6月29日(土) 高エネルギー加速器研究機構(以下「KEK」)主催の公開講座「単位と定数、そして宇宙とのつながり」に行って来ました。近いこともあって、物見うさんで参加してきました。

場所はつくば市のKEK内、小林ホールです。(中は撮影禁止)

 

公演は2コマで

「計量単位の昨日、今日、あした ~究極の基準を求めて」

産業技術総合研究所 計量標準総合センター長 臼田孝さん 

「なぜか宇宙はちょうどいい」

高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 理論センター教授 松原隆彦さんでした。

 

1コマ目の 「計量単位の昨日、今日、あした ~究極の基準を求めて」では、軽量の歴史から入って、その種類、そしてそのなかでも質量の現在の状況についてお話頂きました。

重さをはかる天秤は数千年前のエジプトの「死者の書」にも出てきたり、そのエジプトでは長さの単位をファラオの肘から先の長さで決め、それを「キュビット」と呼んで定義して、それをもとにピラミッドなども建てられていたらしい。

 

単位には定義と現示が必要で、定義は「ファラオの肘から先の長さ」にあたり、現示はその長さが皆に分かるように表した「棒」であったりする。ちょっと前の質量の現示物はキログラム原器だったわけだが、現在は違う(この話後述)。

 

現在のSI単位の基本単位はいくつあるか?とクイズされたが答えられず。

答えは以下の7つとのこと。

時間:秒

長さ:メートル

質量:キログラム

電流:アンペア

温度:ケルビン

物理量:モル

光度:カンデラ

 

そして、上記単位を定義するための定義定数なるものが決められていてそれは

真空中の光の速さc:299,792,458ms-1 だったり

プランク定数h:6.62607015×10⁻34

だったりと、この辺ですでに理解が怪しくなるガーン

 

なので、実際の質量キログラムの話へ

メートル、キログラムというといわゆる「メートル条約(1875年)」で決められて、メートル原器やキログラム原器がある(あった)というのは、私も知っている。小学校の頃の「科学と学習」で読んだぞよニコニコ

それらが保管されているフランスパリ郊外の「国際度量衡局」は、1940年のドイツによるパリ占領の際も不可侵であったそうである。入館は厳しく制限されるうえに、保管してある部屋へは3つの国から持ち寄った3つの鍵がないと開かないそうで、その様子をビデオで見せて頂きました。

そのビデオには講演者の臼田さんも写っておられました。

その「キログラム原器」ですが、うん十年かに一度の複製品との比較校正で50マイクログラム減っていたんだそうです。ただ、これ原器が減っているのか、他のものが増えたのかは厳密には分からない状態で、これがあと百年、二百年続くとどれくらい誤差がでるのか?という問題になってしまう。

そこで、長さなどと同じように不変の定義定数から定義できないかという議論が、2000年代から始まり、2018年には国際度量衡総会で新たな基準が決まったそうです。

ちょっと脱線ですが臼田さんその他、国際会議へ出発の際NHKの「サラメシ」の取材も受けられていたようです↓グラサン

 

そこで決まった新しいキログラムの定義は

プランク定数を6.62607015×10−34 J sとすることによって定まる質量

なんだそうです・・・笑い泣き

オジサン的には「質量よ、おまえもか」という気分ですが、正確さを期していくとだんだん一般の人にはわかりにくいことになっていくんですね。
ただ、ここに至るにもシリコンの結晶をアボガドロ数分の質量比とか紆余曲折があったようです絶望
 
2コマ目の「なぜか宇宙はちょうどいい」は、当たり前と思っている物理パラメータ(定数)が実は我々が生きている宇宙にとってとても微妙なバランスをもたらしているというお話。
まずは「水」
物質の中で、液体より個体のほうが密度が小さいのは「水」だけだそうです。
もし、そうでないと氷は下に沈んで池や海は温度が下がると下から凍ってくる。すると海底・湖底が凍ってしまうので水中生物は生きられないことになってしまうそうですガーン
水が凍って密度が低く(体積が増す)のは、水分子の水素と酸素が作る角度が一定で(104.5度?)で、結晶になると六角形を作るため密度が小さくなるそうですが、この角度が少し違うと逆になる(普通の物質はそう)だそうです。
 
少し難しくなって、いわゆる「弱い力」の強さ(へんな表現ですが)が、現状より少し弱いと、宇宙初期の段階で陽子と中性子が同じ数になってしまい、陽子2こと中性子2こが結びついてヘリウムだらけの世界になってしまい、現在の宇宙の姿にはならない。
また、現状より少し強いと、年をとった大きな星から外側へのニュートリノによる重量伝搬が行われず、超新星爆発が起きなくなるそうです。超新星爆発が起きないと、水素以外の様々な元素が宇宙空間に放出されないので、現在の太陽系のような色々な元素が混じった太陽・惑星系が出来ない=生物・我々人間も生まれない宇宙になるそうです(何とか理解)うさぎのぬいぐるみ
 
では、何故ちょうどいいのか?
実は、宇宙はたくさんあって(多宇宙)、たまたま我々の宇宙がちょうどよいという話があったりするそうですが、どれも推測に域を出ない話でしかないそうです。いぜん随分前ですが、SFで「あれまあ数」という、宇宙定数の不思議みたいな話を思い出しました。
 
こんな話、いったいどれくらいの人が聞きに来ているのか?
そこは、さすが学園都市のつくばで、ざっと百人余の人が聴講に来ていましたよ。
次回は11月だそうです。
そのまえ、9月7日(土)にはKEKの一般公開もあるそうです。興味のある方は是非ビックリマーク