街燈に火をつけるのは、星を一つ、よけいにキラキラさせるようなものだ。でなかったら、花を一つ、ぽっかりと咲かせるようなものだ。
―サン=テグジュペリ『星の王子さま』(内藤濯訳、岩波書店、2021年)
 ※『星の王子さま』からの引用はすべてこの版より行います。

 

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今回は、

POWER OF LOVEプロジェクトにおける

ホシの役について

書いていきたいと思います。

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 ※この記事は、こちらの記事の続きです。


※考察をはじめから読むには、こちらをご覧ください。

 

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(13) HOSHI 《トラ/点燈夫》 

 

 ホシにも二つ役があると考えられます。

 

 一つは、『星の王子さま』に登場するトラです。Attacca Op.2のコンセプト・フォトは、こちらのイメージではないかと思われます。

 

 もう一つは、同作品に登場する点燈夫です。こちらは非常に重要な人物で、このプロジェクトにおける「炎」や「大人」を肯定的なものに変え、POWER OF LOVEの物語を完結させる役割を持っています。

 

 まずはトラからお話ししましょう。

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《トラ》

[画像1]

9th Mini Album 'Attacca' Op.2のコンセプト・フォトの撮影をするホシ。後ほど引用するビハインド動画よりスクリーンショット。

 

 これまでに書いてきた通り、POWER OF LOVEプロジェクトにおいてパフォーマンス・チーム「空の住人」を表していると考えられます。

 

 プロジェクトの予告のようになっていた2021年1月のオンラインコンサート'IN-COMPLETE'では'MOONWALKER'を披露。Attaccaのリリースが近づいた10月の'SEVENTEEN's dawn is hotter than day'では、空の写真がある部屋に居ました(他のチームの部屋にも、それぞれの役割に対応するかのように、サボテンやジョウロが置かれていました)。

 

   'Attacca'Op.2のイメージも、それ単独では何を表しているのかはっきりとしないものの、これらの情報と合わせて考えると、「宇宙の住人」に見えてきます。

 カラーコンタクトを着用し人間以外の生命体のようなミステリアスな雰囲気を醸し出しており、黒を基調とした背景には大きなガラス箱が用意されていました。

 

上の動画よりスクリーンショット。バラ役と考えられるディノの髪は赤く、大きなガラスの箱がある。

 

 これまでにお話ししてきた通り、王子さまはディエイトバラはディノヒツジはジュンです。そして、王子さまが暮らす惑星にいる生き物は以下の通りです。

 

(1) 王子さま

(2) バラ(王子さまにガラスの覆いをねだる)

(3) ヒツジ(王子さまが地球から連れて帰った)

(4) トラ

 

 そう、『星の王子さま』には、トラが登場するのです。

 

Saint-Exupery 'Le Petit Prince' (Gallimard, 1946)

 

   しかし、登場すると言っても、「実在」はしません。というのも、トラは、バラが見栄を張って吐いた嘘の中に登場するからです。

 

 以下にその場面を引用しますので、ぜひ、王子さまをディエイトバラをディノだと思いながら読んでみてください。

 

 花は、咲いたかと思うとすぐ、じぶんの美しさをはなにかけて、王子さまを苦しませはじめました。それで、王子さまはたいへんこまりました。たとえばある日のこと、花は、そのもっている四つのトゲの話をしながら、王子さまにむかって、こういいました。

爪をひっかけにくるかもしれませんわね、トラたちが!」

ぼくの星に、トラなんかいないよ。それに、トラは草なんかたべないからね」と、王子さまは、あいてをさえぎっていいました。

「あたくし、草じゃありませんのよ」と花は、あまったるい声で答えました。

「あ、ごめんね……」

あたくし、トラなんか、ちっともこわくないんですけど、風の吹いてくるのが、こわいわ。ついたてを、なんとかしてくださらない?」

 

 ぼくの星にはトラなんかいないと冷静に正してしまう王子さまと、トラなんか怖くないと言ってみせるバラ。なんだか、パフォーマンスチームの日常会話を聞いているようです。

 

