サタンの支配下に堕落した人間は万物をもサタンの支配下に渡してしまった。万物の代表であるところのお金を神側に戻すことで(万物復帰)自らも神側に復帰する条件となる、と言う意味付けから、コンサルタントに献金をするよう促された。
高校卒業して入社して二年目。
残業代足して手取りが10万有れば多い方、という安月給のなか、それでもコツコツ貯金した30万円。
「サタン分別数は40」と言われたことを真に受けて、夏のボーナスを全部はたいてプラス10万、合計40万の献金を教団に差し出した。

実は、ここにもマインドコントロールの巧妙なカラクリがある。
献金額が多ければ多いほど、無意識の内にそれ相応の価値を教団に対し自ら見出だそうとするため、信仰に入る初期の段階で献金を出させるのは極めて効果的である。

自身が多額の献金を払った教団はその金額に価する素晴らしい教団(でなくてはならない)という心理が働く。
お金と共に、時間も同じような効果をもたらす。
「これだけの時間(歳月)を注ぎ込んだ教団は素晴らしい教団でなくてはならない。」
時間と金を注ぎ込めば注ぎ込むだけ、その思いは強くなる。例えば外部から教団に対しての悪い噂が聴こえたとしても、教団の間違いを認めることは、それまでの自らの行動をも全て否定することになる。そして
「私が今まで多くの時間とお金をつぎ込んできたこの教団に間違いなどあってはならない」
という強固なシールド(盾)となり、悪い噂をはね返す仕組みが出来ていく。

献金を済ませるとビデオセンターのゲストとしてのプログラムは修了となる。
その後は統一協会の信者としての道を歩み始めるのだが、ここで全ての信者に厳しい戒律を課せられることとなる。
一、自由恋愛、男女交際禁止
一、禁酒
一、禁煙

時ならぬ時にサタンと関係を持ち、堕落した人間が神の子として復帰するためには、救世主メシヤである文鮮明に結婚相手を選んでもらい合同結婚式を受けるまでは、自由な恋愛をしてはならない。
また、万物までサタンの支配下となった今、酒やタバコに心を支配されがちな堕落人間は、それらを一斎絶つことで万物に支配されないようにするのだ、との教えだった。

正直、自由恋愛禁止と言われ、ホッとした部分はあった。容姿や性格にコンプレックスが多すぎて、異性と付き合ったことなど無かったし、それでいて自分が異性にどう思われているのかを凄く気にするところがあったため、同世代の異性と席を共にする場合、好きでもないのにムダに緊張してしまう自分自身が煩わしかった。
今後はそんな煩わしさから解放されるかと思うと気が楽になった。

お酒については、結構辛いものがあった。職場は人の出入りが激しく、歓迎会だ送別会だと言ってやたら飲み会が多かった。私はいつも盛り上げ役だったため、周りへの対応がとても大変だった。

誤ってお酒を飲んでしまった場合、断食等のペナルティを課せられてしまう。

ブランデー入りのチョコレートをうっかり口にしてしまった男性信者が断食させられていたのは、とても気の毒だったが、今思えば、ばかばかしい以外の何物でもない。

表向きは様々な意味付けをなされている戒律だが、ここにも又、マインドコントロールの巧妙なカラクリが隠されていることを脱会時に知らされ愕然とすることとなるのだった。