画家 白川美紀さん 第4回 | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさん、おはようございます。


毎週木曜日、「みんなの学び場美術館」担当の
「彫刻工房くさか」日下育子です。


本日は素敵な作家をご紹介いたします。


画家の 白川美紀さんです。
アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館


前回の岡沢幸さんからのご紹介です。

       第1回 ⇒ http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11323780164.html
       第2回 ⇒
http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11329521097.html
       第3回 ⇒
http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11329602523.html
       第4回 ⇒ 
http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11329602926.html

白川美紀さん 

       第1回⇒http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11345589993.html
       第2回⇒ http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11351978634.html
       第3回⇒http://ameblo.jp/mnbb-art/entry-11351979432.html



白川美紀さんの社会との接点についての想いをお聴かせ頂きます。


お楽しみ頂けましたら、とても嬉しいです。


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

空想都市
117×91cm
2007


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

青い鳥
40.5×25.5cm
2003


日下

改めて、白川さんの社会との接点についての思いをお聴かせ頂けますでしょうか。


ちなみに私自身について先にお話をさせて頂くと、
具体的な社会との接点と言う場合に、

ニュースのトピックになるような事をテーマにすることはありません。私自身の制作テーマ

は、『生命感』 『生』を表現することです。
 

ただ、社会現象として感じられることが作品を制作する時のきっかけにはなります。

その時その時、社会に起こっていることで感じること、ネガティブな事を制作を通して

ポジティブな方向に昇華するというのが私の制作です。

私の作品を見て頂くことによって、鑑賞者が自分自身の心、記憶や未来へのイメージなど

その人の内奥の空間に向き合う、ということができる作品作りを目指しています。私自身が

素材とする対話、それによってできた作品と鑑賞者の対話、鑑賞者が自身の心に向き合

という対話、・・・対話のできる作品を心がけています。


また、モニュメントでは実際の風景に彫刻で関わっていくということから、場所の風景と

共にその人の記憶となって、その人の『生』を支えるもの作りたいと願って、制作に

取り組んでいます。


これがありのままの、今までの私の作品制作と社会との接点です。 



白川美紀さん

初めて作品を買っていただいたときも、社会との接点を意識しましたね。そのお金で

次の作品の為の画材が買える。やはり、美術も経済活動と無縁では続けて行くのが

難しいですから。学生時代と違って、周りの見る目も厳しくなりますし。やはり胸を張って

生きる為にも、美術が道楽だと難しいですね。



日下

白川さんのホームページを拝見すると、結構個人蔵の作品が多いので、素晴らしいと

思います。



白川美紀さん

ありがとうございます。



日下

私は、これからは本当に喜んで下さる方のためだけに制作したいと思っています。



白川美紀さん

そういえば、以前作品を飾ってくださってる家にお邪魔しました。私の絵だけではなく、

他の方の 絵も一緒にあったのですが、ある意味、自分の一部であった作品が、

全く別の生活に入る訳です。全く知らない方が、これについて会話をすることも

あるでしょう。作品は作品で、どんどん手を離れていく。恥ずかしさと嬉しさで、汗が

思いっきり吹き出しました。
 

完成までは個人的な作業ですが、展示後は、作品が手を離れて一人歩きする。

妙な緊張感を感じますね。


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

花守猫
15.8㎝×22.7㎝(SM)
2012


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

時計 -洋梨-
11×11cm
2005



日下

白川さんは建設省(現・国交省)官僚でいらしたお父様の関係で国内あちこちにお住まい

られたようですね。



白川美紀さん

はい。7歳で東京に戻ってくるまで、福岡、広島、山口で過ごしました。その後も、

自身の都合で10代は山梨、東京都の小金井、三鷹で寮生活を送りました。



