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マニピュレーターが知っておいて損しない話(09)リハーサルその前に。ファイル整理編

あ、、、僕だけ紹介されなかった。。(リハ初日にて)

引きこもりすぎの反動で、地方で盛り上がりすぎる皆様。

こんばんは、もうりです。


えぇっと先日の記事で一回燃え尽きました。。。
が、ここで書かないとやめてしまいそうなので、
仕事そっちのけでなんとか頑張りますw

さぁ、今回からは 実践編です。

マニピュレーターがどういう作業をしているのか、
これを知ってもらうのが1番わかりやすいかもしれません。

押すところ以外の僕も見て!!
はい。すみません。

一度、時間を巻き戻して、
リハーサルの前まで戻ろうと思います。

今回は リハーサルまでに行うべき仕込み その1
ファイル整理編です。

前にも書きましたが、

マニピュレーターの仕事で大事なのは準備です。

あらゆることを想定内に収まるように、
予習して、ファイルを用意して臨みましょう。
そうすれば想定外を楽しめます。。。

まず、僕らの仕事は
クライアントから、ファイルを渡されるとこから始まります。

僕の場合は、できれば、TD済みのPro Tools のファイルを
お借りするようにしています。

これは、曲の設計図でもあり、すべての素材が揃っていて、
製作者の意図を読み取ることができる地図だからです。

(今更ですが、マニピュレーター というより、
       ナビゲーター て、方が好きかも。。。)

これをしっかり解析しておけば、大体のことに対応できます。

最近では、ステムといって、ある程度まとめてバウンスしてある
ファイルを用意していただけることも多いです。

リハーサルが極端に少ない現場などでは、非常に助かるのですが、
バンドとの演奏の兼ね合いや、ライブに適した音作りの幅が
極端に失われてしまうので、時間があるなら僕は使いません。

ステムに関しましては、作成ルールも決まっておらず、
いろいろ問題のある仕組みだと思うので、
そのうちじっくりと触れたいと思います。


では、早速 作業内容に入ります。

さぁ、
ファイルをもらいました。
よくあるのは、予備曲あわせて、25曲とかでしょうか?

とにかく、まず全部ファイルをコピーします。
かならず、元のファイルは取っておくように!
直接触ってはいけません。

コピー容量が、今後
『1テラ、2テラ当たりまえ!』
になりそうで怖いです。。。

終わりましたら、次に、コピーしたファイルを全曲、
ちゃんと開くか、足りないオーディオはないか、など
確認しつつ、
今回適用する、サンプリングレート、ビットに
がしがし変換しちゃいましょう。

基本、待つことばかりの作業なので、
この間に、譜面を印刷したり、
資料用音源を聴いたりして
テンション下がらないようにしないと、

自分の人生に疑問とか出てきちゃうので
要注意です!

これで、半日~1日、終了です。


ファイルの変換が終わったら、
自分流にファイルを整頓していきます。

ステムもTDファイルも、
運良く、一人のエンジニアの方が作成していた場合、
ミックスの方法論やトラッキングも法則がみえてくるので
作業も進むほどに、スピードが上がっていきます。

悲しいかな、多くのエンジニアが関わっていらっしゃると、
人それぞれルールが違うので、
まずファイルの仕組みを理解するのに手間がかかります。
(こっちの都合なので文句は言わないように!)

曲によっては、すごいトラック数で、Bus、Auxも入り組んでいたりすると、
1曲解析するだけで、半日かかってしまうような事もあります。

ちゃんと余裕をもって早めに準備を始めましょう。。。
(オレがな!)

ここの作業をおろそかにしないことで、リハーサルでの
対応スピードが大きく変わると心得てください!

まず、

変換したファイルと、皆に配られている資料用音源が
同じものか、聴きながら判別してください。

ごくたまにバージョン違いなどもあります。
作業してから気づくと、凹むのでまず確認しましょう。

確認したら作業です。

トラック名は、自分さえ理解できればいいのですから、
すぐに判別できるように、自分流に短く書き換えていきましょう。
わからない名前だと、いつまでたっても何の音がなってるか
わかりません。。

名前が見やすくなったら、
自分が最終的に、出力するアウトプットの並びでまとまるよう
トラックの順番を並び替えていきましょう。
一つ一つ、どんなパートなのか、ソロにしてサッと確認しつつ、
並び替え、グループ組む、色をつける、バスでまとめる
などして、二度手間にならぬよう手早く整理します。

並び替えが終わったら、記憶が定かなうちに、
すべてのトラックを各アウトプットに
ざっくりアサインしてしまいましょう。
(僕の場合、16chに割り振ります)

