市川海老蔵さんの第四回自主公演ABKAI「石川五右衛門~外伝」@シアターコクーンに行ってきました。前回の博多座とは全く違う新しいストーリーで、五右衛門の新たな魅力がみられて楽しかったです音譜

 

 

最近の新作歌舞伎は、「これ歌舞伎なの?」と思うようなものもありますが、海老蔵さんの新作歌舞伎は、どこからどうみても歌舞伎なので満足度が高いです。所作、科白回し、音楽などなど。根本として揺るがない歌舞伎のエッセンスがあり、異分野で活躍する人たちを取り込みつつも、最終的に歌舞伎として纏め上げる手腕が素晴らしいビックリマーク現代エンターテイメントとして歌舞伎を発展させてくれる可能性を感じました。

 

舞台の序幕は南禅寺山門の場から

華やかな山門の上から市川海老蔵さんの良い声で「絶景かな~」が響き渡ります。最近ますます良い声だなぁ。

 

 

京傾奇夜左衛門一座の場面では、藤間流と花柳流の日本舞踊の方々、そして中村壱太郎さんの美しい舞が見られました。華やかな踊りと、舞台下手の長唄の演奏がぴったりです。個人的には大谷廣松さんの踊りも見たかったなぁ。

 

三上の百助は山田純大さん、足柄金蔵は前野朋哉さん。テレビ東京「石川五右衛門」に出てらした俳優さんですね。博多座では市川猿弥さんと市川弘太郎さんがこのお役でしたね。この2人は狂言回し的な役割もしつつ、立派に立廻りもなさり、見得も切ります。ポルトガル人マリオは市川九團次さん。外国人にしか見えない拵えも違和感ない笑九團次さんと前野さんが片言の英語を話す場面は笑いました爆  笑

 

ところ変わって駿府城場内の場からは上手に義太夫が登場します。イケメンの竹本司太夫さんと三味線は鶴澤慎治さん。この場面は、家康の家臣である片岡市蔵さん(酒井忠次)と市川右團次さん(柳生宗矩)の歌舞伎の科白回しに、太三味線の音と重厚な義太夫でびしっと締まります。

 

このお芝居で一番の見どころはなんといっても市川海老蔵さんと中山優馬さんの迫力ある立廻りキラキラ舞台、客席を縦横無尽に駆け巡る立廻りは圧巻でした。すごいスピードと筋力ビックリマーク客席を飛んでいましたね。足が着いてないんじゃないかと思うくらい。客席の階段を2段、3段飛ばして、ジャンプで舞台に着地。そんな超スピードなのに一つ一つの型はしっかり美しく決まるところが海老蔵さんのカッコ良いところです。中山優馬さん演じる十兵衛も、五右衛門と互角に闘う相手なので速いスピードで討ち合います。

 

中山優馬さんはフレッシュさが良かったです。ニセモノのお地蔵さまに手を合わせるような、純粋で真っすぐな若武者。キリッとした見得もシンプルで良い!そうか、見得って元々こういうものなのかもとすら思いました。立廻りでは、五右衛門の方が強靭な動きとスピードで一枚上手なのですが、十兵衛は真っすぐな心で体当たりをします。

 

技の五右衛門に対して一心な十兵衛。お互い別の強みで互角に闘うところが、良かったです。そして、真っすぐな十兵衛の姿は、歌舞伎に体当たりで挑戦する中山優馬さんそのものと重なりました。いい配役だなぁ~。歌舞伎に身を置いていないからこそ生み出される新鮮な空気を、逆にうまく生かした作品だと思います。海老蔵さんは激しい動きのなかにも余裕があり、血気盛んな若者を諫める精神的な大きささえ感じましたニコニコ

 

 

五右衛門の衣装もドストライクでした。白塗りの海老蔵さん鼻が高くて誰よりも映えますし、あのポニーテールのような鬘↑(何て言うんでしょうか?→弾き茶筅というらしいby「やさしい舞台の知識」)もピョンピョン跳ねて好き。そして素網(すあみ)に馬簾(ばれん)の付いた衣装、しごき帯と拵えもドストライクです。5月歌舞伎座の仁木弾正で感じたのですが、素網ってなんか色っぽいですねぇラブ足元の馬簾は豪快です。紫と金色の衣装がありましたが、私は金色の衣装が好きです。上品さと豪快さがあって。やっぱり石川五右衛門の海老蔵さんは麗しいキラキラ

 

京都から静岡へ下る東海道中は、「土山」、「関」、「亀山」、「庄野」、「四日市」、「桑名」、「宮」など東海道五十三次の宿が順番に出てきて面白かったです。

 

そして、小雀が五右衛門一座に加わってからは、「白波五人男」風のつらねが面白い笑そういえば五右衛門も白波夜左衛門ですね。白波は盗賊という意味だそうです。「問われて名乗るもおこがましいが」と五右衛門(海老蔵さん)、「続いて次にひけえしは」と足柄金蔵(前野朋哉さん)、「またその次に連なるは」と堅田の小雀、「さてどんじりにひけえしは」と三上の百助(山田純大さん)。