 トラは『星の王子さま』の中ではかなり端役ですが、コンセプトにしている作品の中にトラの役があるのに、SEVENTEENの「虎」ことホシが黙っているとは思えません。

 彼の芸名が「虎の視線」に由来すること、それゆえ彼がトラを自称しことあるごとに「ホランへポーズ」(トラが爪を見せるようなポーズ)を披露し、トラ模様のグッズを愛用していることは、周知の事実です。そして、ステージではその圧倒的なダンススキルとカリスマ性で堂々たるトラに見えますが、普段の姿はとても愛らしいことも。

 

 『星の王子さま』でバラが言及する「怖くないトラ」は、そんなホシにぴったりであると思います。オンラインコンサートPower of loveで披露されたホシの'ホランイパワー'にもよく合いますよね。

可愛くてお洒落なサウンドと歌詞。さすがのスキルと遊び心で魅せるダンスも素敵でした。

 

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《点燈夫》

 『星の王子さま』には、点燈夫という人物が登場します。登場するのはたった二ページほどですが、全体として「子ども」が賛美され「大人」の愚かさが強調されているこの物語の中で、唯一肯定的に描かれている「大人」である点で、非常に大きな意味を持っていると言えます。

星の王子さまの点燈夫[ Le Petit Prince(Saint-Exupery, Gallimard, 1946)]

 

 彼の仕事は、夜が来たら街燈に火を灯し、朝が来たら消し、また夜になれば灯すことです。しかし、この星は一年ごとに早く廻るようになり、今では一分間に一廻りするようになってしまったため、彼に休む暇はありません

 

 王子さまは宇宙を旅しながら様々な大人と出会いますが、皆、物事の本質を見失い、王子さまから見ると意味の無い仕事に夢中になっています。

 

 しかし、王子さまは、この点燈夫の仕事だけ、美しいと感じます。

 

街燈に火をつけるのは、星を一つ、よけいにキラキラさせるようなものだ。でなかったら、花を一つ、ぽっかりと咲かせるようなものだ。点燈夫が街燈を消すと、花もつぼんでしまうし、星も光らなくなる。とてもきれいな仕事だ。きれいだから、ほんとうに役に立つ仕事だ。

 

 また、原作小説だけでなく、POWER OF LOVEプロジェクトにおいてもこの人物が重要であると考えられるのは、2021年のSEVENTEENの活動の様々な場面に、街燈が登場していたからです。

 

 ①ジュンの'Fall in love'のリリックビデオ

 2021年5月20日公開。公式にPOWER OF LOVEプロジェクトの第一弾であると言われている'Bittersweet'リリースの一週間前です。

 このビデオは、宇宙やガラスの中のバラ地球の上に佇むキツネなど、『星の王子さま』を思わせるモチーフでいっぱいなのですが、街燈も出てきます。

JUN 'Fall in Love' Lyric Videoよりスクリーンショット。

 

 ②2021年のGOING SEVENTEENのタイトル画面

 毎回、その回にまつわるモチーフがちょこんと登場しますが、左端には一年間ずっと街燈が輝いていました。

 

 ③Online Concert 'Power of love' のTeaser (VCR)

 ご覧の通り、街燈が登場します。

 

 このように、「街燈」は、プロジェクトの本格始動を予感させるビデオの中に登場し、一年間毎週CARATたちの目に触れ続け、プロジェクトの名前そのものを冠したコンサートでも用いられたのです。これはかなり重要なものなのだと推測できます。

 

 さらに、POWER OF LOVEプロジェクトがサン=テグジュペリの作品を引用しているならば、これらの街燈は『星の王子さま』の点燈夫の街燈を表していると考えるのが自然でしょう。

 

 そして、私は、この「休まず明かりを灯し続ける者」を、ホシが演じていると考えています。 以下にその理由を挙げます。

 

①Light a Flame

 プロジェクトを読み解く鍵となるオンラインコンサートIN-COMPLETE(2021)にて、ホシを含む96年生まれのメンバーは 'Light a Flame'を披露しました(コンサート映像は載せられないので、上に公式のコレオ動画を引用します)。

 

 タイトル和訳は、ずばり「火を点けて」。曲中でも「心に火を点けて」と囁きます。

 

 ラテンの香り漂う艶っぽい曲で、大人の恋愛をイメージしたものと思われますが、プロジェクトにおいては「火を点ける」ことを歌ったこの曲のメンバーに、ホシとウォヌが含まれていることが重要であると考えられます(ウォヌについては後述)。