と言いますが、どういった種類でアサインを分けるのか、、、

さっきファイル変換中に、資料用の音源を聴きましょう、
と書きました。
このときに、全体的に、どういう楽器が多いか、
考えながら聴いて、アウトプットの分け方を
イメージだけしておけばいいのです。

後回しにすると、また全パート確認することになるので、
ざっくりでいいです。
作業していくうちや、リハ中に変更する事は
手間にはならないので。

さて、そのアウトプットですが、
直接、トラックが出力される物理アウトプットに
アサインしてしまうのではなくて、
アウトプットごとに、バスにまとめておくのがいいと思います。

そうすれば、何かの事情で2ミックスに
しないといけないようなときにも素早く対応できますし、
瞬時に、アウトプットごとにレベルを変更する事ができます。


次に、

全曲マーカーを打っていきます。
マーカーを打つときは、かならず、譜面と同じ名称で、
譜面の流れが理解できるように入れてください。
リハーサルのとき、演奏者は譜面に書いてある
マーカー名で会話しますので、
自分もすぐに理解できなければいけません。

譜面も印刷しておきましょう。
リハでの会話には必要です。
さっとメモできるのはやはり便利です。

もし、
DAWばかりやってきて、
実は、、、譜面の読み方がわかりません。。。
という人がいたら、、、、
まず、すぐにネットで調べましょう。

それも億劫でわからなければ、
酒好きな親切なバンドメンバーを部屋呑みにさそい、
音楽を聴きながら酒をついで教えて貰えばいいです。
、、、、
なんて言ったら怒られそうですが、
譜面読めないままやんわり仕事するよりは
よっぽどいいので、うまく人に甘えましょう。

誰でも最初は知らない事だらけなので大丈夫です!

話がそれました。

ファイルに元からマーカーが打ってあったとしても、
これは是非、自分で打ち直しましょう。

再生しながら、マーカーを入れるという行動は、
自分なりに譜面に書き込みをするということです。

意識してこれを行う事で、曲の構成をなんとなく
脳みその片隅に入れる事ができます。
1曲の作業に、多くの時間をかけられるわけではないので
集中しどころです。

マーカーを打つ作業と同時に、
クリックを張ってしまいましょう。

まず、クリックですが、

これが聞こえなくなると、僕ら役立たずです。
(回線トラブルになり、指揮して乗り切ったこともありますが。。)

音楽的にも、

クリックの出来しだいで、
演奏のムードに大きく関わります。


いつも一緒にやるミュージシャンとなら
方法が決まっていると思いますが、
初めての方々(特にドラマー)の場合は、
何パターンか用意しておく必要があります。

まずは音色。
カウベル音、リム音、機械音、ハット音など。
このぐらいはすぐに差し替えできるように、
準備しておいてください。

4分で刻むか、8分か、
また8分の場合、裏はハットか、同じ音の音量差か。

この辺も、わかりやすいよう、
演奏する人の気持ちを考えて、作りましょう。

例えば、キック4つ打ちの曲の元気な曲に、
リムで4分のクリックでは、まったく聞こえませんし
不安になります。

ミドルテンポで気持ちのいいビートのところで
細かく、8分がなりすぎてもグルーブを阻害します。

かならず、これどっちかなぁって考えて、
2パターンは用意しておいて、
プレイリストで再生中でも切り替えられるように
準備しておきましょう。


曲頭などに、声のカウントを入れるのも大事です。
万が一、頭のクリックを聞き逃すと、拍がずれちゃいます。

1.2.1.2.3.4 

など、わかりやすく、テンポを邪魔しないような
声を入れておきましょう。


さぁ、ここまで出来ると、ファイルは綺麗に並んで、
アウトもアサインされて、クリックが貼られてます。

とりあえず、明日風邪をひいても
リハで音だけは出ます。

ここまで、全力で頑張って3日でたどり着ければ
いい感じです。

しかし、まだバランスもとれてないし、
細かいところは全くチェックできてませんね。

この後、音造りの事に入ります。

次回は

リハーサルその前に、
音の傾向と対策に、、フェードイン!!!


ではまた!

毛利泰士

マニピュレーターが知っておいて損しない話(08)システム編〜実践編。奥義です!

あれ、え~っと、、、これ押しても大丈夫だよね????

全日本マニピュレーターマニアの皆様こんばんわ、
もうりです。

昨日は、同期システムについてがっつり解説しました。
ダッキングを使用することで、だいぶ安心感が増すと思います。

では、今日はまったく逆の使い方に触れておこうと思います。
2台のコンピュータを、同期しないで使用する状況について、です。
(禅問答か!!)

スタートボタンを押して、ほうっておけば、
演奏が始まって、終わるなんて
おぬし、まさか思ってないだろうな!

