川北ゆめき監督の自伝的な青春ドラマ、川北を表す「ボク」の高校時代から、なぜかずっと好きだったまなみの結婚式までの10年間を描くこの映画が、最近の青春のものを上回っている。

 不真面目で、少し女の人を軽く扱うボク(青木柚)がどんどん大人になっていくとともに、まなみ(中村守里)との関係と何年経っても、忘れられないその想いが描かれている。そして、高校の体操部で出会ったボクとまなみの先輩である瀬尾さん(伊藤万理華)が二人の間に対立するきっかけになる。

 瀬尾先輩のことに関わるボクが納得行かないまなみの選択が映画の後半の主な葛藤となって、結局青春の終わりを告げる。しかし、川北監督の原案にある問題かそれを脚色したいまおかしんじの脚本の欠点なのかわからないが、その葛藤に対するまなみの「答え」をあっけなく、すごく物足りないと感じた。映画は全部ボクの視点から描かれているので、まなみの本当の姿はわからない。それはわざとかもしれない。映画に登場するまなみはボクの思い出にいる理想的なまなみだけで、キャラクターというより、あくまで青春の比喩的な存在。

 不満なところはそれぐらいで、いまおかしんじの絶妙に、リアルな若者の描写と才能あふれる若手の俳優たちの演技をカメラの長回しで、そこに隠せない感情を引き出す川北の演出と近藤美佐輝の撮影が映画の見所。桜のピンクと白をモチーフにした美術や撮影は印象的だった。嘘っぽい感じて、空っぽの気持ちを求められるほとんどの最近の青春映画に比べれば、勿論「まなみ100%」の勝ち。たぶん私も桜の木の下に立っているまなみのことを忘れない。