 

②赤のチェック

'Rock with you'(2021)のOfficila Teaserよりスクリーンショット。

 

 ホシは、プロジェクトのクライマックスとなった'Rock with you'(2021)のMVで、赤いチェック柄のシャツを着ています。

 

 さほど珍しい柄ではないので普通ならば特にメッセージ性は感じません。しかし、このプロジェクトで『星の王子さま』が意識されていることを考えると、話が違ってきます。点燈夫は赤いチェック柄のハンカチを持っているからです。

 

 それから、赤いごばん縞のハンケチで、ひたいを拭きました。

「なんしろ、とんでもない仕事だよ。むかしは、理くつにあってたんだがね。朝になると火を消す。夕方になると、火をつける。ひるまは休めたし、夜は眠ったもんだ……」

 

  'Light a Flame'のメンバーであるホシが、赤いチェック柄を身に纏っている…。だんだん、「ホシが点燈夫なのでは?」という疑惑が深まってきます。点燈夫は、王子さまが地球に来る前に宇宙で出会った人物ですので、「天空の人」を表しているチームの一員であることとも矛盾しません。

 

 'Rock with you' Official Teaser

 先ほどのスクリーンショットの元動画。全体として炎に何か意味があるように見えます。

 

③クォン・ファイヤー

 2016年の『13少年漂流記』という番組で、メンバーたちは電気を使わずに自分たちでご飯を用意しなければならず、火を起こすのに苦戦します。そんな中、ホシが火を焚く才能を開花させ、彼の姓クォンと掛け合わせて「クォン・ファイヤー」という異名が生まれました。

 

 私は2年前にアマゾン・プライムでこの番組を観たので鮮明に覚えていますが、メンバーにとっては6年前のことです。しかし、2021年の『In the SOOP』で火を起こす機会があった際、メンバーは「クォン・ファイヤー」というこのあだ名を口にしていました。殆ど毎日一緒にいて、数えきれないほどの思い出があるでしょうに、こんな冗談まで覚えているんですね。

 

 この懐かしい思い出から、「点燈夫の役は誰にする?」という話し合いの際に「火をつけると言えば、ホシじゃない?」と誰かが言い出してもおかしくないなと感じます。

 

④Change up

 ホシを含むリーダーズの曲'Change up'には、以下のような歌詞があります。

 

SEVENTEENの明かりが消えないように

僕たちのStudioは 毎日明かりが点いている

 ―SVT LEADERS 'Change up'

 

 

 これは2017年の曲ですが、『星の王子さま』を思わせるモチーフに満ちたオンラインコンサート'IN-COMPLETE'(2021)は、リーダーズが「新世界へ行こう」と歌う場面から始まり、上記の引用部分に続く'Change up'の「別の世界へ行こう」という歌詞を思い起こさせました。

 

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以上が、私がホシが点燈夫だと考える理由です。続いて、点燈夫の意義について考えてみましょう。

 

●王子と点燈夫、炎とバラの一致

 点燈夫は、『星の王子さま』原作においても、POWER OF LOVEプロジェクトにとっても重大な役割を持っています。

 

 まず、注目すべきは、『星の王子さま』における王子さまと点燈夫の一致です。

 

 王子さまが眠りかけたので、ぼくは両腕でかかえて歩き出しました。ぼくは心をゆすぶられていました。まるで、こわれやすい宝を、手にもっているようでした。ぼくは、月の光で、王子さまの青白い顔を見ていました。ふさいでいる目を見ていました。ふさふさした髪の毛が、風にふるえているのを見ていました。そして、いま、こうして目の前に見ているのは、人間の外がわだけだ、一ばんたいせつなものは、目に見えないのだ……と思っていました。

 王子さまのくちびるが、心もち開いて、どこともなしに笑顔が見えるのです。ぼくはまたこう思いました。

<この王子さまの寝顔を見ると、ぼくは涙の出るほどうれしいんだが、それも、この王子さまが、一輪の花をいつまでも忘れずにいるからなんだ。バラの花のすがたが、ねむっているあいだも、ランプの灯のようにこの王子さまの心の中に光っているからなんだ……>

