遺しているのですが、こちらは円熟のまろやかさが特徴となっている1枚。
サラと言えばコブシとヴィブラートでコテコテなイメージがあったのですが、たしかにアクは強いものの後味がサッパリしてるのはやはり晩年だからでしょうか?
このアルバムの目玉はなんとテーマなし、アドリブのみで疾走する『Autumn Leaves』。
ここでのジョー・パスとサラのスキャットがとにかく格好良い!
あくまでもストックフレーズに頼らず即興勝負といった畳み掛けで刺激的。
ヴォーカルにしかやり得ない自由度の高いスキャットは必聴。
ついでに「ジョー・パスってパット・マルティーノの師匠だったんじゃない?」ってくらい16分フレーズやリフレインの雰囲気が似ていて驚き。
数々の「Autumn Leaves」を聴いてきましたが自分の中ではトップ5に数えられる名演だと思います。
かといって邦題を「枯葉」にしてしまうのはちょっと安直すぎなように感じますが(笑)
あまり話題に上がらないのですが2曲目の「That's All 」も良い演奏で、僕は専らこっちを聴いてました。
テーマの崩し方含め、ジャズヴォーカルの良さが詰まってるし、ダークホースのピアノ弾きローランド・ハナの活躍が素晴らしい。
正直今まで聴いてこなかったハナでしたが、独特のドライブ感と時折のハミ出しっぷりがモロ好みです。
ジャズヴォーカル盤にありがちな予定調和ではなく2人のサイドメンによる高クオリティな演奏となっています。
やはり「Autumn Leaves」は一聴の価値、アリです。
Roland Hanna (pf)
Joe Pass (gt)
Andy Simpkins (ba)
Harold Jones (ds)
2.That's All
3.Autumn Leaves
4.Love Dance
5.The Island
6.Seasons
7.In Love Vain
8.You Are Too Beautiful