女性手帳の役目は出る前から終わった。ありがとう、さようなら、女性手帳。 | まきむぅとレズビアンライフ.*゜* 牧村朝子オフィシャルブログ powered by Ameba

女性手帳の役目は出る前から終わった。ありがとう、さようなら、女性手帳。



“生命と女性の手帳”。このなんとも麗しい名前の手帳が、内閣府“少子化危機突破タスクフォース”というなんとも勇ましい名前の皆さんによって発案されたそうです。通称、女性手帳。女性にだけ配られる予定で、中身はざっくり言えば「女性のみなさん、若いうちに赤ちゃん産んだほうがいいですよー。妊娠・出産の必要知識とか、自治体ができるお手伝いをここにまとめときますね。情報まとめに加え、基礎体温とか生理周期とか、女性の健康データを記録するページもついた二部構成! あら、これは便利! ってことで、若いうちから妊娠・出産に対して意識高くいてくださいねっ☆」という内容だそうです。

香ばしいですね。政府が少子化の一因を女性の知識不足のせいにしちゃってる点といい、そもそも誰が女性なのかなんていうデリケートなことを政府が決めちゃってる点といい、また日本政府は先天的に妊娠出産ができない人や後天的に女性になった人などなどを無視するかのように「“女性”の皆さん、若いうちに産んでね☆」と手帳を押し付けちゃう感性なんだなぁっていうガッカリ感といい。すでに出る前から色々香ばしいです。

もう、この女性手帳、出る前から役目を終えたんじゃないでしょうか。少子化危機突破タスクフォースのみなさんには「よかったですね」と言いたい。これだけメディアに取り上げられ議論になったことで、みなさんが宣伝したかったらしい「晩婚・晩産には比較的リスクが伴いますよ」という事実は、わざわざ女性手帳なんか印刷しなくてもだいぶ周知されたのではないでしょうか。

もういいです。ありがとう、さようなら、女性手帳。他にも政府は少子化対策として、財政支援なども検討しているようですし、また保育施設や労働環境改善の必要性も指摘されています。お金や資源や時間を使うべきところは、女性手帳のほかにいくらでもある。またもちろん政府だけじゃなく、企業や教育機関も協力する必要がある。わたしとしてはぜひ、特に教育に関わる部分を改革してほしいと思っています。

日本社会で信じられている性知識がいかに現実に即していないかということは、プロフェッショナルであるはずの新旧少子化担当大臣の討論からも窺い知れます。元少子化担当大臣である蓮舫氏は、「例えば同性愛者は手帳をどう受け止めるのか」と発言しました。もしこの発言が“同性愛者=妊娠・出産・子育てを人生設計に入れていない”という思い込みに基づくものであるならば、完全な誤りです。

誰が認める・認めないに関わらず、日本には既に、妊娠・出産・子育てをしている同性愛者が存在します。養子や、精子・卵子提供による子や、昔の異性パートナーとの子や、事情があって親族友人から引き取った子や、恋愛関係に基づかない異性パートナーとの子など、背景は実に様々です。わたし個人もフランス人女性と国際同性婚をした日本人女性ですが、妻や家族や友人たちと、たびたび将来の子供のことを話し合います。制度の上でも、フランスでは先日、同性間の結婚と養子の親権をもつ権利を法的に認めたばかりです。アメリカには同性愛者専門の不妊クリニックまで存在します。国を問わず、またそれを誰が認める・認めないに関わらず、同性愛者だからといって子供を産まない存在とは考えられません。

この蓮舫氏の発言を受け、森雅子現少子化担当大臣は「前提となる知識がなければ選択できない」と反論しました。そうです、知識がありません。現在25歳、政府の言う出産適齢期であるわたしが受けた性教育では、高額出費や度重なる通院や時には海外渡航まで必要となる不妊治療の現状は教えられず、性感染症を防ぐ目的もあるはずのコンドームは“避妊具”などと誤解を招く名称で連呼され、既に初潮を過ぎた児童も多い小学五年生でやっと生理についての授業をし(しかも女子だけを視聴覚室に集めて)、現実に即しているとはとても言えませんでした。また「みなさんは第二次性徴を迎え、異性に興味が出てくるようになります」と画一的に断言され、無性愛者や両性愛者や同性愛者などの性的マイノリティはそもそもいないことにされました。中には以上のような内容について、外部講師による課外授業をする学校もあるようですが、そういった講演料を支援するなり、性教育の内容を抜本的に見直すなりの改革が、女性手帳よりもよほど大事であるとわたしには思えます。

ということで、叩かれてくれてありがとう、女性手帳。あなたはもう、出る前に役目を果たしています。政府が“女性”を対象に限って意識改革をしようとしなくても、女性をとりまく企業や教育機関はすでに変わり始めています。先日国際基督教大学では、キャンパス内に授乳室が設置されました。また妊娠・出産に際しキャリアを諦めなくていいような、復職や育児支援制度をもつ企業も増えています。

国規模で少子化といわれても、地球規模では人口爆発です。そんな中で「産みたいけど、産めない」の声をさしおいて「若いうちに産むといいですよ」とは、現政権の言う“美しい国・日本”の程度が知れます。女性手帳自体はもう出さなくていいですから、この案を機に広く活発な議論が交わされ、何が人類にとって正解なのか、少子化という視点に必ずしも固執しない長い目で見た最適解が導き出されることを望みます。また、その議論のために必要となる知識を、女性手帳なんかでなく、まずは次世代の教育現場から広めていってほしいと切に願います。

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