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おひとりさま族 / 韓国 90分

2021年製作 AmazonPrim ☆3.8

2024年59本目(韓国映画86本目)

カード会社のコールセンターに勤めるジナ(コン・スンヨン)は、どんなクレームにも沈着冷静に対応できる優秀な職員だが、公私ともに孤高の生き方を貫いている。同僚との会話はなく、昼食も一人、帰宅しても一人。外出時はスマートフォンでひたすら動画を見続け、外界を遮断し、己の領域を守ることを怠らない。母の死後、唯一の肉親となった父親とも疎遠だ。ところが研修生スジン(チョン・ダウン)の教育係を任された彼女は、指導どころか対話もおぼつかない。さらに、アパートの隣人が人知れず孤独死していたことが分かり、ジナの生活は揺らぎ始める…。

 

何気に好みが似ているりぃさんのブログで

紹介されていて、

これは、私が好きかも・・・と思ってました。

知らない内にAmazonPrimで配信されてて、

早速観ました。

 

観る前は、ひとり時間を満喫する、

ゆるりとした話が、

私の好み・・・と思って観始めたんですけど。

 観始めると、そんな「ほんわか」ではない位、

トゲトゲしていて、想像以上に、

私には刺さる映画でした。

 

この作品は、一つの過程を

描いているのだと思うんです。

自分なりの「ひとり時間」を見つけるまで。

 なので、ジナが特別ではなく、

生きているなら誰しも通過する時期。

きっと、自分自身知らない心の動きを、

それはそれは丁寧に、

あぶり出しているように思えるのです。

 

「一人時間」と「孤独」の境界は難しくて、

その匙加減は、自分の気持ちに委ねられる。

 その匙加減こそが、人生の学びであり、

本当の自分を知る事なんじゃないかな。

 

ジナは、頑なに一人で生きていて。

それは多分、両親の関係への怒りに 

起因しているように思う。

怒りは、ジナから素直さや朗らかさを奪い、

平和な世間との温度差が、許せない。

 両親への怒りは、世間への怒りに代わり、

彼女は孤独に生きることを、決意した。

 社会と一線を画し、孤高に生きる事が、

彼女のプライドになり

鎧になっていったのだと思う。

 自分の殻に閉じこもれば、雑音が入らずに、

怒りなどの感情に振り回されない。

 

けれど、新人のオペレーターや、

新たな隣人と接していく事で、

彼女の心に風穴があく。

 こういう生活をしていても、

穏やかな生活ではない事に気付く。

根本に流れる怒りは、消えはしない事に気付く。

 肩の力を抜いて生きる人たちを、

1番羨ましく感じていたのは、

自分なのかも知れない。

 

ジナは新人オペレーターさんに

電話をして、謝る。

謝る事で、自分自身をも

解放させる感が素晴らしかった。

プライドを捨てて、謝ることで、

重荷でしかなかった鎧を

脱ぎ捨てる事が出来るのだ。

 

ジナは、家のカーテンを開けて、

テレビを消す。

 少しやわらいだジナの表情。

彼女には、全く違った世界が、

見えているはず。

 

 これはジナに限らず、多くの人が

知らず知らずのうちに

経験している事なんじゃないかな。

 自分の生き方を模索して、

自分が振り回されない、

傷付かない生き方を選択する。

そして、自分自身を豊かに満たそうとする。

 

 それは、一人でいる・・という事だけではなく、

仕事だけに打ち込んでみたり、

自分の事だけに没頭してみたり、

刹那的に生きてみたり。

人生において、一人よがりに生きていた時期だ。

 けれど、そういう生き方が、

果たして正解なのか・・・と

考える時期って、絶対あって。

 結局、その生き方が自分に合っているのか??

自分が求めているものは、これなのか?

という自分自身への問い掛けに辿り着く。

 そして、その答えこそが、「自分らしさ」

なんじゃないかと。

 

人間は無意識に、自分らしく

生きる道を模索していて。

 そういう気付かない時期を、この作品は、

丁寧に描いているのだと思う。

 

ジナのような生活をしていても、それが

「自分らしさ」なら、孤独ではない。

 人によって、「自分らしく生きる」

選択は様々だから。

 

奇しくも、最近観た「天狗の台所」という作品で、

「豊かに実る場所」というフレーズがありました。

まさに、コレだよね。

その場所を見つける試行錯誤の末の、

その分岐点を、描いた秀作だと思います。

 

 余談ですが、私も22-24歳くらいに、

相当散財する時期があって。

毎日のみに行って、

オールでカラオケ行ったり・・・。

 家に帰るのも寝るだけ・・・

みたいな時期があって。

本当に、ある日、

久しぶりに部屋のカーテンを開けて、

「このままじゃ、あかん!!」

って思ったんですよね~。

 あの時、自分の心の動きが

どうだったかは分からないんだけど、

あのカーテンを開けた瞬間の、

何とも言えない感覚だけは、

こう心に残っているんです。

 その日から、手帳に日記をつけはじめて、

1日の重さを、こう、実感したのを覚えてます。

 遊び呆けていた2年間の、毎日の重みの軽さを、

「勿体ないことした!!」って思ったんですよね。

確か、消費したお金の計算もして、唖然として。

でも、何も手元に残っていないんですよ。

飲み代とかカラオケ代に消費されてるから、

残るわけないですよね。

 

なので、ジナがカーテンを開けた瞬間の、

その気持ちは、共感しかなかった。

 

今、そのカーテンを開けるまでの心情を

思い出そうとしても、思い出せなくて。

でも、その2年間、凄く空虚だった記憶はある。

 勿体ない時期だったとは思うけど、

これもまた、その時があってこその

「今」だと思うようにしてます。

でも、正直、振り返ると、

本当に無駄だったな~と思う。

 せっかくの一人暮らしだったのに。

 なんか、色んなものを、

無駄にしてしまった感じがあるので、

私には「黒歴史」です。

 

なので、この作品も、共感出来ない・・・ 

って思うかも知れないけど、

自分の人生を、振り返ると、

割と誰しも経験している事

なんじゃないかな~って思う。

 というか、今なお、

その真っ只中にいるのかも知れない。

なかなか、どうして、

「豊かに実る場所」に行きつくのは、

そう簡単じゃない。

模索して、行き詰って・・・・

 そんな時こそ、部屋のカーテンを

開けてみるのも、いいのかも知れない。