日下

あちこちに住んでいらしたことがあるというのは、いろんなことが分かって、しかもいろんな

地域社会でもまれて強いだろうなぁ。と思いますが、ご自身ではいかがでしょうか。


あるいは、あちこちの地域文化に触れたということが、制作者として旅の感覚というか、

絵に表われることはありませんか。



白川美紀さん

住む場所や環境が変わると、自分を取り巻く世界もガラッと変わります。ある一つの世界

では、みんなが”これは絶対だ”というものも、他の価値観から見れば、全く正反対

だったりします。その世界にいる人にとっては当たり前の事なのに、自分は違和感を

覚えたりする。でも、どちらの価値観もそれぞれに正しいし、それぞれの現実

なんですよね。それに気づいた時、なんて不思議なんだろう?!!と。


いろんな場所で生活した経験は、みんなと同じ方向を向かなくても、自分が感じる

違和感も、異邦人感覚、とでも言うんでしょうか、むしろ、その違和感、ズレを表現

したいなあと。



日下

素材、テーマ共に、影響を受けた作家、好きな作家さんはいらっしゃいますか。

この学び場美術館のインタビューで、あまり聞いたことのない質問ですが。



白川美紀さん

10代に坂部隆芳さんの作品を見て、衝撃を受けました。電車が苦手だったのに、

同じ展覧会を2回見に行ったくらいです。北鎌倉のお寺で見た、古い掛け軸にも共通する

静寂がなんとも言えません。長谷川次郎さんの作品は、最近美術館で見る機会が

ありました。画集で知ってましたが、原画が与える感動はまた格別ですよね。


いい作品を見ると美術、絵画ってこんなに人の心を揺さぶることができるのか、と。



日下
私はモニュメント制作をするようになって、とっても素晴らしいなと思うようになった

作家さんに出会いました。造形性が素晴らしいだけでなく、思想が素晴らしいと思う

作家さんダニー・カラヴァンさんです。 


ダニー・カラヴァンさんの作品は、宮城県美術館の入り口にある柱の作品です。天体

というか日時計というか、天体の動きと影によって暦を媒介する彫刻というか、その作品が

そこにあることによって、太陽が当たって影ができることが意味をなすそういう作品って、

すごいなと思います。
 

方位の東西南北の意味づけとか、そういうことを示唆してくれるというか、きちんとイメージ

させる作品と言うか、彫刻の仕方、造形の仕方があるのだと教えてくれた作家です。

しかも環境的に都市の通りを作ってしまうような大規模な作品などもあります。そういう作品

というのは、なかなかできないだけに素晴らしいと思います。



白川美紀さん

彫刻家の日下さんは、作品だけでなく周りの空間も一緒に鑑賞するんですね。そういう概念

制作したことは無いので、日下さんの話はとても新鮮です。



日下

ダニー・カラヴァンさんのなさっているような仕事って、誰にでもできる仕事ではないと

思うのです。それは能力的にも、チャンスという意味でも、誰にでもできることでは

ないので、とても憧れとして強く意識してしまうのかもしれません。そういうものって

素晴らしいなと思います。


単純に置物的な作品ではなくて、その場所で意味をなす彫刻なのだなと思いました。

それで私もモニュメントなど固定された場所に設置する作品を制作する時に意識するように

なりました。



白川美紀さん

日下さんは、部屋に自分の作品を飾ったりしますか。



日下

自分の部屋にはありませんが実家の庭には大分置かせてもらいました。嫁いできた今の家

ではまだ置いていませんが、これから置いてみたいですね。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
空中都市
10×10cm
2007



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
未来地図 C
91.2×30.1m
2008



日下  

目指している作品像、心がけていることはありますか。



白川美紀さん

先ほどお話したように、皆が現実の他に、自分が思う現実もある。その違和感やズレを

認めると、急に楽になったり、可笑しくなる。作品を見てくださる方と、そういう軽やかさを

共有したいですね。ちょっぴり毒のあるおかしみというか。それと、時間の経過を

感じさせるもの、古くて新しいものって美しいと思うので、もっとそういう作品にしたいなと

思っています。



日下

白川美紀さんは風景のようなスケールの大きい空間も描いていらっしゃいますが、

そういうものを描くのはどんな感覚なのでしょうか。しかも現実に見たことのない風景を

描いていらっしゃるので、かがってみたいです。



白川美紀さん

グッと制作に集中すると、絵の中で呼吸してるような広がりを感じます。自分が鳥になって

絵の中を飛び回る感覚でしょうか。そしてまたイーゼルの前に戻って来るという贅沢で、

美しい時間を・・・。



日下

とても素敵な言葉ですね。



白川美紀さん

上手くいった時は最高の幸福感です。出来なかった時は床を転げ回りたい気分に

なりますけど(笑)。表現がピタッとはまった時は、時間を旅するような感じがします。

その喜びにまた出会いたくて、描き続けているんでしょうね。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
赤い夢
15.8×22.7㎝(SM)
2009



