通る夜 | 日々幸進(ひびこうしん)

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演劇、音楽、TVドラマ、映画、バラエティ、漫画、アニメ、特撮、他を色々自分の視点で面白しろ可笑しくね♪

昨日は、Hさんのお通夜だった。


親類縁者のみで行なわれるので大人数では来ないで欲しいといわれ、物件担当者の僕とリーダーだけで行く予定となっていた。

だが、17時からと聞いていたのに、19時から・・・と言われて現場リーダーは予定があるので喪服を着たまま帰った。正直ドン引きでもあるが、予定があるなら仕方がない。

現場のロッカーに入っていた私物が紙袋に3袋。

帽子やジャンバーなど。

重い。

それから現場でひとつお香典を・・・という事で貰う。

後、他の従業員が一人だけ行くからと聞き、とりあえず地図を片手に会館へ向かう。


田舎のような風景でありながらも、庶民的な情緒溢れる町並み。

ここから Hさんは毎日現場に通っていたんだと今更ながら思う。

少し迷ったが17:50ほどには着く。

すると現場の方が一人だけは来られていた。

小さな会館の部屋に祭壇(?)と呼ばれるものかどうか?

大きな棺桶と花の群れが。

その中央に Hさんの笑顔の写真。

まだ信じられない。


親族の兄妹さんとも少し話しをする。

「このたびは急な事で誠にご愁傷様です」

しゃっちょこばった型通りの言葉しか出てこない。

気の利かない男だ。

それから少しだけ雑談をする。

すると全く知らなかった Hさんの日常を少しだけ垣間見る。


野球が好きだったとは聞いていたが、その昔に阪急ブレーブスの監督がドラフト選手を探す為に Hさんの元に訪れたというエピソードは驚き。


そして最期に挨拶をして焼香をさせて頂く。

棺桶の前に座り香を散らし手を合わせる。

時間にして30秒ほど。

Hさんとの何気ない言葉が頭を回る。

いや、回らなかった。

まったくもっての 【無】 であった。


そうして帰ろうとすると親族の方から、

「顔を拝んでやって下さい」

と、言われる。

むげに断る事も出来ずに、窓を開けられる。

息が止まった。

あの時の笑顔の Hさんのまぶたが閉じられ、口には綿が詰め込まれている。

嘘のような現実。

やはり、

やはり死んでいるのだ。


これだけ葬式の準備をし、お通夜が行なわれているというのに、まだ仮想現実のような感覚で僕は居たのだ。


もう一度、僕は目を閉じ祈った。

そうして18:15には会館を後にした。


放心していた。

全く何と口に出していいのやら。

色々な感情が沸き起こり、言葉にならない。



今は、なにはともあれ、安らかに眠って下さい。

Hさん、

では・・・・