使ってはいけない表現」とは?


株式市場に関する情報で目にする言葉はたくさんありますが、経済紙の市況解説でよく見受けられる“安易な姿勢の投資家に迎合した”数々の表現です。

多くの人が気にかけている状況、例えば日中・米中関係、あるいは米国の経済政策などを取り上げた場合でも、ほぼ全員が納得する“無難な”解説をします。
客観的に考えれば、特別な価値をもたない情報です。

最後に「今後の動向に注視すべき」などと当たり前のコメントで締めくくる点も、無価値の証左です。

さて、安易な姿勢の投資家に迎合した情報であっても、株式市場全体の動向について、ちょっと掘り下げないと見えない面白い材料が紹介されていることもあります。


しかし、「で、買いなの? 売りなの?」と思いながら読んでいる読者に対して、どっちつかずの言葉で終わってしまいます。
「これによって一段高の可能性がある。一方、○○で資金の動きが鈍れば、織り込み済みで下落トレンドに向かうとの懸念を示す向きもある」

アカデミックな解説のようで、どっちつかず、要するに何も書いていないわけです。

もう少し、ツッコミを入れてみます。

そもそも、投資関連情報には、「商業的強気」というバイアス(偏り)があります。
これも、構造的な問題です。

相場なので、上がることもあれば下がることもあります。

いわば、常に上げたり下げたりの繰り返しです。

でも、「市場に資金が流入する明るい状態」である上げ相場を、多くの関係者が歓迎します。また、現物市場だから当然かもしれませんが、多くの投資家は買いから入り、常に現物なり信用取引の建玉なりで“買いポジション”を持っているのです。

必然的に、上げ相場が「良い相場」(だから素直に望むべきだ)という認識があり、自民党政権安泰の株高に期待します。
私だってその1人ですが、「とりあえず強気を言えばいい」というメディアの安易な感覚が、問題となるバイアスを生みます。

これが「商業的強気」です。

投資家に直接アドバイスしているわけでもない市況解説に、「上がるのが期待だよね」「下がったら申し訳ない」なんてニュアンスが入り込む理由は、こうした構造的な問題なのです。

実際に相場が下がると、「利益確定売りで反落」なんて言葉が使われたりします。
「売り注文を出した人を対象にアンケートでもとったのか?」と突っ込みたくなるのですが、行間からは「今日は下がっちゃったね・・・ごめんね。ガマンして」みたいなメッセージが……。

「機関投資家の持ち高調整で下げた」なんて解説もあります。

大量の株式を保有する機関投資家が、それほど機敏に持ち高を増減させることがあるでしょうか……否!

うっかり受け身の姿勢になると、商業的な偏りのある情報に影響されてしまいます。
気をつけなければいけません。