学ばせていただきました 岡根谷実里『世界の食卓から社会が見える』 | 恋着、横着、漂着 遊び盛りゆるゆるのびのび60代

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2年早く退職して機能と効率のタガを外すことが出来ました。
人生をゆるゆるのびのびと楽しんで味わって行きたいと思う60代です。

 まず冒頭の問いかけから釘付けになった。

 ブルガリアと言えば何を連想するかと問われた人の大方は「ヨーグルト」と答える。

 しかし、ブルガリアでヨーグルトは本当に中心的な食料品なのか。伝統食でもあるのか。

 実はそうではなかったという事実が少しずつ明らかにされてゆく。

 

 この第一章第一節の部分は、地元の丸善で立ち読みした。しかし、立ち読みで終わらせるにはあまりにもったいない。

 そのあとの各章各節の見出しだけを見ても、自分が知っていることなど何もないのである。これは買ってしっかり読むべきだと思った。

 

 様々な食糧、食材が今や世界中で流通している。

 そこには当然のこと気候や民族、経済は言うに及ばず政治も宗教も地球環境も歴史も深く広く絡み合っている。

 読んでいて、角山栄が追求した「生活の世界史」との共通点があると感じた。本書は「生活の世界地理」なのだ。

 一見、日本人の自分には無縁と思われそうな海外のある家族のひとつの家庭料理、ひとつの食材という一点から世界が見えて来て、そこに自分が何かしらの関わりを持っている、或いは持たされてしまっているという事実に気づかされる。

 しかし、そうした告発で本書は終わっていない。

 選択すべき未来のありようも提示されている。

 ひとつの家庭料理が明るい未来をもたらす可能性も示している。

 本書で著者が探検に赴いた食卓は15か国に及んでいるが、ぜひ続編を出してほしいものである。