エイプリル・フールでもなんでもいい。
今日一日だけでも死んだ夫、帰って来ないかな…

持っている合鍵でドアがガチャガチャして開く「ただいまー腹減った」
私「あれ?ご飯いらないって言ってたじゃん」
夫「予定変わったんだ。何かある?」
私「納豆ご飯」
夫「いい!最高」

そして味噌汁を温め直し、昨日のおかずの残りと納豆とご飯を食べる夫の向かい側に座り
入社式の話や新しい上司の愚痴、60才定年で嘱託になったが仕事量は変わらないなどなど、ほろりほろり喋る夫にふむふむと相槌をうつ私。

これからこんな調子で、子供達が巣立った後の夫婦ふたりの時間が始まっていくはずだった。
いつものように電気のついてないコタツに潜り込んで横になる。

夫「疲れた眠い…寝そう…シャワー朝浴びるわ。寝る」
私「あーいいよいい今日は疲れたよね」
夫「悪い、片付けごめん」
私「はいはい」

1分も経たずに寝落ちする
寝息が聞こえる
緩んだ顔にシワが増えた
歳とったなあ…
そんな寝顔が大好きでずっと見ていたかった。

朝が来たら夫はいない。
朝シャワーの音も聞こえない。
そもそも夫が寝ていた私達夫婦のベッドはもう処分した。
こたつはリサイクルショップで処分済み。
「いってきます。留守番よろしく」
写真に声をかけて出勤するのも、もう慣れた。
定年の半年前に亡くなる事がなければ、
嘱託にならず留守番しているという未来もあったかもしれない。
「いってらっしゃい。俺今日は紹介してもらった所にいってみるわ」
久しぶりにのんびりできたぞー!と、笑顔が見えるようだ。

エイプリル・フールでもなんでもいいから夫よ
私のところに帰って来い。