まかさんの役がカリオストロ伯爵夫人だと分かってから原作を読んで、観劇に挑みました。

今になってみれば全くの思い違いだったのですが『カリオストロ伯爵夫人』に登場するレオナールを何故か高齢者だと認識していたんです。

いわゆる伯爵夫人の爺や的な。

だのでキャストが発表になった時にレオナールがいるのは嬉しい驚きでしたが、演じる章平さんが随分とお若く整った美貌の持ち主なことに非常に困惑。

こんな風でしたっけレオナール?と観劇する前から気になるキャラクターではありました。


ついに観劇を果たした今では、あんなにも素敵なレオナールを見せられちゃ好きになるしかない!という気持ちでいっぱいです。

っていうかさ、美しき伯爵夫人の傍らへ常に美丈夫を侍らせておくなんて演出はどこから思いつくんですか?

ありがとうございます!


そして沸々と湧いてくる原作のレオナールってあんなでしたっけ?という疑問。

これは正直嫌だけど、原作をもう一度読むしかないと気合を入れました。



こちらにも書いたのですが、この小説ったら本っ当ーに読みにくい。
その最大の理由は私が伯爵夫人贔屓だからでしょう、つまり主人公アルセーヌ・ルパンは敵!読んでいて腹の立つこと請け合いです。
なんたって『カリオストロ伯爵夫人』での若き日のルパン、ラウール・ダンドレジーくん二十歳ったら実に小憎たらしい。
あまりそういう部分を表に出さないようにしているとも感じますが、自分の技術力が長けていることへの自信満々さ、俺の方が上という態度が本当にむかつくんです。

アルセーヌ・ルパンシリーズを『カリオストロ伯爵夫人』以外読んだことがないので、ある意味ルパンがどういうキャラクターなのか理解が足りないのかもしれません。
でも悪事を成功させる為に状況を掌握し、裏では策略を張り巡らせているのを気取られぬようにしている人物は胡散臭く感じても仕方ないとも思います。
そのいけ好かない要素が若さゆえに爆発しているラウール、悪事のみならず愛の情熱すら止まらない!
伯爵夫人を口説きまくる展開は、わちゃ〜と目を覆いたくなる勢いがあるほどなんです。
それもルパン派なら可愛く見えるのかもしれません。

演劇でのルパンしか知りませんけど、その辺り主役を演じる方は上手く観客の心を掴むよう演じていますよね。
龍真咲さんはミステリアスでソリッドな印象。
そのいけ好かなさをストイックさへと変貌させ、パーフェクトなはずのルパンが最後の恋に揺れ動く様に惹きつけられました。
そして古川雄大さんのルパンは様々な変装で見せる愛嬌にくすぐられます。
ある意味クラリスの前だけで見せる弱々しい姿にときめかない人はいないんじゃなかしら、ルパンだから数多くの女性遍歴があってもおかしくないのに白薔薇に例える程のクラリスに対する愛の怯え。
あれには観客は皆守ってあげたい!という気持ちに動いてしまうはず。

閑話休題。

まぁとにかく原作では小馬鹿にされたりとやられっぱなしのカリオストロ伯爵夫人が可哀想で読んでられないんですよ、しんどくて。
でも耐えなければレオナールが確認できないので頑張りました。

再読すると覚えていたよりも伯爵夫人に配下がいたので、その誰かとレオナールのイメージがごっちゃになってしまったのかなと。
ただ数少ない容貌を表現した箇所によると顎髭は白髪混じりだそうなので、それがあの章平さんの白髪混じりのヘアスタイルの元かもしれません。

原作もそうなのですがレオナール、あなた一体幾つなの。

伯爵夫人が移動する際は原作だと馬車で、その御者としてレオナールは登場します。

「曲がった背中をさらに丸めて座っていた」

髭が白髪混じりの男がこんな風に表現されていたら、高齢者と勘違いしても仕方ないと思いません?

