<農業>福井・JA越前たけふ 全農のしばり離れ コメ直販
福井県越前市。九頭竜川水系日野川の水に恵まれた稲作地帯で今年1月、冨田隆組合長(70)率いる地域農協、JA越前たけふが「農家のための農協」を掲げて改革に踏み出した。
肥料・資材の調達や農産物の販売などの経済事業を子会社の「コープ武生」に譲渡し、上部組織である都道府県レベルの「経済連」、「全国農業協同組合連合会」(JA全農)を通じて行うという長年の「しばり」から抜け出したのだ。
肥料はメーカーからの直接仕入れ、コメも消費者への直接販売などに切り替え、台湾などへの輸出も始めた。全国初のケースだ。
効果は出始めている。上部組織への手数料や流通コストの削減で、農家への肥料の販売価格は平均で15~20%低下。コメも品質や栽培方法で付加価値を付け、通常価格より高く売れるようになった。
大阪府内の飲食チェーン店向けに減農薬米の栽培を始めた同市北町の農家、上嶋善一さん(62)は「やりがいがある」と語る。全国の地域農協の大半は経済事業が赤字で、貯金や保険(共済)事業の黒字で穴埋めしている。
だが、JA越前たけふでは、事業を子会社に分離したことでコスト意識が生まれ、初年度から黒字化の見通しだ。
改革を急ぐ背景には23日から日本が交渉入りする環太平洋パートナーシップ協定(TPP)がある。「TPPには反対だがグローバル社会では農産物もなかなか例外になれない」と冨田さんは危機感を抱く。
農協改革は過去に幾度も議論されてきたが、抜本改革に踏み込めないまま今に至っている。地域農協の独り立ちが経済連などの存在意義を低下させかねないためだ。
安倍晋三首相は街頭演説などで「農業・農村の所得を倍増する」と訴えるが具体策は乏しく、農協を支持母体とする自民党の公約に「農協改革」の項目はない。
「JA越前たけふがいくら頑張っても、全国的に『農家のための農協』に変わらない限り、最終的には(海外勢に)やられてしまう」。上嶋さんはそう指摘する。
TPPのみならず、担い手の高齢化や耕作放棄地の増加など日本農業を取り巻く状況は加速度的に深刻化しているが、改革への動きはあまりに緩慢だ。
毎日新聞 7月17日(水)3時31分配信
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