スポーツの世界に、「イップス」という、やっかいなシロモノがあります。
イップスとはメンタル面のよろしくない作用で、体を動かせなくなる、スムーズに動かないという“病気”です。

練習ではスムーズにできる、しかし本番でダメになる……。
例えばゴルフは、ボールが止まっていて好きなタイミングで打てばいいので、症状が顕著になりますが、イップスはあらゆるスポーツに存在するようです。

想像しにくいのですが、野球にもイップスがあると聞きます。
例えば野手が打球を取って一塁に送球しようとしても、ちゃんと投げられない……ヘンな間が生じたり、ギクシャクしてコントロールが乱れたりするそうです。
「上手にやろう」と考える人間の心理が、おかしなものを生み出してしまうのです。

トレードには肉体的要素がない分、メンタルが重要です。
「こうするんだ」というやり方を知っているうえに、理論も経験も十分なのに、肝心なところで脳がブレーキをかけてしまう……正確には、感情を伴う複雑な記憶が作用して「脳と心」がヘンな命令を下す、ということでしょう。

ものを考える「意識」レベルではなく、いろいろなことを感じ取る「無意識」(潜在意識)レベルで起こる不思議な現象があるのです。

こんな現実を考えると、「表面的な理論の限界は意外と低い」と考えざるを得ません。
無意識による反射的な行動が度を超えないよう、地味ながら“売買のかたち”を整えておくべきです。

「売買には分割が必須」
「分割売買が技法の要件」

私はこのように述べ、分割売買を提唱しています。

しかし、反論もあるでしょう。
「分割に注ぐエネルギーで、より精緻な分析に努めるべきだ」
「真剣に分析するのだから、売買のタイミングも絞り込めばいい」

なるほど、一理あります。
「分割そのものが、林が否定する“カッコつけのワザ”“不要な行為”ではないか」ってことですよね。

しかし、私の主張の前提は、「ものごとが計算通りに進まない現実」です。
また、分析と研究にエネルギーを注いでも、長い時間を割いても、先行きを当てる能力は大きく上がらないと考えます。
マーケット参加者全員が、ほぼ同じ条件で「当てよう」と競争しているからです。

つまり、努力しても、予測の的中率はわずかな上昇しか望めないという現実があるのです。
これも、「予測」よりも「対応」に力を入れるべきだと考える根拠のひとつです。

結局は、それなりの確率で曲がる(予測が外れる)ことを前提にするということです。
少なくとも勝率100%でない限り、負けたときの金額を抑える努力は欠かせません。
99連勝しても、その勝ち分をつぎ込んだ100回目の勝負で大負けしたら……。

資金が大幅に減って物理的に厳しい状況に追い込まれる、あるいは、大きな負けで精神的にダメージを受け、イップスどころか再起不能になるといった“激ヤバ”な状況だけは、なにがなんでも避けなければなりません。

しかし、そんな悲劇が起きてしまうのが、株式市場の現実です。
“ワクワク感”がないのですが、「負けない方法」「逃げ回って危険を回避する行動」の重要性を強く認識する必要があります