やはり、ライブですから色々起こります。
むしろちょっと何か起こった方が、
事故にならない限りお客さん的には面白いです(よね?)。

事例を二つほど。

例えば、今どき多くのDAWは オーディオもループできると思います。

エンディングの繰り返しの数を決めずに、その日のテンションで合図で終わる、
なんて事よくありますよね。
その場合、2台を同期させていた場合、スレーブ機はループポイント以降
同期してるだけで、ループする訳ではありません。
大事なときに役に立ってません。。。

もし、 エンディングかと思い、
ループ解除したのに、バンドがもう1まわし突入しちゃったら。。

なんて時はどうしましょう。このままでは、僕だけ先に終わっちゃいそうです。


また、こんな事もあります。
Introの尺と、2A前の尺が微妙に違う、
2Aの長さが少し長い、とか、細かいアレンジの違いがあるときに、
「あ、歌、1小節先に歌いだしちゃった、、、
 あぁ、、バンド、歌についていっちゃった、、、」

さぁ、ほうっておくとどうなるでしょう。
Bメロはやり過ごせても、サビには色々素敵な音が待ってます。
が、1小節、僕はいま遅れています。

もう、汗かいちゃいますね、
瞬時に全身に力が入り、ぎっくり腰にでもなりそうです。

どうします? あきらめて全部止めちゃいますか??

否!
こんな時こそ、勇気をだして!
自力で合わせましょう!!!!

ブログ、その04 で説明した、ロケートの話はここにつながります。
いつでも、どこからでも、ロケート! の真骨頂です。

二つ目の例、ずれてしまった場合の対処を、
時系列で説明しましょう。

01.なにかしらの事情により、同期と演奏の場所がずれる
02.まず、マスター機の、ずれていては困る音をミュートする
 (音程のあるもの、コーラスなど。ループ、ミニマムなシーケンス、
  クリックは若干違和感あっても残しておく)
03.スレーブ機を止めて、同期モードを解除し、演奏の位置に合わせて走らせる
04.スレーブ機の音が出力されるパッチに切り替える
05.マスター機を止める

簡単にいうとこうなります。

いくつかのポイントがありますが、

大事なのは、
どうやってスレーブ機をぴったりのタイミングで合わせるか、です。
いくらタイミングよく押せる自信があっても、
音を確認せずにやるのは無謀です。

どうすれば、いいか?
これは、
DJのキューと同じ発想です。

マスター機の音をPAに出力しながら、
スレーブ機の音をセルフモニターする、です。

デジタルミキサーでまた新たにパッチを組みましょう。

(パッチE)マスター機だけ、PAにBUS/AUXが出力されて、
      スレーブ機だけステレオバスでセルフモニターできるパッチ
      (ステレオバスにクリック込み、大きめで)

(パッチF)スレーブ機だけ、PAにBUS/AUXが出力されて、
      マスター機だけステレオバスでセルフモニターできるパッチ
      (ステレオバスにクリック込み、大きめで)

この2つです。

改めて、細かく手順を説明すると、

01.ダッキングシステムの パッチD で再生中に、演奏と同期がずれる。
02.パッチEに切り替えて、コード、演奏に合わない音を
  ミュートする。(マスター機は、走らせたまま)
03.スレーブ機を止めて、同期モードを解除、
  クロックモードをインターナルに。
  セルフモニターで、DM1000のステレオバスのチャンネルをオンにする。
  セルフモニターで、マスター機のクリックを少し大きめに聴く。
04.サビなどがくる前のロケートしやすい位置へ
  演奏に先回りしてロケートして待機。
05.マスター機のクリックとスレーブ機のクリックのタイミングが
  合うよう意識して、再生。合うまで繰り返す。 
06.印象的なパートが来る前の目立たないところで、パッチFに切り替える。
07.マスター機を止める。
08.余裕があれば、同様の手順で再度マスター機のタイミングも合わせる。

これで、何事も無かったように音が途切れずに流れ続けます。

書いてるだけで肩がこるような状況ですが、十分に起こりうることです。

やはり難しいのが、再生のタイミングをうまく合わせる技術。
この状況下では、間に合わないよりはましなので、
フェーズするほど合ってなくても大丈夫です。
それでもDAWは押してから、音が出るまでだいぶタイムラグがあるので、
慣れてないとちっともタイミングが合わず難しいです(慌ててるし)。

一時停止がついてるDAWは、一時停止してから再生待機、
からの一時停止解除をすることでだいぶレスポンスが速くなります。
Dijital Performer では、この方法で
ほぼハードウェアのようにスタートすることができます。

