中源線は、「トレンド転換」を検知して、明確な売り買いを決めてくれます。
でも、自分がもっている変動感覚、売買の好みなどを消すことはできません。
むしろ、そういった“素の感覚”を大切にするべきです。
というわけで、値動きを感覚的に捉えて買い場をさがす際の落とし穴を考えてみます。
誤った買い場さがしは、「下げ末期の最安値を狙う」姿勢です。
下のチャートは、ウクライナ問題で大きく値を下げた2022年3月までの日経平均です。
でも、その影響度を正確に計ることは不可能です。
そもそも、銘柄によって下げ方が全くちがいます(下げなかった銘柄だってあります)。
3月10日以降は「株価指数が落ち着いたか」という雰囲気でしたが、思ったほどは戻らない日がつづきました。でも、個別銘柄の反応はわるくなかったと思います。
そこで、「このあたりが買い場かな」という観測もあったでしょう。
ただし、「この末期の安値を買わないと!」なんて力を入れると、当たればいいのですが、見込みがちがったときのケガが大きいのです。
また、当たったときの快感を経験することで、再び同じ場面に遭遇したときに攻めすぎてしまうかもしれません。知らず知らず、「手が荒れてしまう」(やり方が雑になってしまう)ことが懸念されます。
避けるべき「買い場さがし」の姿勢を示しました。
そもそも株式投資・トレードは、「安く買うことを競う」ゲームではありません。
もちろん、安く買ったほうが有利ですが、「安く買って、高く売る」の言葉を額面どおりに受け止めると、チャートのタテ方向の「価格」だけに目を向けてしまいます。
買い値と売り値の差が利益──そのとおりですが、努力や工夫で売買値を決めることはできません。ちょっとのタイミングで有利になったり不利になったりしますが、マーケットの値動きが短期間のうちに、その数倍、数十倍におよぶことだって当たり前。そして、そんな変化こそが利益のもと、期待する価格変動です。
安く買っても、上がらなければ儲かりません。
安く買ったあと、さらに下がったら、損をします。
だから中源線は、「安くなった」ことで買いを判断しないのです。
例えば過去の半年間を振り返って、今が安値だろうが高値だろうが、あるいは往来の中央あたりだろうが、「これから上がる」と思える変化で「買いだ」と判定します。
値動きを感覚的に捉えたときの感じ方、自分が素直に想像するポジションの取り方を考え、あらためて中源線の判定基準をチェックしてみてください。
「儲かる」「損する」といったシュールな現実から離れ、可能なかぎり純粋な気持ちで値動きを見て、自分が使っている中源線というものを見つめ直すことも大切です。
好き、嫌い……こんな観点を持ち込むのも“あり”だと思います。
私たちの視線は、つい過去に向いてしまいます。
「あそこで買っていれば……」とか。
だから、意識的に「未来」に目を向けるのが、ちょっとした錯覚、誰もが抱える勘違いの修正に役立つはずです。
「安くなったから買う」
「ここが最安値かもしれない」
これらは、パターン分析をもとに未来を見ているようで、見てはいけない過去を見ている部分もあります。
上昇を狙う買い戦略でビシッと利益が出るケースは、「安く買った」ときではなく、「高く売った」ときです。だから、「高く買って、さらに高値で売る」みたいな言葉を、実践家が大切にするのです。
そして、「買いは遅かれ」なんて、ちょっと考えると雑な指針が、金言・格言として残っているのです。