 すると、ぼくは、王子さまが、いよいよこわれやすい人のように見えてきました。ともし火は、たいせつにしましょう風が吹いてきたら、その灯が消えるかもしれませんからね……

 こんなふうに考えながら歩いていくうちに、ぼくは夜が明けるころ、とうとう井戸を発見しました。

 

 この美しい場面で、王子さまの胸に存在し続けるバラは、消してはならないランプの灯に喩えられ、作者が意図したものか無意識かわかりませんが灯りを守る「ぼく」と点燈夫、光り輝くバラと炎が一致します。さらに、「風が吹く」という言葉からは、

 

 あたくし、トラなんか、ちっともこわくないんですけど、風の吹いてくるのが、こわいわ。

 

 というバラの台詞が思い出されます。まるで、バラが恐れていたことが、王子さまの胸の中から自分の姿が消えることであったかのように。

 

 さらに、これまでの考察でも述べてきた通り、

「ぼく」は、王子さまの分身です(「ぼく」が子どもの頃持っていた純粋な心が王子さま。それを忘れて大人になってしまったのが「ぼく」)。

 

 そういうわけで、この月夜の場面を注意深く読むと、王子さまの胸に灯る明かり(バラの姿)を守ろうとする「ぼく」は点燈夫であり、王子さま自身も点燈夫であるという図式が成り立つことになります。

 

 恐らく私のこの解釈は、SEVENTEENが2015年に試写会に出席した『リトル・プリンス 星の王子さまと私』の制作陣の解釈とも一致しています。

 この映画では劇中劇のように『星の王子さま』の物語が再現されますが、王さまや実業屋などの他の大人は全員登場するのに、点燈夫だけが登場せず(街燈だけ出てきます)、この映画オリジナルの「大人になった王子さま」が、点燈夫の役を兼任しているように見えるからです。 

 

 POWER OF LOVEからの繋がりが感じられる新アルバム'Face the Sun' Ep.3 Rayの写真でも、バラが燃えています[下図1,2]。

 私は、これはバラを滅ぼしているのではなく、バラ自身が燃える灯であることを表しているのだと思います。

 ちなみに『リトル・プリンス 星の王子さまと私』では(※以下この映画のネタバレを含みます)、大人になった王子さまが、主人公の少女の活躍とヒツジの絵から記憶を取り戻し、バラを残して来た故郷の星へと向かいますが、バラは既に枯れており、王子さまは絶望します。しかし、そこに、バラと同じ色、同じ形をした太陽が昇って来て、王子さまを照らすのでした。バラは太陽になったのです。

 
●炎の肯定、そして全てひとつに。
 「王子さま=点燈夫」の図式は、POWER OF LOVEに大きな転換をもたらします。

 このプロジェクトにおいて、これまで炎は毒ヘビの象徴だったからです。

 

 『星の王子さま』に登場するヘビは、「月の色をした環(わ)」「まるで金の腕輪のように、王子さまの足首にまきつきました」など、黄金色に輝く輪として描かれています。

 また、「あんたを遠くに運んでいくことにかけちゃ、船なんか、おれにかなやしないよ」「もし、あんたが、いつか、あんたの星が、なつかしくてたまらなくなって帰りたくなったら、おれがなんとか助けてやるよ」と王子さまに語りかけそれを実行するため、王子さまを宇宙に返すロケットのようでもありました。

 

 さらに、サン=テグジュペリの別の作品『戦う操縦士』でも、敵国の飛行機が火を吐くコブラに喩えられ毒ヘビ=炎は、王子さまやサン=テグジュペリの命を脅かす存在として描かれています。

 

 そして、それが'Attacca'のトレーラーや'Rock with you'のティーザーやMVに登場する炎のイメージと重なっていたのでした(考察Part2のミンギュの項と、考察Part4.5のウォヌ=ヘビ説参照)。

 

 しかし、点燈夫の存在により、炎に新しい肯定的な意味が与えられます。

 

 炎は、愛のために燃え続ける明かりでもあるということです。

 

 新しいと言うと少し語弊があるかもしれません。そもそも、王子さまが毒ヘビに自ら嚙まれる決意をしたのも愛するバラの元へ帰るためだったので、その意味では「ヘビ=炎=ロケット」も愛だったとも言えます。ただ、それは命の危険を伴う、毒を含んだ愛でした。