これに関しては、そういう事態を想定して慣れておかないといけないので、、

練習です。

まさか、
マニピュレーターで練習が必要だと思いもしなかったかもしれませんが、
楽器の演奏経験の少ない方は、リズム感を鍛えるいい機会になると思います。

つぎに大事なことは、どこでスレーブ機のパッチに切り替えるべきか、です。
タイミングがあったからといって、慌ててパッチを切り替えて、
コーラスの途中とか、なにかの楽器のフレーズの途中から急に音が出たら
不自然に聞こえてしまいます。
自然につながるように位置を選ぶためには、
自分の出している同期音の内容、
全体のアレンジをしっかり把握してなくてはいけません。
仕込み、リハーサル、毎回の本番、バンドと共に音楽を奏でて
日々の変化を感じる気持ちあればできるはずです。

そう、僕らは生ものじゃなくても、音を出す側なのです。

このような姿勢でいて、上記のような出来事に対応することができると
いいことがあります。

それは、、、
バンドメンバーのクリックと同期に縛られている気持ちを
緩和することができる!


ということです。

この人は演奏に一緒についてくる、同期だけども融通がきく、
と皆が思ってくれていれば
演奏の固さも和らぎ、
音楽に躍動感を生む機会を作ることができるかもしれません。

ただ再生するだけじゃぁ、ないんです。

この技術を手にしたら1つ目の事案なんて簡単です。
スレーブ機も自走で合わせて、ループさせておけばいいのです。

さぁ、どうでしょうか?
システム的に事故を減らすのも大事ですが、
マンパワーで音楽的に事故を回避することもできます。


ライブですから!


今日は、システム編の流れから、実践編に移行してきました。
次回からは、いよいよ実践編。役に立つ Tips でもあり、
マニピュレーターが本番までにすることを
準備の段階から、紐解いていこうと思います。

次回、リハーサルその前に。 仕込み編 です!

では、みなさま、ごきげんよう。

毛利泰士

マニピュレーターが知っておいて損しない話(07)システム編_ジャムシンクとダッキング

アヒルには、ジャムソースがお似合いだぜ。。。

駄洒落ですみません、もうりっす。


今回は、お待ちかね!
みなさまから一番多く寄せられた質問。

コンピューター2台の同期システムについて、です。

ちょっと今回は長いです。
気合いが必要だと思いますが、これ最大の見せ場なんでおつきあいください。

今日も、僕の機材をもとに説明します。
わからなくなったら、前回までの僕のシステムをおさらいしてください。
理屈がわかれば、皆様の環境にアレンジして工夫することが出来ると思います。

さっそく本題に入りましょう。

前回のシステムで、2台のコンピューターにDigital Performer の同じファイルが開いてある、と説明しました。

マスター機を再生させたら、スレーブ機を同期させて、マスター機をストップしても、スレーブ機は走り続けるというものです。

この仕組み、ジャムシンクっていうみたいです。(なぜかは知らない。。。)

僕が知る限りこれを最も、シンプルに実現できるのが、MOTUのオーディオインターフェースとDigital Performer の組み合わせです。

MOTUの Firewire/USB インターフェースにはSMPTEタイムコードを発生、または同期する機能が実装されており、MOTU SMPTE Setup というソフトウェアでコントロールする事が出来ます。
(AVBシリーズは現在未対応、気になる続報待ちです)

この機能の優れた点は、

DigitalPerformerを再生する事で、曲ごとに設定したオフセットタイムからタイムコードを発生することができる。

 同期する側では、タイムコードの入力がきれても止まる事はないが、再びタイムコードが入力されると自動で新しい時間に追従する。

事です。

少し、まわりくどい説明になりましたが、最初に説明した、Digital Performer のチャンク機能と組み合わせる事で、

マスター機を再生した後にスレーブ機を再生すれば、2台が同期して曲終わりでどちらも自動で止まり次の曲あたまで待機されます。

素晴らしいでしょ?

ぼく、この機能のために使い続けてると言っても過言じゃありません。

しかも、Digital Performer とMOTU インターフェースの組み合わせは、サンプルアキュレートという技術により、精度の高い同期をしてくれます。 

さて、他のソフトではどうなのでしょうか??
今日は省かせてください!!!!!
先に進みます!(ご意見、アイデアお待ちしております)

これにより、ジャムシンクは可能になりました。

さて、このようにする事で、ミキサー(DM1000)には、2台分の音声が入力されてます。
聴いてみると、綺麗に同期されているので、音がフェーズします。
気持ち悪いです。
このままでは、PAに出力なんぞ決してできません。

