先日、八月納涼歌舞伎の第2部を観てきました。


『東海道中膝栗毛』『雨乞其角』の2つの演目です。

 



順番が逆になりますが『雨乞其角』から。
長唄の舞踊です。
中村扇雀さん扮する俳人其角の弟子として若手役者がずらっと登場し豪華です。

中村橋之助さん、市川男寅さん、中村福之助さん、中村鷹之資さん、片岡千之助さん、中村玉太郎さん、中村歌之助さん、中村鶴松さんら。


舞台の下手には顔の見慣れない役者さんが。誰かなと思ったら中村扇雀さんの部屋子さんで中村祥馬さんだそうです。関西出身で、あまり歌舞伎座の舞台に立つ機会はないそうですが、頑張っていらっしゃいました。船頭の中村虎之介さんは、明るい雰囲気のある役者さんですね。

踊りで目を引いたのは、やはり中村鷹之資さんと中村橋之助さんかな。みなさんお上手なのですが、この二人は重心が安定していて、一つ一つの形がきっちり決まりますキラキラ

中村玉太郎さん、中村歌之助さん、市川男寅さんはお化粧映えする端正な顔立ちですね。舞台に一列になって踊る場面は、目がいくつあっても足りないぐらいで、誰を見てよいのやら非常に贅沢でした。

立役だけでなく、若手女方も出ていて嬉しかったです。坂東新悟さんと大谷廣松さん。大谷廣松さんはここのところ立役が多かったけど、やはり女方が艶っぽくていいですね照れ


そして、中村扇雀さんと坂東彌十郎さんが若手の舞踊をしっかり締めていました。扇雀さんは俳人としての品や教養が感じられました。

短いながら清々しく後味の良い舞踊でした。

 



『東海道中膝栗毛』
誰もが耳にしたことのある近世の名作。歌舞伎の題材として良いですね。

それにしてもすごい出演者の数びっくりチラシ配役表の1/3ぐらい占めています。

幕開き喜多八葬儀の場面では、「トランプ・ディビット」と書かれた花輪があって目が行きました笑舞台番の中村虎之介さんが、何か言っていて前方では笑いが起こっていたのですがよく聞き取れずショック

葬儀の参列者として、市川中車さん、中村獅童さん、中村七之助さんが花道から、これでもかと早替りで登場します。歌舞伎の様々な役に扮して登場する趣向が面白かったです。ただ本舞台に来てから顔を見せず、後方を足早に通り過ぎるだけではもったいないですね。せっかくの素晴らしい役者さん達があせる

七之助さんなら早替りだけではなく、やはりウットリするような美しい女方も見たかったなー。どうせなら七之助さんの花魁も見たいキラキラでも市川猿之助さんの女方も良かったです。声が高くて七之助さん以上に透明感のある声でした。

このお芝居は、たくさんの場面転換でいろいろなシーンが目まぐるしく出てくるのですが、1時間50分のお芝居でもきちんと舞踊を挟んでくれたのが嬉しかったです。清涼剤になります。で、全体を通してこの舞踊の場面が一番ハイクオリティでしたキラキラ

特に「藤娘」を踊った片岡千之助さん!!素晴らしかった。おぼこい娘の初々しさがあって、かつ、しなやかでお上手でした。

千之助さんの踊りをオペラグラスで注視していたら、周りの客席からは笑いが・・・。何かと思って舞台に目をやると、閻魔大王の市川右團次さんと坂東新悟さんが、杯を振り回してふざけているではありませんかびっくり・・・ああいうの、いらないなぁ・・・あせるきちんと歌舞伎を見せる場面ではじっくり見せて欲しい。逆にずっとふざけっぱなしではつまらないです。

で、次によかったのは、やはり真面目に踊る成駒屋三兄弟!!襲名披露でも踊った「連獅子」の前シテを踊ってくれました。これは、本興行で一ヶ月踊っていますから、やはりレベルが高いビックリマークこの2つの舞踊は本当の衣装で、本当の振りでもっと見ていたかったです照れ

次によかったのは、やはり中村鷹之資さん、中村玉太郎さんらの舞踊です。

いろいろとふざけた場面が登場するのですが、やはりきちんと歌舞伎のお芝居をしている役者さんが印象に残っています。上述の千之助さん、成駒屋三兄弟らに加え、中村米吉さん、市川染五郎さん、市川團子さんら。

市川猿之助さんは、ずっと可笑しいお芝居のなかでも一切ウケ狙いや誘い笑いをせず、真面目に歌舞伎の芝居をやり通したのはさすがだなと思いました。

中村米吉さんは、五日月屋女房のお役。このお店はお子様ランチが出てきたり、禿が男声を出したりする、ハチャメチャな設定なのですが、そんななかでもきっちり引き締めてお芝居をしていたのが良かったですニコニコ店の女房として貫禄や艶もありました。

ごちゃごちゃした作品の中でも、役者としての自分の魅力を出せる方はいいですねぇ照れ

市川染五郎さんはそろそろ声変わりでしょうか。声が枯れて辛そうでした。一方、市川團子さんは立廻りの腰も低く、足もきちんと開いて上手かったです。声も伸びやかでよく通る。

お芝居で少し気になったのは身請けのことでしょうか。猿之助さん扮する花魁が、お金のない弥次さん(松本幸四郎さん)に身請けされると決めました。しかし、身請けって花魁の意思で出来るのではなくて、楼主に花魁の借金や身代金を払うことで初めて楼主から認められるのではないのかな??と思いました。

この作品を最後まで見て気づいたことは、やはりふざけないで真面目に歌舞伎をしているときの歌舞伎役者が一番面白くて魅力的だということですニコニコ観客を喜ばせること=ふざけることではなくて、真面目にお芝居をする中で笑わせてくれたらこの上ないなぁ照れ

これについては、坂東巳之助さんが『文學界』2016年10月号のインタビューで的確なことをおっしゃっていたなと思います。

初演の初代市川猿翁の『東海道中膝栗毛』はどんな作品だったのでしょうか??

もし、次作があるのであれば、きちんと歌舞伎を見せる割合を増やしてくれると嬉しいなぁ。ちゃんとお芝居をするところと笑わせるところのメリハリがあった方がより見応えのある作品になるかなと思いました。



この作品を観て気づいたのですが、私は今まで喜劇の世話物をあまり見てこなかったのかもしれません。『文七元結』『浮かれ心中』『加賀鳶』なども面白くてお腹を抱えて笑えるお芝居ですが、それぞれホロリと泣かせる場面もあって単純な喜劇ではありませんね。人情や人間性、生活感もうまく織り込まれています。

この作品を見たことで、これからもっと色々な喜劇の世話物を観たいなと思いましたビックリマーク



さて、九月の歌舞伎座は中村福助さんが4年10か月ぶりに復帰なさいますね!おめでとうございますキラキラ脳内出血を克服しての復帰、本当に大変なことだと思います。

昼の部はやはり、福助さんと児太郎さんの出演する『金閣寺』が観たいです。夜の部は、坂東玉三郎さんの『幽玄』を観たいなぁ。

 

チケットはまだ買っていません。

 

私は秀山祭と相性が悪いようで、チケットを買ったのに結局都合が付かず行けなかった、ということが2年連続でありました。

 

今年は確実に行ける日の直前に、空いている席を取ろうと思っていますニコニコ