2017年 キノフィルムズ、COMME DES CINEMAS、木下工務店、奈良県、mk2films
監督、脚本、編集
河瀨直美
プロデューサー
木下直哉
武部由美子
音楽
Ibraham Maalouf
永瀬正敏
水崎綾女(みさきあやめ)
小市慢太郎
藤竜也
樹木希林
恋愛映画は後半少しで、あくまでも、喪失により成長する男と女の人間ドラマという話だろう。
驚くべきことは永瀬正敏の突出したハードボイルドさだった。
永瀬正敏は非業な男を演じる。悲壮感、虚しさ、かっこ悪さ、無様さ、しかない男を演じる訳だが、河瀬直美さんの脚本、演出、そして円熟した永瀬正敏の技術も良かったのだろう。
永瀬正敏が信じられない程に悲しみを背負った魅力的な男を演じている。
それはハードボイルドそのものだ。
濱マイク(テレビシリーズ)も最近見返して良かった。が、その30倍は良い。
これは素晴らしい発見だ。
河瀬さんも永瀬正敏を知り尽くしたからだろう。
あと、水崎綾女氏。
水崎綾女が良いから永瀬正敏も良い。永瀬正敏も良いから水崎綾女も良くなる。
あのキスシーンは河瀬さんらしくもあるが、根底にあるのはハードボイルドメロウだ。恋愛映画のキスシーンではない。
何故か当時この映画を観なかった自分が悔やまれる。
同じ『光』(大森立嗣さん)という映画がもう一つありそちらをみたのだ。
そちらは駄目だった。大森さんは『グッバイクルエルワールド』は及第点だったが。
正真正銘、素晴らしいのはこちらの『光』だったといえる。
もう一つある。
河瀬さんは映画監督として、観客の映画への向き合い方を問いたかったのかもしれない。
特殊な職業を題材にしていて、他にはない職業映画にもなった。
少年の頃見た『火垂』から24年。最近河瀬さんもいろいろあるが、雑音に惑わされてはいけない。
河瀨直美監督は優秀な脚本家、映画監督だ。『あん』のあと、これを作れた。その前も素晴らしいのにだ。プロであり映画作家だ。
『あん』に続き、樹木希林さんの遺作にもなった。
ラブストーリーはラスト30分くらいしか実質ないが、三崎綾女、なんとなくそれまでのグラビアとか、アクションとかのイメージとは違う、
瑞々しい純粋で善良な役柄
を誠実に演じていることで、
彼女の魅力も一段と出ている。
ラブストーリーとしても良い終わり方、全体としてまず面白い、という前提で、
とても素晴らしい仕上がりだった。