日下

最後に白川美紀さんにとってアート、表現することとは?をお聴かせください。



白川美紀さん

表現方法は、人によっては、肉体を道具にするスポーツだったり、音楽だったり、

ファッションや、料理とか、沢山ありますよね。私の場合は、油彩セットをいただいたり、

父や母が絵や書道をやっていたり、という偶然が重なって、美術・絵画を表現手段として

選択しました。
 

出産や震災直後は、アートの力って弱いのかなあと思った時期もありましたが、

社会にとってアートはやはり不可欠なものだと思います。



日下

今日私が白川美紀さんとお話をさせて頂いて感じたことは、『イーゼルの前で作品の中を

旅してくるような感覚がある』と仰っていました。そういう作品を見せて下さるだけで、

もうすでに十分な価値があると思います。とても作品に開放感があると思うのです。
 

私が今回のインタビューで、取り立てて社会との接点ということをお伺いしたので、

意識なさってしまわれているかもしれませんね。



白川美紀さん

いえいえ。現在は、もう自己満足で描く、自分の中だけで完結する時期ではありません。

出産、子育てと経験して、その思いはさらに強くなりました。実際絵を描く事は、すごく

個人的なようでいて、実は社会の影響をすごく受けていると気づきました。今は、

もう一度、社会の中の自分の立ち位置や、美術でどうあるべきかを見つめ直す時期だと

考えています。
 


日下

子どもの存在というのは、それほど生きた人間を相手にする、すごいことなんでしょうね。

大人同士との出会いとはまた違って。

 


白川美紀さん

はい、全く違いますね。出産直後までは、子供と関係なく以前のペースで画業を

続けるべきだと思っていて、友人に出産祝いは何がいい?と聞かれ、(画材の)

ウィンザー&ニュートンの面相筆がいい!と真面目に答えていたんです。何十年も生半可

気持ちで制作して来た訳じゃないわ。私は、出産と子育てで制作から遠ざかるオンナ

じゃないぞって。でも、2年経って考えが変化しました。意地のようにしがみつくのは、

ちょっと違うんじゃないか?頑にガチガチに決めずに、もっと身の回りの変化など

自然の流れに身を任せてもいいんじゃないかなあ?と。もう少し、柔軟に変化して進むのも

いいかなと思ってます。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
小さき花
22.7×15.8㎝(SM)
2012



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

あしたのあした
22.7×15.8㎝(SM)
2011



日下  

近く展覧会等、発表のご予定はございますか。



白川美紀さん

グループ展覧会が2つほどあります。9月21日から26日まで“青葉アートスクール展”

(メディアテーク)と、“りらく大人の文化祭  F NALE” (藤崎百貨店)で会期は、

9月27日から10月2日までです。実際の作品は画像とは印象が変わります。お近くの方は、ぜひ足をお運びくださいね。


日下

最後に次にリレーして頂く作家さんをご紹介いただけますでしょうか。



白川美紀さん

宮城県美術館の創作室の学芸員だった、斎正弘さんです。



日下

今日は、素晴らしいお話をありがとうございました。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

都市風景
15.8×22.7cm
2006


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白川美紀さんとは、前回の岡沢幸さんのご紹介です。

仙台七夕3日目の駅地下レストランでランチを頂きながらのインタビューでした。

繊細で、感性鋭く、日常のモノ、風景をじっと見入ってしまうような絵の中に引き込まれる

ような、素晴らしい作品にしていらっしゃり、デッサン力など描画の技術と感性が秀逸だと

感じました。


ご自身も2歳になるお子さんの子育てをしながら、制作活動をされているということで、

私も昨年出産した者として、とても共感を覚えました。


皆さんもぜひ白川美紀さんの作品をご覧になってみてはいかがでしょうか。 


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◆白川美紀さんの展覧会予定


  ◇展覧会名 ~りらく大人の文化祭~「 F NALE(エフナーレ)みんなのアート展」

     日時 2012年9月27日(木)~10月2日(火)10時~19時
     
展示全体の会期は、9月20日(木)~10月9日(火) 

     詳細は、白川さんのHPでご確認ください。

     会場 藤崎百貨店 一番町館5F 仙台市青葉区一番町3-2-17

         ⇒http://www.fujisaki.co.jp

  ◇展覧会名  青葉アートスクール展

     日時   2012年9月21日(金)~26日(水)10時~19時 (最終日は~16時)

     会場  せんだいメディアテーク 仙台市青葉区春日町2-1
            ⇒
http://www.smt.city.sendai.jp

◆白川美紀さんのホームぺ―ジ

  ⇒http://www.miki-s.com/


◆白川美紀さんのインタビュー記事が掲載された雑誌
    大人の情報誌 りらく 2012年6月号

     ⇒http://www.riraku-sendai.co.jp/