私は現在のところ心理的瑕疵のある物件、いわゆる事故物件は所有していません。しかし、そのような物件を内見したことは何度でもありますし、購入の際に事故物件だからという理由だけで選択肢から外すことはありません。心理的瑕疵のある事故物件でも運用次第では高利回りのキャッシュマシーンに仕上げることもできるからです。

 

 

心理的瑕疵とは?

 

まず、心理的瑕疵とは何かについて説明します。心理的瑕疵とは、物件に関する過去の事件や事故、特定の状況が原因で、心理的な影響を受ける可能性がある要素のことを指します。

 

例えば、過去に建物内で自殺や他殺があった物件、長期間放置された遺体が発見された物件などがこれに該当します。これらの物件は一般的に「事故物件」と呼ばれ、その特異な背景から敬遠されがちです。

 

ただし、物件内で人が亡くなればすべて心理的瑕疵物件や事故物件になるかといえば決してそうではありません。家族に看取られながら病気や老衰で亡くなった場合であれば該当しません。

 

また事故や病気で孤独死した場合であっても、すぐに発見されて新聞沙汰にならなければ心理的瑕疵物件や事故物件とは見なされない場合もあるそうですが、ここは人によって感じ方が違うのでグレーゾーンだと思います。

 

 

心理的瑕疵物件のメリット

 

心理的瑕疵物件には、一般的な物件にはないメリットが存在します。それは主に価格面において顕著です。心理的瑕疵物件は市場価格よりも大幅に安く購入できることが多く、初期投資額を抑えることができます。また、心理的瑕疵があるために競争が少なく、交渉の余地が広がることもあります。

 

 

高利回りの可能性

 

安く購入できる心理的瑕疵物件を賃貸運用することで、高利回りを実現することが可能です。賃貸需要がある地域であれば、物件の立地や条件次第で入居者を見つけることができます。特に、家賃を相場よりも少し安く設定することで、入居者を確保しやすくなるでしょう。さらに、リノベーションやリフォームを行うことで、心理的瑕疵の影響を軽減し、物件の魅力を高めることもできます。

 

「事件や事故があった物件に借り手が付くの?」と疑問に思われるかもしれませんが、相場より2~3割安く募集すれば問題なく入居者は見つかります。人によってはまったく気にしない人もいますし、相場よりも家賃が安いので、事故物件を好んで探す人もいるくらいですので事故物件だから賃貸に出せないなんてことはありません。

 

 

購入前の注意点

 

心理的瑕疵物件を購入する際には、いくつかの注意点があります。まず、物件の背景情報を十分に調査することが必要です。過去の事件や事故の詳細を把握し、その影響をどの程度受けるかを判断しましょう。また、周辺住民や近隣の評判も確認しておくことが大切です。

 

 

入居者への告知義務

 

賃貸運用を考える場合、心理的瑕疵のある物件を入居希望者に提供する際には、告知義務があります。これは、入居者が物件の背景を知った上で契約を結ぶために重要な情報提供です。

 

具体的には、過去に自殺や他殺があった場合、その事実を正直に説明する必要があります。この告知義務を怠った場合、入居者からの契約解除や損害賠償請求のリスクが生じる可能性があります。

 

ただし、法律には明確な規定はありませんが、過去の判例では最初の入居者が相当の期間居住した後に退去した場合、次の募集の際には告知義務がほぼなくなるとされています。例えば、最初の入居者が数年間問題なく住んでいた場合、その後の入居者には心理的瑕疵について告知する義務は軽減される可能性があります。この判例により、物件の心理的瑕疵に関する告知義務が必ずしも永続的ではないことが示されています。

 

 

売却時の告知義務

 

心理的瑕疵物件を売却する場合にも、買い主に対して同様の告知義務があります。賃貸と違って売却の際の告知義務は、何年経ってもなくなることはありません。売却時には、物件の過去の事故や事件に関する情報を正確に伝える必要があります。これは、買い主がその情報を基に適切な判断を下せるようにするためです。告知義務を怠った場合、後々のトラブルや法的な問題が発生する可能性があるため、正確な情報提供が不可欠です。

 

さらに、告知義務を怠ることは宅地建物取引業法(宅建業法)違反となります。宅建業法第47条では、重要事項の説明義務が定められており、心理的瑕疵もこれに含まれます。違反した場合、不動産業者には行政処分や罰則が科される可能性があり、信頼性や評判を大きく損なう結果となります。

 

告知義務違反に対する罰則は、宅地建物取引業法において主に不動産業者に対して適用されますが、個人の大家に対する直接的な罰則は明示されていません。しかし、大家が告知義務を怠ることで生じるトラブルや損害賠償請求のリスクは依然として存在します。

 

 

大家に対する告知義務違反の影響

 

契約解除のリスク:入居者が心理的瑕疵の存在を知らされていないことが判明した場合、契約の解除を求められる可能性があります。これにより、大家は賃料収入を失うリスクを負います。

 

損害賠償請求:入居者が心理的瑕疵の存在を知らされていなかったことにより精神的苦痛を受けた場合、損害賠償を求める訴訟を起こす可能性があります。裁判に発展した場合、大家は賠償金を支払うリスクがあります。

 

信頼性の低下:告知義務を怠ることで、大家としての信頼性や評判が地に落ちてしまいます。これは将来的な賃貸募集において不利になる可能性があります。

 

 

告知義務違反の事例と対応

 

過去の判例では、心理的瑕疵の告知義務を怠った大家が損害賠償を命じられたケースもあります。例えば、入居者が自殺の事実を知らされていなかった場合、その入居者が退去を求める際に賠償金が支払われた事例があります。

 

 

最後に

 

心理的瑕疵のある物件でも、その特性を理解し、適切に対処することで、十分に価値ある投資対象となり得ます。安価な取得価格や高利回りの可能性を考慮し、自分に合った運用方法を見つけてみてください。

 

投資家個人の考え方にもよりますが事故物件だからといって、即座に選択肢から外すのではなく、一度冷静に検討してみる価値は十分にあるでしょう。告知義務を守り、法令を遵守しながら、賃貸や売却を行うことで、トラブルを避けつつ有益な不動産投資が実現できるはずだと私は思います。

 

 

より詳細な情報はこちら

 

⇒ 心理的瑕疵のある物件への投資はアリか?リスクと対策を徹底解説