昔は、相手の顔も見ずに結婚する事例がいくらでもあったそうです。
両親や祖父母から聞いた話なので、江戸時代や明治初期のことではなく、つい数十年前まで日本は、いろいろな面で選択肢が少ない社会だったということです。

翻って現代は、多様な価値観が認められています。
例えば、同性同士のカップルが社会的に認められるようになりました。

急激な変化は、肯定派も否定派もビックリだったのではないでしょうか。

また、インターネットの普及も手伝って、多くの分野で情報が豊富です。
どんなことをするにも、落ち着いて考える余裕があるはずなのに、逆に、進む道を選ぶのが難しくなってしまっているようです。
情報が多すぎて、「正解はなに?」と思考が停滞する傾向があるのです。

株の売買においては、落ち着いて考えることなく、大量の情報を整理しきれないまま、慌てて行動に走る傾向が強くなった気がします。
超低金利、年金制度の混乱、少子高齢化……こういった不安要素が原因かもしれません。

そこで「積極的に運用しようか」という発想になるのですが、はじめての人にとってはハードルが高いようです。
ただ、ネット証券の増加などで「ハードルが低くなった」部分はあるでしょう。
やる気になった人は、「さっさとやらないと損だ」とばかりに、準備不足で行動を起こすのです。

気に入った人がいても、いきなりプロポーズはしないでしょう、たぶん。
まずはデートに誘うなど、ある程度の手順があるほうが好ましいのです。

経験豊富なプロトレーダーでも、新しい手法を手がけるときなどは、ゆっくり慎重にスタートします。
日常における、飲み会の会場の下見しかり、車を買うときの試乗しかり……大切なカネを思いきり偏った状態にするのがトレードですから、場合によっては「石橋をたたいて渡らない」くらいのノリで新局面に臨むべきです。

情報が豊富なだけに、つい、手を出さないことのリスク(機会損失)を感じ、本来の自分に比べて“チャラい”行動に走ってしまうのが、私たち現代人の傾向かもしれません。

ショートターミズム(Short-termism)という言葉があります。

「短期志向」というのが和訳です。
投資において本来あるべき姿を忘れ、短期的な利益を求めすぎる姿勢を、一種の社会問題と捉え、否定的に「ショートターミズム」と呼ぶわけです。

でも、昔の投資家はみな慎重だった、というわけではありません。
「なに? その銘柄がいいのか! よし買うわ」なんて会話は、いくらでもありました。


そんな人間くさい部分が面白いし、株価を動かす原動力にちがいないのですが、前述したように、リスク管理の観点では警戒すべき人間の特性です。

コンピュータが発達し、情報が充実することで生まれたのが、「バックテスト」という発想です。

トレードをルール化し、過去のデータによって売買成績を検証してみようということです。

考えてみれば、これだって決して新しい発想ではありません。
裁量のトレードをスタートするときにも、一定の経験と慎重さを持ち合わせた人ならば、チャートを見ながら「機能するだろうか?(儲かるか?)」と確認します。

「バックテスト」というカタカナ語を使っているので、目新しいと感じるだけです。
ただ、以前よりは情報と知識が豊富になった分、ちょっと科学的な視点で考えたいという向きは増えているはずです。

全体が短期的、刹那的、かるいノリになる一方で、理論を考えたい人にとって良い環境が整ってきたのです。
もちろん、しょせん過去のデータによる検証で、未知の未来における利益は確約されないのですが、ひとつの客観的な答えを出してくれることは間違いありません。

トレードでは、未知の未来に不安を抱えながらも行動を取るので、「実行力」こそが大切です。こんな認識を大切にする一方、カチッとした数式を過去データに当てはめたバックテストについて、概念くらいは知っておいたほうがいいでしょう。

―つづく―