東日本大震災:県内水産加工業、いまだ苦境
     宮古・田老町漁協、生産能力生かし切れず「工場再開も取引先減っては…」 


 東日本大震災から2年余り。県内の主要産業の一つである水産加工業の多くはいまだ苦境に立たされている。県が沿岸部の事業所を調べた今年始めのアンケートで、業績が震災前より「良い」か「同じ程度」との回答は11・7%にとどまった。

 復旧までに得意先が別の業者と取引を始めていたり、十分な労働力が確保できなかったりで、生産能力を生かし切れていない。宮古市の田老町漁協もその一つだ。

 「工場が再開しても取引先が減ってしまってはどうしようもない」。田老町漁協は主力の「真崎わかめ」の収穫が最盛期を迎えているというのに、漁協の水産加工場長、鳥居高博さん(48)はため息を漏らす。

 壊滅した養殖施設や加工場を復旧させ、ワカメの水揚げと出荷を再開したのは震災から1年後の12年の3月。その時には主要な取引先が仕入れ先を他県の生産地に切り替え、戻って来なかった。

 関西では、福島第1原発事故による風評被害が追い打ちをかけ、売り上げは震災前の半分近くに激減した。

 従業員は、津波で自宅が流されて田老地区を去ったり、雇用条件の良い他業種に転職したりと、震災前の約100人が約70人に減った。

 3月下旬から4月中旬は最盛期で、湯通しや塩漬けなど1日60トンを加工する。勤続20年の山本定子さん(57)は「働く場所があってありがたいが、人手が全然たりない」と話す。

 現在稼働させている生産ラインは1本。事業再開後は公的な補助は出ないものの、漁協は来年、震災前と同じ2本に戻す予定だ。「ワカメの水揚げは去年に比べて増えた。本当の意味での再建はこれからだ」。鳥居さんの表情は晴れない。【浅野孝仁、宮崎隆】

 ◇県、商談会取り組み 販路拡大など支援
 県のアンケートでは、ほとんどの水産加工業者の業績が震災前のレベルを回復していないことが浮き彫りになった。

 県は他業種も含め、商品開発と販路拡大を支援する個別相談会や、原発事故による風評被害防止のため、県産品の加工業者と流通業者を対象とした商談会を開くなど、取り組みを進めているがなかなか実を結ばないのが現状だ。

 調査は沿岸12市町村の被災2462事業所を対象に実施し、1640事業所(66・6%)が回答した。78・9%が事業を「再開」か「一部再開」したが、震災前との業績比較では、卸売・小売業も「良い」か「同じ」が26・3%しかない。

 一方、建設業は復興特需によって62・2%が「震災前よりも良い」と答え、明暗が分かれた。

 現在の課題は全体の39・0%が「売り上げや利益の低下」、29・9%が「取引先の減少」と回答。事業再開後も、苦しい経営が続いている。

毎日新聞 4月16日(火)11時33分配信






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