「大韓航空機爆破事件」
その工作員が金賢姫であり、
彼女が事件の全貌を赤裸々に告白した著書が
「いま、女として」
である。
北朝鮮の主体(チュチェ)思想の下、朝鮮労働党の支配下で国民は徹底して「偉大なる指導者 金正日同志(トンジ)」に服従することを強いられる。
党は外部からの情報を遮断し、資本主義を「悪」とする。自国の生活水準の低さを「南朝鮮はもっと酷い」と言う偽りの情報を与えることで国民を満足させ、更には全ての生活は「金正日」のお陰、と教え込み洗脳を施していく。
1988年にソウル五輪が開催されるにあたり
「二つの朝鮮を策動する南朝鮮の飛行機を落とせ」と言う、金正日の親筆指令により、工作員に抜擢された金賢姫は大韓航空機爆破に成功する。
しかしその後、工作員として捕らえられ服毒自殺を試みるが失敗に終わり韓国警察に身柄を拘束される。
決して身分を明らかにしてはいけないと、韓国警察の尋問に対し、嘘を重ね攻防を続けるが、ソウルの街を初めて歩いたとき、北朝鮮内で聴かされていた情報と全く違っていたことで、自身が洗脳されていたことに気付き、全てを自白することを、決心する。
驚いたことに北朝鮮が国民に対して施す洗脳は、統一協会と全く同じ手法だった。
そして、金賢姫が、金正日の命令なら全てが正しいことであると信じ、与えられた任務を誇りを持って遂行しようとする忠誠心は
統一協会信者が文鮮明に対して抱いている思いと同じだった。
また、韓国警察との攻防途中、「金正日」に対して侮蔑の言葉を投げかけられた時の憤り。
党の情報操作により、騙されていたことを知った時の衝撃。
金賢姫が感じてきた心の動きが、私の感じてきた思いと重なって、本を読んでいる途中、
涙を抑えることが出来なかった。
そして上下巻を一晩で一気に読破した。
あまりに衝撃的だった。
統一協会にいるときには
「北朝鮮」は「サタンの国」であり
最も忌むべき存在だった。
それなのに、この本を読んで
統一協会は北朝鮮と全く同じであり
教団内は「ミニ北朝鮮」と言っても
過言ではないことを悟った。
カウンセリングの初め、K先生から
「金賢姫について、どう思うか?」
と訊ねられたことの真意が、
この時やっと分かった。
「あなたも同じだ」
と気付かせたかったのであろう。
読後は、放心状態だった。
ただ、じわじわと
統一協会という教団、
そして教祖文鮮明に対し、
怒りが込み上げて行くのが分かった。
この怒りが次に紹介された本を読むことで
頂点に達することとなる。
それは
ジョージ・オーウェル著
「1984年」
と言う本だった。