というわけで、DM1000のパッチを組んで出音をコントロールします。

瞬時に音も途切れずに、音の入力元、出力先を変更できる、、、
 デジタルミキサー万歳です!
ありがとうテクノロジー。

まずは、これだけ作りましょう。

(パッチA)マスター機だけ、PAにBUS/AUXが出力されて、マスター機だけステレオバスでセルフモニターできるパッチ

(パッチB)スレーブ機だけ、PAにBUS/AUXが出力されて、スレーブ機だけステレオバスでセルフモニターできるパッチ

(パッチC)両機とも、PAにBUS/AUXが出力されないで、両機ともステレオバスでセルフモニターできるパッチ

これにより、本番時は、通常 パッチA で良いという事になります。
リハーサルのときエディットしたり、本番前やMC中に音を確認したいときは、 パッチC 。マスター機がトラブったとき、スレーブを使うには、パッチB

です。

しかし、これにはひとつ問題があります。
再生中にマスター機が急に止まってしまった場合に、ジャムシンクしていても、すぐに気がついてパッチを切り替える事ができるか、という事です。
なにか違う事に気を取られていたり、驚いてパニックしてしまう事も考えられます。
その間、無音になってしまいますし、演奏がずれていってしまう可能性もあります。
できれば、自動で切り替わってほしい、、、というのが人情ですね。

そこで、登場するのが、、、、、ダッキングです!!

サイドチェインですっかりおなじみのあの機能です。

ざっくりいうと、あるチャンネルに音声信号が入ってくると、別のチャンネルの音量を変化させる事ができる、というダイナミクス系の機能です。

YAMAHAのサイトで調べた、分かりやすい説明によると、

 「BGMが流れてて、そこにナレーションが入ると自動的にBGMが小さくなり、しゃベリ終わると自動的にBGMの音量が元のレベルにもどる」

というような、効果です。

この効果を利用するのです。
上の文章を実際の機能にざっくりと置き換えると、順番はすこし違いますが

 「マスター機の音声が再生されていると、スレーブ機の音は自動的に小さく(ゼロ)になり、マスター機が止まると自動的にスレーブ機の音声が元のレベルで再生される」

こういう事です。
なんとなく、わかってきましたか?

これを実現するには、どのような機材が必要でしょうか??
沢山の入力が必要で高くなりそうですねぇ。。。。

と思いきや、 なんと!

デジタルミキサーで、できちゃいます!!

YAMAHAの一通りのシリーズでは可能です。 
多分ですが、Behringer の Xシリーズでも可能だと思います。

ほんと、ありがとう!!!

では、さっそく解説です。

ちょっと難しいですが、
しっかりと考えてください。
理屈でわからないと、トラブルに対応できませんからね。

上記の文章から考えますと、
マスター機の音声が入力されると、スレーブ機の音量が反応する、という順番です。
これ、機材的な言葉に置き換えると、
マスター機の音声をソースとして、スレーブ機の音声がディスティネーション、
という言い方に変わります。。。。。。。

大丈夫か?! ついてくるんだ! 君なら、、、できる!!

深呼吸だ。。。。。よし!!!

以前、僕の機材では両機とも16回線ずつ入力していると書きました。
チャンネルは、1ch-16chマスター機、17ch-32chスレーブ機です。
さぁ、なにを持ってしてソースで、どれがディスティネーションという事でしょうか?

まず、ディスティネーションは、結果が出る側(音量が変化する側)なので、スレーブ機のすべて。この場合17ch-32chです。

ということで、ダッキングは、17ch-32chにかける事になります。

ここから パッチD 作成です。

ダッキングは、ダイナミクスプロセッシングに属しますので、コンプ、ゲート、のページにあります。
17ch-32chチャンネルに、インサートしましょう。
(YAMAHA的には、GATEをオンにして、ライブラリーから DUCKING を選ぶ、です。)

これら16回線は、音楽的には、同時に音量がゼロになり、同時に復帰しなければなりません。
ということは、すべて同じように効果が適用されるべき、という事です。

では見てみましょう。




画面には、DUCKINGの効果を決める数値の設定と KEY IN SOURCE の選択の項目があります。

この、KEY IN SOURCE(ソース)は、マスター機から音声が出てるか、出てないかを判別できるチャンネルでなければなりません。

その場合、ソースはマスター機のどのチャンネルになるでしょう?
ここが難しいんです。
ソースは、YAMAHAでは、どれか1つのインプットチャンネルか、1つのAuxを選ばないといけません。

ソースに選ぶ、マスター機からのチャンネルの音声は、曲の音の出だしから、完全に終わるまで出ていないと、途中で、スレーブ機の音も同時に出てきてしまう事になってしまいます。

結果からいうと、
リズム、コード、ボーカル、クリック。
どれも、無理なんです。

リズムもコードも歌も、曲の中でいつ音が出るか、わかりません。
クリックは頭からいるかもしれませんが、そうじゃない事もあるし、大体、クリックの後まで音は流れてるものです。

フワァっと入ってきたり、フェードアウトなどの曲では、設定値のスレッショルドをはずれ、スレーブの音もだぶって出てきてしまいます。

さぁ、困りました。
曲頭から終わるまで、常になり続ける音声はないものでしょうか???
。。。
ありました。

SMPTE /LTC 、同期信号です!