原作のレオナールの描写で驚くのはラウールも何度となく馬車に乗ったにも関わらず、ひ弱な小男としか思っていなかったこと。
それが実際に対決する際には

「ほっそりとした青年と、見るからに筋骨たくましい大男」

と描写されているんですね。
なんと体つきを隠していたそうなんです!
ここが舞台では伯爵夫人に合わせ秘書や運転手へとお着替えしてくれるレオナールへと繋がるのかもしれません。

そして「筋骨たくましい大男」!
ここポイントですよね、少なくとも筋骨はたくましくて大きいんですよ。
うん、ここに章平さん要素をメッチャ感じます。

「彼はジョゼフィーヌ・バルサモの右腕として、雑事全般をうけもっている」

右腕!なんとときめく言葉でしょう。
是非検索してみてくださいよ。

「最も信用し、たよりにしている部下」

…メッチャ良い!
そりゃあもう、舞台じゃ彼以外の配下が存在しないのも納得です。
ボーマニャンと違い、少数精鋭なのがお気に入り。
いいですよね、レオナール1人いれば全て事足りるのですから。

原作でレオナールが描写されている中でもグッときたのは、終盤。
メッチャむかつくことにラウールはとっくにクラリスへと心変わりしたというのに(その理由も腹立つんですよ、あえて書きませんが)伯爵夫人はラウールへの愛を諦められず苦しみます。
なんたってカリオストロ伯爵夫人ですから数々の男と浮き名を流しているわけですよ、だのにラウールとの愛から生きる喜びと苦しみを知ったと胸の内を吐露するのです。

レオナールは諦めろと説得します。
でも伯爵夫人は愛しているからできない、挙げ句死んだって構わないとすら告白するのです。
それを聞いたレオナールは小声で

「ジョジーヌ、かわいそうに……」

と呟きます。

ちょっと待って!
原作のレオナール、ジョジーヌ呼びなんですか!!
非常に萌えですよ、それは。

実のところ作中彼女を「ジョジーヌ」と呼び始めたのはラウールで、口説いてる最中にジョゼフィーヌはあまり可愛くない名前だからと勝手に決めます。
ここを読んだ時に柚希礼音さん主演の『眠らない男』を思い出して少し笑ってしまいました。
ナポレオンが後に妻となるマリー・ジョセフ・ローズを口説く際に「皆はローズと呼ぶわ」と聞いて「僕はジョゼフィーヌと呼ぼう!」と返すんです。
これがフランス流の口説き方なんでしょうか。
まぁこの時も「勝手に決めないで」と呼ばれた方はちょっとお怒りでしたけど。

そんな訳で可愛くて気に入ったので私も「ジョジーヌ」呼びでしたが、作中では好きなようにさせていただけ。
その呼び方をレオナールには許しているんですね?!
果たしていつからなのかは不明ですが、さらっと当たり前のように呼んでいますもの。

舞台もそうですが、この2人はどういう過去と因縁があって常に一緒にいるのでしょう。
残念ながらその記述はありません。
ただ珍しく長い台詞のやり取りがある場面にも関わらず、レオナールのジョジーヌへの絶対的信頼は決して損なわないところに今となっては感動します。
そんなラウールのことなんて放っておけばいいのにね。

結局最後の最後までやられたい放題やられ、敗北するジョジーヌ。
ラウールはとどめを刺すことはできません。
そこへレオナールが彼女を心配して助けに来るのがまた健気でグッときます。
そしてこの事こそが後の『カリオストロの復讐』へと繋がり、また大胆不敵な怪盗紳士アルセーヌ・ルパン誕生へと至るというのは何とも味わい深い幕切れです。

まぁだから読後は不思議と悪くはありません。
ちょっとだけ、ざまあみろ!とジョジーヌ様推しとしては小気味がいい。
舞台のジョジーヌとレオナールもイギリスへ持ち帰った財宝の腹いせに、クラリスとルパンから同じものを盗んでいっても面白いのになぁと思ったりもします。

結局レオナールの着ている服に言及している文章は、登場時に

「青い仕事着姿」

とくらいしかなく。
当然アレな描写はありません。
あれはジョジーヌの趣味?ひいては小池修一郎の趣味ということなんでしょうか、凄いね。

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