2024年9月10日午後7時 武蔵野市民文化会館 小ホール

ジョナタン・フルネル ピアノ・リサイタル

ジョナタン・フルネル(1993-)はフランス東部サルブール生まれ。

16歳でパリ国立音楽院入学後、2016年からブリュッセルのエリザベート王妃音楽院でL.ロルティとA.クユムジャンから指導を受けた。2021年、27歳で世界3大コンク-ルといわれるエリザベート王妃国際コンクールに優勝。

曲目

■ J.S.バッハ:イタリア協奏曲 BWV971
■ J.ブラームス:3つの間奏曲 Op.117
■ K.シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 Op.10
■ F.リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178/R.21 A179

アンコ-ル

■ J.S.バッハ(ジロティ編):前奏曲 ロ短調

 

 

 

■ J.S.バッハ:イタリア協奏曲 BWV971

ドイツ的な重々しいバッハではなくイタリアの協奏曲に影響を受け、バッハの曲にしては明朗快活で重苦しさはない。

ジョナタン・フルネルの演奏はラテン的で明るく明晰で生命感に溢れたバッハ。

 

■ J.ブラームス:3つの間奏曲 Op.117

ブラ-ムスの精神的な状態は良くない晩年1892年作。ジョナタン・フルネルの演奏は情感に溢れ悲しみが漂ったブラ-ムス、バッハとはまるっきり曲想が異なり悲観的。喜怒哀楽を上手く出せる情感豊かなピアニストともいえる。

 

■ K.シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 Op.10

1/18ミューザ川崎シンフォニーホールで同じ曲を聴いた印象とは全く異なりシマノフスキの曲の美点を最大限に発揮したドラマチックで抒情的な演奏。小ホールの近い席ではメリハリがつきすごく良い曲に聴こえた。ジョナタン・フルネルはミューザ川崎の大ホールではパワ-不足に感じたが小ホールの至近距離で大音量の演奏では印象は激変。

 

■ F.リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178/R.21 A179

1854年この曲が発表されて評価は二分、シュ-マンの妻で有名なピアニストのクララは「ただ目的もない騒音にすぎない。」曲をR・シュ-マンに献呈され迷惑そうだったが、R・ワーグナ-は「このソナタは、あらゆる概念を超えて美しい。偉大で、愛嬌があり、深く、高貴で―君のように崇高だ」と絶賛。音楽は主観の世界だが私はリストの美感が発揮された最大級の名曲に感じる。

ジョナタン・フルネルの演奏は武蔵野市民文化会館小ホールの至近席だと音量は大きく印象はすこぶる良い。完全な休止がなく絶えず音の響きが変化する演奏だった。曲想に応じて悪魔的な深刻な顔付きになると出てくる音も悪魔的になり、救済を受けたような表情になると曲想も救済を受けたように変化し顔の表情でころころ音楽が変化して面白かった。ジョナタン・フルネルは表情が豊かでまるで性格俳優みたいだった。

今年1/18に約2,000席の大きなミューザ川崎シンフォニーホールで聴いた印象と425席の武蔵野市民文化会館 小ホールではピアノの響きが全く違う。川崎シンフォニーホールの大きなホールだと残響音の影響は大きくピアノそのものの響きはスッキリきれいで明瞭な音。今回の武蔵野市民文化会館 小ホールは天井が低い分こもりぎみだがピアノに近い前から6列目右ではピアノのペダリングの響きは明瞭でピアノの音色は間接照明のように柔らかい色彩に聴こえた。使用ピアノはスタインウエイ。

 

観客はほぼ満席で男女高年齢の客が多い、会員だとチケットは2,000円と演奏の水準が高い割には安い。他の演奏会場では所沢ミュ-ズアークホールの演奏会が安めでメンバ-ズ倶楽部会員になっている。右バルコニ-2階で比較すると所沢ミュ-ズアークホールの音響はみなとみらいホールの音響に似ている。