 

   'Light a flame'のメンバーのうち、ホシが点燈夫ウォヌがヘビだとすると、この二人は、正と負の炎、しかし、どちらも愛であるということを表現していたという気がしてきます。

 また、前回お話ししたジュンとウジの関係を考えると、点燈夫が王子でもあるならば、この四人全員が王子であるとも言えます。

 

 さらに、ウォヌはドギョムのキツネとも裏表になっていました。これまで散々誰がどの役かを語ってきましたが、結局、このプロジェクトは、SEVENTEENは全員で一つの魂だということを示してもいるのだと思います。

 

 原作小説も、実は全ての役が少しずつ重なっていて、読めば読むほど、全員がお互いの分身のようにも見えてきます。

 

 例えば王子さまは地球に降り立って「ぼく」の大切な存在となりますが、王子さまが大事に思っているバラも、もとは種の状態で風に乗って王子さまの星に降り立ったものです(地球からやって来た可能性もあります)。また、故郷の星を去る時バラは王子さまを引き留められませんが、それは、地球を去る王子さまを引き留められないキツネや「ぼく」と似ています。

 また、前回、POWER OF LOVEでは『星の王子さま』と『夜間飛行』が相似のようになっているとも書きましたが、『夜間飛行』のファビアンは、頭上の雲の切れ間を「落とし穴」と表現します。これは'舞い落ちる花びら(2020)'のMV 'I can't run away(2021)'のハイライト映像からも感じられることですが、原作においてもプロジェクトにおいても、舞い上がることは、舞い落ちることでもあるのです。

 

 POWER OF LOVEプロジェクト(とそこから繋がっていく次のプロジェクト)には、どうも、「全ては同じものの裏表であり、両方を抱きしめて生きていく」というメッセージがあるように感じられます。

 

 このように、点燈夫の意味に気づくことは、このプロジェクト全体をまとめていくことに繋がります。

 原作小説において、王子さまが点燈夫の仕事を、出会った大人たちがしていることの中で唯一素晴らしい仕事だと思った、というのも忘れてはなりません。これは子どもと大人の一致大人の肯定です。

 

 王子さまは、もっと遠くへ旅をつづけながら、こう考えました。―あの男[点燈夫]は、王さまからも、うぬぼれ男からも、呑み助からも、実業屋からも、けいべつされそうだ。でも、ぼくにこっけいに見えないひとといったら、あのひときりだ。それも、あのひとが、じぶんのことでなく、ほかのことを考えているからだろう。

 

 『星の王子さま』は「純粋な子ども対愚かな大人」という図式を用いて「いつまでも子どもでいよう」と語る物語ではないのです。

 考察Part9のスングァンの記事にも似たようなことを書きましたが、伝えたいのはきっと、「大人になるな」ということではなくて、「子どもの頃の傷つきやすくて真っすぐな心を忘れないように抱きしめながら、その美しい炎が消えないように守りながら、大人として生きる」ことなのです。

'Attacca' Highlight Medleyでは、ヘビだったジョシュアも愛らしい花火を手にしています。この花火は、点燈夫の挿絵そっくりです。

 

 

●SEVENTEENにとって炎とは

 前々回のウジの記事でまとめたように、POWER OF LOVEの物語は、SEVENTEENの歩みそのものです。

 

 では、SEVENTEENにとっての「忘れてはならない子どもの頃の心」「消してはいけない、心に灯した明かり」とはなんでしょう?

 

 私はこれこそが、'Change up'の明かりでありflameであり、だからこそホシが点燈夫なのだと思っています。

 

ギアを上げて走り続けて アクセルを踏まないといけない

熱いエンジン gas gas 加熱しないといけない

SEVENTEENの明かりが消えないように

僕たちのStudioは 毎日明かりが点いている

逆立ちしなきゃ理解できない 君には

僕たちはまだ半分も見せてないじゃないか

Eh(rh) eh(eh) eh

僕の手を握って 別の世界に行こう

望む通り全て ひとつふたつやり遂げた

僕らが幼かった頃 打ち上げた flame

毎日毎日毎日休むなく大きくなってるよ

続けて止められない 僕たちは 明日

Change up

 ―SVT LEADERS 'Change up'

