2024年8月11日午後3時 ミュ-ザ川崎シンフォニ-ホ-ル

フェスタサマ-ミュ-ザ KAWASAKI 2024

藤岡艦長が誘う、「惑星」への旅 〜ホルスト生誕150年〜

昨年生誕150年だったラフマニノフのピアノ協奏曲第3番と、今年生誕150年のホルストの「惑星」を一挙に楽しむ!

 

管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 

指揮:藤岡幸夫(ふじおか さちお)(首席客演指揮者)

ゲスト・コンサ-トマスタ-:須山 暢大 (すやま のぶひろ)

ピアノ:務川慧悟(むかわ けいご)*

女声合唱:東京シティ・フィル・コーア**

曲目

・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 op. 30*

ピアノ アンコ-ル

・ラフマニノフ:楽興の時 第3番

・ホルスト:組曲『惑星』op. 32**

 

・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ピアノ:務川慧悟

1909年作曲、同年ニュ-ヨ-ク カ-ネギ-ホ-ル ピアノはラフマニノフで初演。

技巧としては難曲でラフマニノフと親交のあったホロヴィッツの録音が名盤とされていたが、ピアニストの技巧が進化してコンク-ルでは若手ピアニストが弾くようになる。有名な第2番同様に耽美的なメロディ-が繰り広げられる。

務川慧悟は2021年エリザベ-ト王妃国際音楽コンクール第3位、阪田知樹は第4位だった。

第1楽章のカデンツァがピアニストの腕の見せ所。

務川慧悟のピアノの響きは色彩感、透明感があり難しい技巧の箇所も無難に弾きこなしていた。

スタンディング・オベ-ションする務川慧悟ファンが散見。

昨年9月の阪田知樹/東京フィル/ラフマニノフ3番のピアノの方が打鍵は力強いがピアノの音色は務川慧悟の方が華麗で甲乙つけがたい。今後も良きライバルとして活躍を期待する。

ピアノ アンコ-ル

・ラフマニノフ:楽興の時 第3番

華麗な響きだったがラフマニノフの深い苦悩と精神性は表現していたがもう少し深さと奥行きが欲しい。

 

・ホルスト:組曲『惑星』op. 32

第1曲「火星、戦争をもたらす者」

第2曲「金星、平和をもたらす者」

第3曲「水星、翼のある使者」

第4曲「木星、快楽をもたらす者」

第5曲「土星、老いをもたらす者」

第6曲「天王星、魔術師」

第7曲「海王星、神秘主義者」

ホルストはこの作品を「この組曲は、諸惑星にまつわる占星術的な内容によって暗示を受けてはいますが、けっして標題音楽ではありません。また、同じ名前の神話の神とも関係がありません。」と解説。

神ではなく宇宙をテーマに音楽化した先駆的な曲で映画「スタ-・ウォ-ズ」の音楽担当作曲家J.ウイリアムスに多大な影響を与えている様に感じる。

第1曲「火星」

藤岡幸夫の指揮は最初から全力で華々しいサウンド、全曲を通じて1曲目の出来が最もよく感じた。藤岡幸夫の指揮を聴くのは2回目だがTV番組では聴いていた。高校生時代の師匠の小林研一郎と似ていてpの音量はオケの響きを良くするため大きめ、fの音量は絶えずMAXに近く金管の限界ぎりぎりで演奏。昨日のハーディングの都響指揮に比べ音量の差は小さく曲中の最大の聴かせどころはあいまいになる。

第4曲「木星」

一番有名な「木星」は第1曲「火星」同様に力演、第4主題はエルガ-の「威風堂々」に匹敵する名旋律で単独で演奏されることも多い名曲。ここでは弦楽セクションの優秀さが発揮され藤岡幸夫の指揮の真骨頂の朗々とした歌いまわしだった。

第7曲「海王星」

神秘的なサウンドの曲だがオケと消えゆく女声合唱の音程が少しずれて聴こえたのが惜しい。

 

前衛音楽とは違ってイギリスではフレデリック・ディ-リアス(1862-1934)と並んでホルスト(1874-1934)は敷居の低い心が温まる懐古的な曲をつくった作曲家に感じる。

 

東京シティ・フィルは都内のオケでは有名なオケの次に続く第2グル-プと思われるが、弦楽器セクションは都内有名オケより楽器の音質が少し劣る程度で聴き映えはした。「木星」の弦楽器合奏は特に印象に残る心をこめた良い演奏だった。木管、金管は昨日の都響よりは音の粒立ちがはっきりしない。ティンパニ-の音質もいまいち。金管は音程が不安定な箇所が多くきれいにハモらないことが多い。日本のオケの弱点の金管の音程の不安定さは東京シティ・フィルではより顕著になっていた。

座席は3C4列23番 A席。4階に相当するが東京芸術劇場の3階席より音が明瞭で音量も大きく聴こえる。オケでは高音は少し強めに聴こえるがピアノの響きは明瞭で聴き取りやすい。遠い場所のチェレスタの鍵盤からカタカタと演奏のノイズが大きく聴こえたのは意外。

 

チケットは完売。