以前、アニメ映画で見た作品ですが、劇場版作品の方が(声的に)どうしても腑に落ちなかったので、原作小説を読んでみることにしました。アニメ版の感想↓
http://ameblo.jp/mockyel-mh/entry-11203530949.html

いわゆるちょっとした切ない悲恋モノの小説ですね。
『神聖レヴァーム皇国』と『帝政天ツ上』という2つの大国が戦争しており、情勢は圧倒的に天ツ上が有利な中、レヴァーム側は士気を高める唯一の希望としてレヴァームの時期皇帝であるカルロ皇子とその許婚であるファナ・デル・モラルを結婚させようとする。
ファナが現在住んでいる場所は天ツ上が支配する東海側のレヴァーム領「サン・マルティリア」(天ツ上の名前では常日野)。
そこから目的地までの12000kmを、二人乗りの偵察機に飛空士とファナの2人のみで、天ツ上の哨戒網を突破しなくてはいけない。
未来の皇妃の輸送任務に任命された飛空士が主人公の狩乃シャルル。名前のとおり、それぞれレヴァームと天ツ上の両親の血を受け継ぐハーフ『ベスタド』。階級制度のあるレヴァームではド底辺として蔑まれ、差別され続けて育った青年。本来ならばこれほどの重大任務を受けられる身分ではないが、レヴァーム・天つ上の国境を跨ぐ大瀑布を単独突破できる能力がある唯一の実力者ゆえの任命。
シャルルは無事、ファナを皇子の下へ送り届けることができるのか?
…というのが大まかな概要ですかね。

序盤のファナの境遇シーンはとても良かったです。
―ファナ・デル・モラルは男性への贈呈用としてこの世界に生を受けた。
いわゆる政略結婚の道具として育てられた令嬢なんですね。常に監視され、礼儀作法を強要され、贅沢な着衣や食事はできるものの自由がまったくない生活。
「食事の時間までは読書していただきます。ペドロ・ヒメネスが著した一連の経済書をご精読ください。時間は一時間。内容については食事のあとに質問します。それが終わりましたら、先日不合格が出たピアノレッスンの続きを。合格したのち、詩作の宿題の残りを片付けます。湯浴みして、就寝は午後十一時の予定です」
い、嫌すぎるwww
あとになって説明があるんですが、どうやら食事中の咀嚼のやり方まで文句を言われるらしいw
そんな生活の中でファナが自身を守るために得た処世術は、
―わたしはモノだ。
…自分は『ただの道具』に過ぎないのだと諦観し、感情を殺ぎ落とすことだったわけですね。
もうこのあたりを読んだ時点で普通の人は切なくて心が痛くなると思うんですが、ドSな自分は(;゚∀゚)=3ハァハァでしたw
こう…なんつーか…囚われの姫君とか、自由を奪われているとか、そういうシチュエーションにマジ興奮するんですわwww

一方、主人公の狩乃シャルルですが。
地上でどれだけ踏みつけにされようと、空では誰にも負けない。それがデル・モラル空艇騎士団一等飛空士、狩乃シャルルの矜持だ。
差別階級でありながらも逞しく生きている青年です。序盤でわかることですが、実は昔、幼い頃にファナと一度だけ面識があるんですね。当時の事があったからこそ、シャルルは差別の壁に押しつぶされそうになりながらも今まで生きてこられた。ファナはレヴァームの希望、なんとしてでもこの任務をやり遂げるとシャルルは固く決意します。
そんなシャルルの心情も、階級の高い人にはわからないんですよね。高貴な令嬢と卑しいベスタドの数日に渡る飛空旅。まあ『危険性』を疑うのは普通かw
きっちりとシャルルに脅しをかけてきます。
「念を押しておくが、皇都到着後、ファナ嬢の肉体は正教会の尼僧たちが精査する。問題があった場合、貴様は銃殺に処せられる」
貞操検査ですね(;゚∀゚)=3ハァハァ

作中内では直接描写されませんがファナの婚約者のカルロ皇子について…
正真正銘のアホです。飛空士1人とファナだけで敵中突破するというハイリスクな作戦の原因を作った男です。
未来の皇妃であるファナを亡き者にしようと天ツ上軍がデル・モラル屋敷を襲撃 → 怒り狂ったカルロ皇子が艦隊を編成、盛大な出帆式を開催 → 逃げ隠れることなく正々堂々と敵中突破してファナを迎えに行こうと進軍 → 撃沈w
次期皇帝様が直々に立案した作戦が失敗でしたでは示しがつかない。
そこで帳尻合わせ&捏造で立案されたのが1人の飛空士による未来の皇妃を予め待機している艦隊の下まで送り届けるという作戦、つまりこの物語の主軸なんですね。
まあ、ここまでならただの阿呆で済みますが、問題はさらに酷い。
この作戦を実行するため、サン・マルティリアにいたレヴァーム軍全員が囮になって天ツ上軍をひきつけて、シャルルとファナは出発しているんですね。つまり激戦区となっている大瀑布付近までは安全に進めるはずだったわけ。
なのにこの皇子、ファナの身を案じて傍受されている可能性がある軍事用無線電信を使って手紙を送ってきてやがる。狭苦しい偵察機の後席に五日間も押し込められ護衛もないまま中央海を渡らなければならない君の境遇を不憫に思う、ってモロに作戦内容そのまんまw
カルロ皇子のアホっぷりはエンディングでも語られますが…、むしろこんなクズと結婚するファナが不憫だわw

皇子のヴォケのせいで初っ端から敵軍の哨戒を掻い潜るという苦戦を強いられながらもシャルルとファナの旅を続けます。人形として他者との関わり、感情を殺してきたファナがシャルルとの旅で変わっていく描写は良かったです。
しかしこの2人、ほんとギリギリの一線を踏み越えないのなw
いわゆる吊り橋効果も相まって普通ならパコっちゃうよw
展開とかシチュエーションはぶっちゃけベタなんだけど、むしろそこがいい感じがしました。使い古された王道モノでもまだまだ面白い作品はあるんだなと。
ただ、自分は文章読むのが苦手なので、敵軍に追われる空中戦とかがちょっと頭の中で想像つきにくかったですね。一応劇場アニメを見てるんでそっちで補完しつつ読んでました。

自分が読んだのは新装版なんですよね。文庫版から加筆修正があったらしいので、そちらを手にとりました。
文庫版の最後の部分だけ立ち読みしたけど、新装版の加筆修正の方が溜飲が下がりました。
卑しい身分であるベスタドが命懸けで未来の皇妃を運んだという事実をレヴァームが隠蔽したままで終わるのが文庫版の結末でしたが、新装版だと事件後100年近く経ってから「本当の事実」が世間に広められるという展開に。ここでも当時の皇子カルロのアホっぷりが書かれるというwww
他にも旅の最中の描写も増えているらしいです。

新装版は文庫版に比べると割高にはなりますが、どうせ読むなら新装版の方を薦めますね。
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