先ほど説明した、マスター機からスレーブ機を同期させるために出ている、同期信号は音声信号です。

これはマスター機を再生した瞬間から、止まるまでなり続けています。
再生を止めると止まるようになっています(LTC の場合)。

これをソースとして使用する事で、ようやく多数チャンネルでのダッキングシステムが可能になります。

では設定する為に,マスター機のインターフェースから、音声としてDM1000の空きチャンネルに SMPTEを立ち上げる事にしましょう。

インターフェースからのSMPTE出力をコントロールする、MOTU SMPTE Setup は、インターフェースのアウトプットから1chだけ選択して、SMPTEを出力する事が出来るので、スレーブ機のインターフェースへSMPTEを送る分と、DM1000へ送る分、2つにパラにしなくてはいけません。

例えば、パラケーブル、パラボックスをつかうとかでもいいです。

僕は、MOTUインターフェースのデジタルミキサー機能を利用して、SMPTEをアナログアウト1から出力したのをアナログイン1にもどし、CueMixFXでルーティングして、アナログアウト2、3からパラで出力してます。

いざパラ出力できたら、ミキサーの一番使わないチャンネル、DM1000なら、48ch に立ち上げます。
アナログインプットは、空いているOMNI IN を使用します。
そこに先ほどパラッたSMPTE信号 を立ち上げ、入力を確認できたら、ステレオバスへの出力をオフにします(ピーガー音はききたくないですよね?)
レベルを程よくあげてください。

そしてDUCKINGの設定画面にもどり、48ch を KEY IN SOURCE の項目で選択します。
が!、、、なぜかDM1000では、ソースチャンネルに48chを選択する事ができません。
制限があるようです。

しかたないので、AUX8 を使うことにしました。出力が減ってしまいますが、しょうがありません。
48ch をAux8 に がっつり送ります。
今度こそ、17ch-32ch すべてのチャンネルで、DUCKING をオンにして、KEY IN SOURCE に Aux8 を選択します。

ようやく、これで ルーティングが完成しました。

あとは、Ducking の数値設定です。

設定の流れを説明すると、

KEY IN SOURCE の音量が、あるレベルに達すると、設定した時間後、設定したスピードでチャンネルの音量が設定したレベル下がる。

または

あるレベルを下回ると、設定した時間後、設定したスピードでチャンネルの音量が元に復帰する。

という設定です。
いろいろいじってみて、効果を試してみてください。

先ほどの写真が、僕の設定値です。

さぁ、いよいよ試してみましょう。


まず、スレーブ機だけ再生してみてください。
普通に音が出ると思います。

つぎに、マスター機を再生したのち、スレーブ機を再生です。
効果をわかりやすくするため、あえてスレーブ機を同期しないでずれた位置で再生してみましょう。

マスター機の音だけ聴こえるはずです。
しばらくしたらマスター機を止めてみてください。
1秒ちょいぐらいでヌルっとスレーブ機の音が聴こえてきたら成功です!

今度は、同期させて実験してみましょう。
マスター機が止まった後、音が一瞬止まってしまうのはしょうがありませんが、
あ!と気づいた頃にはスレーブ機に切り替わってるはずです。

どうですか??
ちょっと難しかったかもしれませんが、

これで安全安心の同期システムができあがりました!


僕が、この方法にたどり着く為には多くの時間がかかりました。
D.I.Y 精神です。
SMPTE 使えばいいんだ、って気づいたときは当時の自分を褒めまくりましたw
ちょっと考えれば出来ることではありますが、今まで、せこく企業秘密的にしてきた部分でもあります。

皆様も手持ちのものを工夫すれば、同じようなことができるのではないでしょうか?
理屈がわかれば簡単な事なので、

もちろんこの機能の専用機を購入するののも良いと思います。

ぜひ皆様も頭ひねって自分のシステムを構築してください!

