【今日の1冊】『徒然草』188段 | ことのは徒然

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日々の徒然に思いついたことを書き留めてます。

今日ご紹介するのは

兼好法師『徒然草』

 

1冊というより、

1段にフォーカスしてご紹介します。

 

この仕事をしていて、得してるなと思うのは、

自分が興味あるなしに関わらず、

与えられた文章と向き合わざるを得ないということ。

 

え、それってむしろ苦痛なのでは?

と思うかもしれません。

 

まあ、確かに娘とバンバンやりあった後に、親子不仲の小説の問題を作らなくちゃならなかったりすると、けっこう凹みます。というか、客観視できなくてしばらく仕事になりません爆  笑

 

あるいは。

すごく前向きな小説の解説しなくちゃならないのに、運悪く私自身がメンタル落ちてたりすると、けっこうしんどいです。

でも、それもまた、何かの気づきになったりするわけで、

結果的に、浮上できたりもします。

できないときもあります爆  笑

 

で、今回は今抱えているもやもやの突破口となるような文章に、ピンポイントで出会っちゃったので、

ホットなうちにそれをご紹介しようと思いました。

 

  古典エッセイのいいところ

『徒然草』は鎌倉時代末期のエッセイ。

隠居生活を送っている兼好法師さんが、

日々のヒマにまかせて書いてます。

けっこう『枕草子』の影響を受けているんですが、

それはまた別の機会に書けたらいいなぁ、と思います。

 

で、古文のいいところは、

内容が比較的シンプルで根源的だということ。

 

物事って、進化していくうちに細分化されていくじゃないですか。

 

例えば学問。

多分古代ギリシアでは「学問」=「哲学」とか「神学」とか、ほんとざっくりした捉え方だったんだろうけど、今じゃ、学問の分野なんて数え切れないほどあって、細分化・専門化が進んでる。

 

古文は、いまから数百年、中には1000年以上前に書かれているものもあるくらいだから、細分化されて複雑になってしまった現代よりも、生活や考え方がシンプルな時代のもの。だから、書かれるものもシンプルで根源的。

 

なので、いろいろ複雑に考えすぎて頭の中がごちゃごちゃになったときに、「そもそもどうなの?」というそもそも論に戻れるっていうんですかね。余計なことを取り去って、本筋を考えるのにすごく役に立つと思ってます。(あくまで個人的な考え方です。)

 

  『徒然草』188段からのアドバイス

教材ではよく使われている段なので、何度も教材化してるし、内容もわかってるんだけど、このタイミングで巡ってきたことに、すごく意味があった。

 

実は私、少し前からいろいろ新しいことに手を出して、それぞれ展開し始めちゃったものだから、手一杯になってしまって身動きとれなくなりつつあるんです。どれも成功させたい、でも、それぞれにかける時間がうまく捻出できなくて、いろいろ遅れ気味。

いらいら。

そんな私に、この文章は響きました。

 

要約すると、何か成し遂げたいのなら、何が大事なのか、いちばん大事なことを見極めて、あとは捨てなさい、って話。


例えば、「説教師(仏教の布教活動をする人)になろう」って思ってた人が、まず馬に乗る練習を始める。説経会場に行くのに、馬に乗れないとかっこ悪いからね。で、次に当時流行っていた歌謡を練習し始める。説経をしたあと、檀家さんが宴会してくれるときに、何の芸もないとちょっと残念かな、とか思っちゃってね。真面目だからがんばっちゃって、馬も歌謡もなかなかの熟練になってきたもんだから、もっと立派にできるようになりたいって思っちゃって、結局説経のほうを学ぶヒマがなかったっていうお話。

 

アホか。って思うんだけどね。

でも、よく考えてみると、結構似たようなことやってんのよ。

いろいろ言い訳しながら、枝葉末節に逃げちゃう。

自分の中心である「幹」の部分で本気で勝負して失敗したら、もう立ち直れない気がするから、まずは周りから固めていこう、みたいな。

ありませんか?

私だけかな。

 

今回の私は、「新しいことに挑戦する」という、ちょっといい感じの言葉を隠れ蓑にして、「本来本気でやるべきこと」から逃げてたかもなぁ。と。

 

兼好法師さんが言うんです。

 

「一事を必ず成さむと思はば、他の事の破るるをも痛むべからず。人の嘲りをも恥づべからず。万事に代へずしては、一の大事成るべからず。」

一つのことをなんとしても成し遂げようと思うのならば、他のことがだめになっても嘆いてはならない。他人の嘲笑も恥じてはならない。すべてのことと引き換えにしないで、一つの大事が成就するはずはない。

 

つまり、馬に乗れなくて笑われたとしても、何の芸もなくて残念なやつと思われたとしても気にするなってこと。あんたは説経師なんだから、説経が抜群だったら問題ないよね、ってこと。

 

多分、これは、1つのこと以外しちゃダメってことじゃなくて、優先順位の話をしているんだと思うのよ。あと、なんとしてもそれをやり切るぞ、っていう覚悟ね。

一事をなすためには、退路を断って進め、と。

で、それで成功したら、改めて次に行けばいいってことなんだよね。

 

まあ、人それぞれだからね。

マルチタスクが得意な人もいるから、これがすべての人に当てはまるとは言い切れないけど、でも、いろいろごちゃごちゃになって立ち往生している人にとっては、すごく響く言葉なんじゃないかと思う。

 

まさに。今の私!

兼好法師さん、ありがとう。

 

こんなシンプルなアドバイスがほしいときには、

『徒然草』オススメです。

時空を越えた先達の言葉。

最近は読みやすい訳もいっぱい出てます!