もし自分が所有する物件で自殺や事故、事件が起きて事故物件になってしまったらどうしますか?

 

私自身は幸いまだ経験したことはありませんが、入居者さんには単身世帯や高齢者世帯が多いのでこれらのリスクには備えておく必要があると思っています。高齢者のみならず、現在若年層の単身者でも孤独死が増えているそうなので、若い=低リスクとも言えなくなってきています。

 

しかし、リスクに備える対策はありますし、不幸にも事故物件になってしまった場合の対処法もあります。

 

知識武装してあらゆるリスクに備えておけば、万が一のことがあっても冷静に対応できます。

 

 

事故物件になってしまった場合の対処法

 

 

1. 迅速な対応

 

事故物件となってしまった場合、まずは迅速に、そして冷静に対応することが重要です。以下のステップを踏みましょう。

 

警察への通報:自殺や事件の場合で大家自らが発見したときは、まず警察に連絡し先方の指示に従って、適切な手続きを行います。

 

保険会社への連絡:大家が加入する孤独死保険に入っている場合は、速やかに保険会社に連絡して必要な手続きをしてください。火災保険の特約で保険金が下りるものがないかもチェックしましょう。

 

近隣住民への説明:事件や事故の内容を近隣住民に説明し、不安を解消することが大切です。

 

清掃と修繕:専門の清掃業者に依頼し、物件を清掃・修繕します。これにより、次の入居者に安心してもらえる環境を整えます。もし自殺や病死の発見が遅れた場合は特殊清掃の手配が必要になります。

 

*特殊清掃とは

 

特殊清掃は、孤独死や自殺、事件現場など、通常の清掃では対応できない特殊な汚染や臭気を取り除くための清掃作業です。以下は、特殊清掃に関する詳細です。

 

作業内容:特殊清掃では、血液や体液の除去、消毒、臭気の除去、害虫駆除、カビ取りなどが行われます。また、場合によっては、床や壁の一部を取り除き、修繕することもあります。

 

費用:特殊清掃の費用は、汚染の程度や面積によって異なりますが、一般的には数十万円から数百万円程度かかることが多いです。例えば、孤独死による汚染が広範囲に及ぶ場合、100万円を超えることもあります。

 

専門業者の選定:特殊清掃を依頼する際は、専門の業者に依頼することが重要です。業者選びのポイントとしては、実績や口コミ、料金の透明性などを確認しましょう。

 

 

2. 告知義務の遵守

 

事故物件となった場合、次の入居者や購入者に対して心理的瑕疵を告知する義務があります。この義務を怠ると、後に大きなトラブルを引き起こす可能性があります。

 

賃貸の場合:次の入居者に対して、過去の事件や事故について正直に説明します。過去の判例によると、最初の入居者が相当の期間居住した後に退去した場合、次の募集の際には告知義務が軽減される可能性があります。

 

売却の場合:何年経っても告知義務はなくならないため、購入希望者に対して正確に情報を伝える必要があります。告知義務を怠ることは宅地建物取引業法(宅建業法)違反となり、不動産業者に対しては罰則が科されることがあります。

 

 

3. 事故物件の価値向上

 

事故物件となってしまった物件でも、適切な対策を講じることである程度価値を回復することができます。

 

リノベーション:物件をリノベーションし、新たな魅力を追加することで、心理的瑕疵の影響を軽減します。内装や設備を一新することで、新しいスタートを切ることができます。

 

価格設定の見直し:家賃や販売価格を相場よりも3割程度下げることで、入居者や購入者を見つけやすくなります。

 

マーケティング戦略:事故物件であることを正直に伝えつつ、リノベーションや価格設定のメリットを強調することで、ポジティブな印象を与えることができます。また事故物件でもいいからとにかく安い物件に住みたいというニーズもあるので、そういった客層をターゲットにしてマーケティング戦略を練りましょう。

 

 

4. 保険の活用

 

事故物件になるリスクに備えて、適切な保険に加入しておくことも重要です。ここでは、特に有効な保険について詳しく解説します。

 

孤独死保険:高齢者や単身者が多い物件では、孤独死保険の加入を検討しましょう。この保険は、入居者が孤独死した際の特殊清掃費用や、遺品整理費用をカバーするものです。保険会社によっては、家賃の減額や空室期間中の家賃補填も含まれる場合があります。

 

火災保険の特約:火災保険には、オプションで特約を付け加えることができます。例えば、事故や事件による損害をカバーする特約や、特殊清掃費用をカバーする特約があります。これにより、予期せぬ出費を抑えることができます。

 

家賃保証会社の提供する孤独死保険:最近では、家賃保証会社が孤独死保険を提供することが増えています。この保険は、家賃保証とセットで提供され、入居者が孤独死した場合の対応費用をカバーします。家賃保証会社のサービスを利用することで、リスク管理を一括して行うことができ、大家にとって大きな安心材料となります。私自身は家賃保証会社のCasaが提供する孤独死保険を利用しています。家賃保証を申し込めば追加費用無しで孤独死保険が付いてくるので重宝しています。

 

 

5. 保険金請求の手続き

 

事故や事件が発生した場合、迅速に保険金を請求するためには、以下の手順を守ることが重要です。

 

事故発生の報告:保険会社に対して、事故や事件の発生を迅速に報告します。報告が遅れると、保険金の支払いが遅れる可能性があります。

 

必要書類の準備:警察の報告書や清掃業者の請求書、修繕費用の見積もり書など、保険会社が要求する書類を迅速に準備します。

 

保険会社との連絡:保険会社と密に連絡を取り、必要な手続きを迅速に進めます。これにより、保険金の支払いをスムーズに受けることができます。

 

 

リスクに備える対策

 

事故物件になるリスクを最小限に抑えるために、以下の対策を講じることが重要です。

 

入居者の選定:入居者の生活状況や健康状態を確認し、リスクの高い入居者を避けることが重要です。ただし、これはプライバシーに配慮しつつ行う必要があります。

 

見守りサービスの導入:高齢者や単身者向けに見守りサービスを導入することで、早期発見や緊急対応が可能となり、リスクを軽減できます。高齢者はデイサービスを利用していることが多いのでケアマネージャーと連絡を取り合える関係になっておくことをお勧めします。

 

コミュニケーションの強化:入居者との定期的なコミュニケーションを図り、異変があった際に迅速に対応できる体制を整えます。

 

 

まとめ

 

事故物件になってしまった場合でも、適切な対処法とリスクに備える対策を知っていれば、冷静に対応することができます。心理的瑕疵の告知義務を守りながら、物件の価値を回復させるための方法を実践し、将来のリスクに備えることが重要です。知識と準備を持って、あらゆる状況に対応できる大家としてのスキルを磨いていきましょう。