きっかけは街頭アンケートだった。

仕事帰りの道で「青年の意識調査のアンケートに協力していただけませんか?」
と一人の女性から声をかけられる。
満面の笑みに、たじろいだ。
セールスか宗教の匂いがした。
スルーして通り過ぎようとしたら、すかさず女性が私の服を褒めてきた。
明らかにお世辞だと分かったが悪い気はしなかった。
上手い具合に乗せられてアンケートに応じてしまったが
質問に答えながら、奇しくも女性が同郷で有ることが分かり、不覚にもその場で意気投合してしまったのだ。
聴けば、彼女が入っているサークル内で、近々占いフェアと言うイベントがあるとのこと。
一緒に来て見ないかと誘われ二つ返事で応じてしまった。
日を改めて彼女に連れて行かれたビル内の一部屋に
「〇〇カルチャーセンター」
と書かれていた。

占いフェアの内容は姓名判断だった。
占いの先生として紹介された人は
実は教団内の人間だった。
鑑定の結果は驚くほど当たっていた。
一気にこのサークルへの期待値が高まった。
コンサルタントという立場の別の女性から
「あなたは今、転換期に来ています。自分を高めて行く為に、一緒に学んで行きましょう」
と勧められ、すんなり入会してしまった。

当時、「彼氏いない歴二十数年」と言う記録を伸ばし続けていた私は、職場への道をどこへ寄り道するわけでもなく、真っ直ぐ行き来するだけの生活に退屈さを憶えていた。
何か習い事でも始めようかと考えていた矢先だったので、教団からしてみれば、いいカモであったに違いない。

ここから一ヶ月足らずでマインドコントロールは完了する。
地域に寄って対外的な名称はカルチャーセンターであったり、教養文化センターであったり、様々だが、教団内部では共通して「ビデオセンター」と呼ばれていた。
入会から教祖を明かすまでの流れはビデオセンター内でほぼマニュアル化されており、あまりに巧みである。

To be continued…