 

 SEVENTEENにとっての消えない、消せない炎とは、「年齢も生まれた場所も生き方もばらばら(SEVENTEEN NEW RINGS CEREMONY: The Sun Risesより)」だった13人を引き合わせ、結びつけた音楽への情熱であり、また、それが行動になって表れた練習室の明かりなのだと思います。

 この意味で、「バラ=炎」は、ジュンが体現していた前世からの再会の約束の印である"Love Cloud"でもあり、だから白いヒツジ(雲)も赤いバラも、'Rock with you'において「風船」なのでしょう。

 

 2021年は、SEVENTEENにとって、事務所との最初の契約の最後の年でした。パンデミックでもどかしい思いもしたこの年が、もしかしたら13人で歌い踊る最後の年になっていたかもしれません。また、再契約をしたとしても、その後には避けられない兵役期間や、新たな試練が待っています。
 

 月のようなミラーボールの下、星の海のようなペンライトに囲まれて。SEVENTEENは「この夜は短くて 君は当たり前じゃない」と感じながら、「伝えよう 今度こそ 僕は君と歌い踊りたい 月明かりが この夜に 君を照らす 今夜 一緒に駆けたい どんなところでも しっかり掴まっていて どこでも 決して離さないで たとえこの世が終わっても」と歌います( 'Rock with you' 筆者訳)。

 まるで、月明かりの下で王子さまを守ろうと誓ったのに結局手放してしまった「ぼく」が、王子さまに「行かないで」と言えなかったバラやキツネが、ファビアンを雲の上に置き去りにする決断をしたリヴィエールが――前世で空を駆けるひとつの魂だったすべての欠片たちが、今度こそひとつであり続けたいと願う姿のように。

 

'Rock with you' MV。「君の心を誰にも傷つけさせない」と歌うホシ。
月明かり下にはディエイト。王子さまは悲しい時に夕日を眺める。トレーラーでは夕日の下にいたディエイトの頭上に、MVでは青空が広がる。

ホシのTシャツにはバラの花(この点はTwitterでフォロワーさんが教えてくれました!)。これは「王子さまの心にあるバラ」「王子さま=点燈夫」の象徴では。


 

 パフォーマンスチームのリーダーとして、SEVENTEENの振り付けを考え、ステージを誰よりも愛し、情熱的に行ってきたホシ。七周年記念の動画で世界一の歌手になるよりCARATにとっての一番になりたい思いが強くなったと他のメンバーが語ったのを受け、「僕は今でも世界で一番になりたい」と言います。グループの中にどちらの思いもあるから良いのだということで話がまとまりますが、ホシのこのような姿勢がグループの士気を高め、途切れない成長に繋がっていることは間違いないでしょう。

 大きくなり続ける目標に向かって、SEVENTEENの心臓のように、燃えるエンジンのように、ホシの心がどこまでも駆けていくのが見えるようです。練習生時代に夢見たことを超え、デビューしてから夢見たものをさらに超えて。

 

ホシが昔使っていた振り付けノート。

  Your Choiceリリース時のインタビュー。

 

 最後に、考察Part1冒頭で引用した六周年記念動画をもう一度引用します。バラは王子さまによく嘘を吐きました。これがバラ側の気持ちであり、また、同時に、バラと王子さまも一致することから13人の王子さまの気持ちでもあるとも考えながら、もう一度聞いてみてほしいと思います。

 

POWER OF LOVE PROJECT

CAST

S. COUPS

サン=テグジュペリ

JEONGHAN

通信士ネリ/現代の王子

JOSHUA

観測員デュテルトル/信号手/敵国の飛行士/ヘビ

JUN

飛行士ファビアン/ヒツジ

HOSHI

点燈夫/トラ

WONWOO

キツネの影/ヘビ

WOOZI

支配人リヴィエール/現代のヒツジ

THE8

王子さま

MINGYU

「ぼく」

DK

飛行士ギヨメ/キツネ

SEUNKWAN

レオン・ヴェルト

VERNON

機関士プレヴォ

DINO

バラ

with

CARAT

 

 

 最後まで読んでいただき、

ありがとうございました!

 

 

※画像引用元は字数の都合上次の記事に記載します。