決算の数字が良かった、あらためて買われた、その流れが続く──。
こんな傾向が明確なケースもありますが、材料がどれだけ影響するか、いつまで続くかわからないのが現実です。
コーフンするほどのニュースだったはずが、平時に戻れば「子どもだましの材料」に成り下がっているかもしれません。
ファンダメンタル分析そのものを否定するつもりはありません。
でも、株価変動は「人気」の要素を多く含んでいるので、ファンダメンタル分析に絞ったアプローチは、一筋縄ではいかない作業です。
宣伝を兼ねて、拙著『凄腕ディーラーの戦い方』(プロのインタビュー集)に登場する証券ディーラー本間忠司氏の言葉を紹介します。
例えば、ある会社について、「M&Aに関して3時から記者会見」というニュースが流れたとします。ふつうは「何だろう?」だけですが、知識が豊富ならば、「子会社の製薬会社が対象で、それを買うのが〇〇社かもしれない」といった推理を働かせることが可能です。
(中略)
材料やニュースは瞬時に株価に織り込まれるといわれますが、その瞬時にポジションを取れば、1番手になる、ゼロ番手になることも可能なんです。私が、実際にやっていますから。
(引用おわり)
この本には11人の実践家が登場するのですが、ひとりずつ人物像を示す言葉を載せています。本間氏は、「機能する“材料張り”で利益を出す証券ディーラー」です。また、彼の言葉を拾った章のタイトルは「経済を知れば株式市場の動きが読めます」。
ケタ外れの知識と経験、最新のニュースを見てサッと行動できる特殊な環境、迷わず動く瞬発力、等々……多くの要素がそろうことで、限定的に機能するファンダメンタル投資を実行しています。
また、売買行動の土台となっているのは、新人ディーラー時代に教えられた、「仕掛けて手仕舞う」というイヤになるほど単純な訓練なのです。
ここまでのことをやらない限りファンダメンタル分析なんて機能しない──そう言いきるつもりもありませんが、その場限りの評論的な情報で「売りか買いか!」なんて考えることだけは、絶対に避けるべきなのです。
「その場限りの評論的な情報」と述べました。
マーケットに関する情報については、本当に無責任だと腹が立つことばかりです。
しかし、根底には構造上の問題があります。
「今日の値動きを解説してほしい」という投資家の需要にメディアが応える結果、取って付けたような後講釈、特別な意見を含まない言葉の羅列が多くなるのです。
例えば投資セミナーで、講師が「重要なのは銘柄情報じゃないんですよ」と力説したとしても、参加した投資家の多くは最後に次のような質問をします。
「よくわかりました! で、ちなみになんですが、先生が注目している銘柄は?」
気持ちはわかりますが、「少し勉強してみませんか?」と言いたいのです。
だって、そんな安易な姿勢の人が多いということは、ほんの少し勉強するだけで優位に立つことができる、「勉強してみよう」という発想があるだけで個人投資家の上位5%に入ることだって可能なのですから……。