私はちょっと怒っていた。
本好きで本屋に勤める者として腹を立てていた。
もう5か月以上前の話なので、そろそろ良いかな…と勝手に時効を定め、ここに書く。

昨年8月、とある方々の出版記念トークショーがネット配信された。
そこで小説を出したAさんが、エッセイを出したBさんにこう言ったのだ。

A「前作も面白かったです」
B「えっ、買ってくれたの?ありがとう!」
A「ブックオフで買って読みました」
B「あ…そ、そうなんだ」

ここで私の血圧上昇(笑)
ま、まさか作者本人に、著作をブックオフで買ったと面と向かって言う人が居るとは!
しかも!言った本人も本を書く人なのに!

ピンと来ない方に説明しよう!
ブックオフで流通している本も漫画もCDも、全てそれは売れても一円も作者に印税は入らないのです!
ここまでブックオフが世の中に広がっている昨今、そこで売り買いするな、なんてことは言いませんよ(私もたまに売っちゃうし)。
でもでも、せめて作者本人に直接言うのは止めてほしい…

わかるかなぁ、このモヤモヤ…
本好きで本屋に勤めてるから、私が過敏なだけなのかなぁ…

話は戻り、このAさん、自分も文章を書くことを生業にしているのに、どうしてそこに無頓着なんだろう?と不思議に思っていたら…
これが理由かも、と思われる話あり。

なんでも、Aさん元々はネットで文章を書いていたライターだったらしい。
なるほど、ネットだとページビュー数で稼げたりするから、コツコツ本を売って印税を受け取るって感覚がわからないのかもしれないな…と勝手に心情を推測し納得する私。

よ〜し、そんなAさんが初めて書いた小説、読もうじゃないか!
買おうと思ったけど、図書館で借りちゃうもんね!ニヒヒテヘッ

で、読みました。
『明け方の若者たち』(おっとここでAさんの正体が判明)

この本は恋愛小説なんですよ。たぶん。
それが、出会った女性に一目惚れして恋に落ちちゃう描写とかが、ネットにありそうな「彼女の良いところランキング」とかから引っ張ってきたような、まとめサイトを見るような感じで。
全体に散りばめられた比喩もどっかで見かけたカッコいい例え集から引っ張ってきたような、これ本人がカッコいいって思って使ってるなって感じが透けちゃうって言うか…

小説って、作者本来の価値観がなんであれ、その本の中ではそれが作者そのものって錯覚するぐらい、違和感が無いものが多いのです。
でも、この本の描写はそこはかとなく違和感が漂い、例えるなら、素人の舞台を見に行って役になりきれていない演技に、見ている方が恥ずかしくなるような…
そんな感じの文章なんですよ。
作者が深層まで落とし込んでから文字化してない上っ面感と言うか…
で、読むの辛いな〜と思いながら最後まで辿り着き、そこである結末を知るのです。

それを知ると、この素人演技みたいな文章も、もしかしたら考えられた上でこの書き方!?と自分の感覚がわからなくなるのです!
まるで、乾くるみの『イニシエーション・ラブ』を読んだ時のような…

細部まで考えての文章だったのですか?
それとも、そういう文章を書く人なんですか?

気になる!
次作が出たら、そこら辺を確かめるべく、ちゃんと本屋で買って読みます(笑)