そして、皆で共有して新しいアイデアを生み出したり、素晴らしい機材が生まれることを願っております。

次回は、もう少し踏み込んだ、状況に応じた、ミキサーのパッチングなど考察してみたいと思います。

それが終わったら、実践編です。

リハーサル前の、ファイルの仕込みのノウハウから説明していきたいと思います。

今回、長くなりました。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございます!
では、また次回。

毛利泰士

マニピュレーターが知っておいて損しない話(06)システム編_接続の巻

びくぅ!!!押してないのに??!!! あ、映像かぁ~。。。。。

どうもこんばんわ、毛利です。

昨日は、図を作成するのに時間がかかりすぎて、
本題に入ることができませんでした。

では、いよいよシステムの解説に入りましょう。
僕の機材でのやり方で説明しますね。

もう一度、図を貼っておきます。




今回はまず、僕のシステムの接続と本番時の音声の流れを説明しますね。

まず、音を出す前に、 デジタル機器が多いので、
クロックマスターを紹介します。

Antelope ORION32 です。

以前は、ずっと Aardvark の AardSync を使っていました。
正直いってクロックによる音の違いに踏み込みたくなかったのですが、
ワードクロックを数珠つなぎにすると、トラブルのときに問題箇所を発見するのに困るので、
分岐するためにクロックマスターは必要だと考え導入していました。

昨年、長年システムを変更していないので、大きく変えずに
ブラッシュアップしようと思い、これを導入しました。
いくつかの機種を視聴して、僕の機材と好みにはコイツが合ってました。

ORION 32 の ワードクロックアウトは4つ着いており、
そこから、DM1000 , Traveler , 828 とワードクロックを送っています。

次は、マックです。 MacMini Quad と MacMini Dual 。
2台の MacMini には、双方とも、DigitalPerformer がインストールされており、
同じ本番用のファイルを開いています。
これが本番時の DijitalPerformer の画面です。




Mac は、
片方が、マスター。常に音が出る側です。
もう片方が、スレーブ。 
マスターがトラブったときや、本番中、突発的に演奏の尺が変更されたときに合わせるのに使用します。


マスターにつながっているオーディオインターフェース(以後インタフェース)は,

 MOTU Traveler mk3 /Firewire 接続。

ここから、 ADAT Optical2系統、系16ch が出力されます。

これでわかる方にはわかると思いますが、僕のシステムは、サンプリング周波数 48k で動いてます。

昨年から、bitは極力32bit float にしてます。(32bitは編曲、録音してるとき本当にいいな、と思います。)
最近96kのファイルも増えてきましたが、デジタル端子的に、96kは手を出しにくいのと、
実際96kでファイルのコピー、バックアップが続くときの待ち時間を考えると、
ライブにおいて、96kはまだ現実的ではないな、と思っているので、
まず48kにダウンコンバートしてから、作業に取りかかることにしています。
(その辺りはまた今度)

MADI、DANTE、AES/EBU などのデジタル規格が、もっとインターフェースに普及してくれれば
考えるのですが。。。。。

スレーブ側は、 

 MOTU 828 mk3 Hybrid と MOTU UltraLite mk3 Hybrid  /どちらも USB接続。

こちらは、 アナログアウトで、両機から 8ch ずつ、系16ch 出力されています。
基本、マスター、スレーブ両方、おなじ出力数が欲しかったため2台使用しておりますが、
この3台のうちのどれかが壊れたときのための機材のバックアップも兼ねてます。
先々、システム的なことがクリアできれば、1台で出力可能な MOTU AVB 24o などいいな、と狙ってます。

その出力されたオーディオをまとめるのが、

 YAMAHA DM1000 VCM です。

DM1000 は 2003年から使い続けており、
僕にとっては大事なシステムの心臓部でもあり、音の特徴になっていると思います。
昨年、VCMバージョンを追加購入しました。以前のVersion1は予備として、常に準備してあります。

DM1000 は48インプットあります。

マスターからのADAT16chが、ADATオプションカードに入力され、
チャンネル1-16 に立ち上げてます。
DM1000 は、フェーダー16本なので、キリがいいのです。

スレーブからのアナログ16ch は、Mic/Line インプット(これも16chついてます)され、
チャンネル17-32 に立ち上げれば、フェーダーを表裏切り替えることで、
マスター、スレーブ、まったく同じ並びで立ち上げることができて便利です。

ブログ第2回でアウトプットのことにふれましたが、
僕の場合はこの機材の仕様により、
まずDAW上で16chに割り振ってアウトプットして、
DM1000上に立ち上げた後、さらに現場に合わせたチャンネル数にバスアサインし、PAに出力しています。

こうすることで、基本的な自分のルールでのフェーダーの並びを常に維持することができるからです。
視認ですぐにどこにどんな音が立ち上がってるかわかると対応も速くなるものです。

僕の16chの割り振りはこんな感じです。
アーティストにより、アレンジの方向は色々違いますが
この中で役割を決めて割り振ることが多いです。

01-02 リズム
03-04 リズム or 楽器(シンセシーケンス、SEなど)
05-06 楽器(パッドやオルガン、コード感のあるもの)
07-08 楽器(ベルとかブラスとかラインのあるシンセ等)
09-10 楽器(ストリングスなど特徴になる大事なパート)
11-12 コーラス
13 ボーカル(本番未使用)
14 ダブルボーカル
15 クリック or キック
16 クリック

