トレードシステムに忠実に売りポジションを取りながらも、どこかでカラ売りすることに抵抗を感じている人もいるようです。「カラ売りはキケン」という意見を、いろいろなところで耳にすることが原因だと思います。

下げ相場は、資金が逃げてマーケットがしぼむネガティブな方向なので、そんな流れで利益を得ることに抵抗を感じる、といった心理もあるでしょう。

集めた資金で利潤を追求するのが、私たちが売買対象とする企業という存在です。
だから、「株式投資は買いが基本」という考え方は誤っていません。
でも、値動きを考える際の誤解、錯覚も生まれます。

現物買いならば安全──実際にとてもよくない状況であっても先送りできるため、トラブルにならない、証券会社がのんびりしていられる、という事情があるために定着した観念です。いや、そもそも投資家が慌てない、ということが先かもしれませんが……。

あらためて、「ポジションを取る」という行為を分析してみましょう。

  • 現金を増やすためにポジションを取る
  • 株価の変動で損益が生じる
  • 自分の意思で手仕舞いして損益を確定する

強い銘柄とケンカ腰で対立するカラ売りはキケンかもしれませんが、上記のように客観的に考えてみると、現物買いもカラ売りも全くちがいはないのです。

売り思惑と買い思惑を同時に行う、つまり、「上がると思う銘柄を買う」「下がると思う銘柄をカラ売りする」という戦略を、ロングショートと呼びます。

売りと買いを同時に持つことで、マーケットの急変(上がる場合も下げる場合も)に強いというプラスの面が期待できます。

半面、ポジションが複雑になることが難点です。
ちょっとした背伸びが、意外なケガにつながることも考えられます。

例えば、マーケットの動向を当てにいって「小型株を買い」「大型株を売り」という路線でポジションを取ったところ、小型株は下がって大型株が上がる……俗にいう“股裂き”をくらうこともあり得ます。

でも、中源線で「波動が異なる銘柄」をうまく組み合わせれば、それほど複雑な思考や難しい読みを求められず、結果的にストレスの少ないロングショートを狙うことが可能です。

当然、選んだ銘柄群が売り、買いのどちらかに大きく偏る期間もあり、安定的にロングショートというわけにはいきませんが、それぞれの銘柄を3分割でポジション操作するので、偏りはそこそこ抑えられることになります。

多くの銘柄が下がった現在、「落ち着いたら買いを中心にやる」といった戦略もアリです。
「戻りが早そうな銘柄の陽転を狙う」というのも、継続的な観察があれば成立します。

そういった“自分の意思”を否定する必要はありません。ただ、例えば取引資金をムリに大きくしないとか、資金稼働率を低めにするのと同じように、安全性を高めるために「売り」を行うという考え方も成立することを覚えておいてください。