 

ポルトガルからの財宝を駿府城に運び込むところは奥女中の市川右若さんが大活躍でした。小梳神社の祭礼の準備と言って山車を運び入れますが、中には実はポルトガルからの金銀財宝が入っているので、ものすごく重いんです。それを「なんと、そうではないかいなぁ~」とわざと人足を止めさせる右若さん、笑いました爆  笑ついでにグッズや七月大歌舞伎、おーいお茶の宣伝までユーモアたっぷりに盛り込んでくれます音譜市川右若さんは、2月の「六本木歌舞伎」を観るまであまり存じなかったのですが、六本木歌舞伎の客席とのやり取りで心を掴まれました。そして今回も客席を引き込む芸達者ぶりに引き込まれました。

 

最後、石川五右衛門は捕らえられてしまいます。ここは、単純な勧善懲悪でなく、ちょっとハラハラドキドキする芝居展開が面白かったです。市川右團次さんは石川五右衛門の大仇としての貫禄と大きさがあります。ここで五右衛門は妖術を!白煙に巻いて消え失せます煙

 

終わり方も良かったです。五右衛門(海老蔵さん)と柳生十兵衛(中山優馬さん)の対決で終わるのですが、どちらも傷をつけずに終わるのは歌舞伎らしい。先日観た「御所五郎蔵」でも五郎蔵と星影土右衛門の対決がこれから!というところで幕が閉まりました。傷はつきませんが、最後は五右衛門が柳生宗矩から取り返した小判↓が民衆(客席)に撒かれるので、五右衛門が勝ったということがわかります。

 

 

そして最後は舞踊と圧巻のねぶた登場。媼、翁の面をつけた神楽舞はなんと中山優馬さんと前野朋哉さん。日本舞踊の方々の扇獅子を使った踊りも綺麗でした。その後の群舞は楽しかったです音譜博多座では市川猿弥さんが世話頭でしたが、今回は中村壱太郎さん。とても軽快でお上手。私は市川福太郎君福之助君、そして福丸君に注目しました。福之助君と福丸君はすぐわかったのですが、福太郎君はもうかなり身長が伸びて、大人の役者に混ざっています。目を凝らさないと分かりません。そして圧巻のねぶたに乗った海老蔵さんの登場キラキラ満員の客席にカーテンコールは4回!?それでも鳴りやまない拍手。

 

一つの作品の中に舞踊+お芝居+立廻り+舞踊といろいろな要素が、流れ良く入っています。お芝居にも世話物っぽい場面や重厚な義太夫で聞かせる時代物っぽい場面もあり、一日の興行の複数の狂言立てを観たような気分になりました。最後は成田屋の祝祭劇。ハレの気持ちで追い出してくれます。

 

藤間勘十郎さんと雷海(海老蔵さん)の舞台演出も素晴らしかったです。一秒の無駄もなくスピーディーに舞台転換していきます。舞台の幕には切込みが入っていて、そこから自由に役者さんが出たり入ったりするので展開がもたつかず早い!本舞台に幕が閉まり、舞台転換をしているときは客席通路で芝居が行われ、1秒たりとも隙を感じませんでした。展開が早いのに、お芝居として話の筋が通っているのでわかりやすいところは素晴らしいと思います。

 

 

2016年11月博多座の「石川五右衛門」では茶々(片岡孝太郎さん)とのロマンスやワンハン(市川右團次さん)との戦いなどに焦点が置かれていました。今回は柳生親子(市川右團次さん・中山優馬さん)との対決に焦点が置かれていて、五右衛門の新たな魅力に触れました。

 

石川五右衛門は無限な物語が可能なので、次は五右衛門のどんな一面を取り上げた作品が見られるのか楽しみです音譜個人的には、いつか福太郎君、福之助君、福丸君の三人芝居の場面が見たいなぁ照れ

 

さて、私の6月の観劇はこの「ABKAI」で最後です。先週国立劇場に「毛抜」と歌舞伎座に「御所五郎蔵」を観に行きました。いずれ感想を書きたいです。

 

なんといっても7月歌舞伎座が今からとっても楽しみハート3階席は昼の部も夜の部もすでに売切れで大人気ですね。写真入りチラシも更新されました。

 

http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/531

 

昼の部は市川斎入さんの襲名披露狂言「加賀鳶」、そして海老蔵さんと坂東巳之助さんの「連獅子」。夜の部は、勸玄君の初宙乗り!今から楽しみでなりませんラブラブ昼の部は2回、夜の部は3回チケット取ってあります。海老蔵さんは、冬はお休みとブログに書いていました。11月に千葉と神奈川で公演がありますが、東京で海老蔵さんを観られるのはこれが最後でしょうか?思う存分目に焼き付けたいと思います音譜

 

 

 

2016年11月博多座「石川五右衛門」のブログ→「博多座『石川五右衛門』観てきました」