YAMAHAのデジタルミキサー、DMシリーズ、02R,01V はすべて、
内部バスは 8BUS , 8AUX あるので、十分なアサインが可能です。
またダイレクトアウトの融通もきくので、様々な出力方法を考えることができると思います。

僕は以前説明したように、上記の16chを現場に合わせてBUS/AUX アサインして、10ch以内にまとめます。

PAへのアウトプットは、DM1000には、キャノンで12OUTあります。
そこにBUS/AUX アウトプットをアサインして出力します。

また図には書きませんでしたが、昨年からは もう一つアウトプット方法を用意しました。
先に、あげた ORION 32 は、 AD/DAコンバーターでもあるのです。
なので、アウトプットにも使用することが可能です。
DM1000のADATオプションカードのアウトプットに、BUS/AUXをアサインして、
DM1000 から ORION32 に ADAT接続することで、
ORION32 から16out することができます。

これにより、クロックと合わせて、少し古かった機材の音が今どきに対応しつつも
ガッツは失わないようにすることができて満足しております。

これで、PAにアウトプットできました。

細かい設定などは、また実践篇で解説しようと思います。

この他にも、DM1000 から、リハーサル時の確認用に
モニタースピーカーFOSTEX NF-4A に,コントロールルームアウトを出力。

PAには出さずに自分だけイヤモニで音をモニターするためのステレオアウトと
本番時の自分用クリック確認のために、
Mackie 1202Vlz3 に 出力しております。

そう、この Mackie 1202Vlz3 には、
PAからの2ミックスも返してもらいます。
リハーサル、本番時は常に、ここのヘッドフォンアウトで視聴していることになります。

ちょっと文章だとややこしくなりますが、
これが、僕のセットの接続になります。

これでいつでもみんなに手伝ってもらえます!!!

さぁ、接続ができたところで、
次回いよいよ!!!

みんなが知りたかったアレ。 

2台の同期について、です!!!

ついに明かしちゃいます。(ちょっと考えればできる事なんだけどねw)

鈍ミス一兎!

毛利泰士

マニピュレーターが知っておいて損しない話(05)システム編_まずは2016年僕の機材紹介

う~ん、次の言葉のあとかな?って思ったときが押すときだ! 

こんばんわ、もうりです。
今日からは、機材、システム編です。

マニピュレーター、要は音を出せばいいわけです。
ルールも専用機材もありません。
そう、君たちがあれだけ望んだ自由は、すでに手の中にあったのです!

しかし、、、自由は不安です。
他の人がどんなものを使っているのか、
そして安全に備える方法はあるのか、
乗っかれるレールはしかれているのか、、、
なかなか人の機材を見る機会は少ないでしょうから、
今まで不安で眠れないこともあったでしょう。。。。
大丈夫、あきらめないで。

今日から数回で、
ここ15年で確立してきたスタンダード紹介するから
安心して君は君のままで、、、、、なんだこれ
さぁっ、本題に入りましょう!!

まず、僕の現在のセット写真を乗せます。








ざっと、必要なものとして

コンピュータ        Mac mini x2台

オーディオインターフェイス
              MOTU Traveler mk3
              MOTU 828mk3
              MOTU Ultralite mk3
                  三代目ばっかり、、、、、

ミキサー          YAMAHA DM1000 VCM

クロックマスター       Antelope ORION32

モニター用ミキサー     Mackie 1202 VLZ3

モニタースピーカー     FOSTEX NF-4A

鍵盤            NativeInstruments KomleteKontrol S61


これが、基本のセットです。
どうやら、僕のセットは大きい方みたいです。
更にパーカッションまで置く事があるので、
その場合はめちゃくちゃ場所とります。
クレームくるので、あまりオススメできません。
コンパクトを目指しましょう。

で、これがどういう事か、すげーざっくりいうと、
Mac 2台からおなじ音が出て、ミキサーで出力したい方のMacの音だけ選んで出力される。
ってカンジです。

もしもの為にも2台同時に動かしているという事です。

要は、、、
バックアップです。
バックアップです!
バックアップです!!

マニピュレーターにとっての大事。それはバックアップだ!!

何度でも言おう。 バックアップが最重要課題です。
データでも機材でも予備はいくらでもあった方がいいです。
あとは経済事情をどう乗り越えていくか、時間を確保できるか、です。

というわけで、この後は
僕の機材の場合は、で説明させていただきます。
理屈がわかれば、各々の環境に応用できるはずです。

まずは、図解します。



はい。 生まれてはじめてこういう表を作ってみました。
4時間かかりました。 下手くそです。

、、、、疲れちゃったから、今日はここまで。

この図の解説は、また明日!

毛利泰士