○目覚めるユニフォームの達也、冬服の南の膝枕。
(南の声)「起きた、タッちゃん?」
上体を起す達也。
達 也「あれ、みんなは?」
○野球部部室
人は南と達也だけで、整理整頓されている。南、スカートを叩いている。
南「とっくに帰ったわよ。着替えるんでしょ?」
達 也「おう」
南「じゃあ、外で待ってるからね」
ドアに歩く南。ロッカーが開く音。南の足元に、首輪の大きさのわっか、落ちる。
南、わっかに気付いて拾う。
南「まだ持っててくれたんだ」
達 也「ああ、捨てられなくってな」
南「枯れちまえばただのゴミだ、なんて言ってたのに」
見つめあう南と達也。
× × ×
部室に入ってくる、体操着姿の南。
南「日が暮れるの早くなったわね、もう外真っ暗よ」
(孝太郎の声)「そうだね」
頭を掻く孝太郎。
孝太郎「いけね。ミット忘れてきちゃった」
ドアの開閉音。
南、落ちていた首輪の大きさを拾う。
南「あらやだ。どこから出てきたの?」
達 也「何だよそりゃ」
南「ん? 南がカッちゃんにあげたの。甲子園地区予選一回戦を勝った帰り道、川原で花を集めて。勝利投手賞」
南、達也に目を向ける。
南「綺麗だったのよ、とっても」
達 也「枯れちまえば、ただのゴミだ」
目を見開く南。
南、俯く。
南「…そうね」
達也、枯れた花輪を南から取る。
達也、ロッカーを閉める。
達 也「俺のロッカー、ゴミ箱も兼ねてるから」
× × ×
[4459]文章による「タッチ」(小説・脚本・超速、評論・分析)
[4566snTouch066.txt]