「消極的な麻雀プロ」。

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先日発刊された協会のClubNPM会報に、

私の書いたコラムが掲載されたんですよね。

残しておかないとちょっともったいないので・・・

許可を得て、こちらでも全文を載せておきます。

 

このような協会選手たちによるコラムが毎号たくさん掲載されておりますので、

興味のある方は是非ClubNPMに入会して、読んでみて下さいね。

 

ご入会案内はこちらです→

http://www.clubnpm.com/join.htm

 

 

さてさて、最近は「麻雀界」という業界専門誌でもコラムを始めています。

https://www.fujisan.co.jp/product/1281683932/

 

こちらは協会で同期だった、高橋常行くんが編集長やってるんですよね。

16年前一緒に協会に入った仲間と、今こういう仕事をするなんて感慨深いものです。

 

書くお仕事もたまにはしっかりやらないといけませんね。

どうぞよろしくお願いします。

 

 

 

<消極的な麻雀プロ 須田良規>  ClubNPM会報より

 

 私は、日本プロ麻雀協会第1期後期の入会選手である。当時大学を出て雀荘のメンバーをやりながら、競技麻雀に興味を持って勉強会などに顔を出していた折に、新しい競技団体ができたということで現在の副代表鍛冶田良一選手にお誘いいただいたのがご縁の始まりであった。

 そして第4期にAリーグ所属となり、第5期の雀王を獲得した。13期にAリーグより降級、今期の16期までB1リーグを戦い、Aリーグへの復帰を果たした。

 その間特にタイトルに恵まれるようなことはなく、雀荘でのゲストプロ活動をしながら糊口を凌いでいる。

 雀荘で他の麻雀プロスタッフに、このような質問をされたことがある。

「この前お客さんに聞かれたんですけどね、『なんでプロなんかやってるの?高い登録料をわざわざ払って、金にならない麻雀プロをやる理由って何?』って言われて、なんて答えたらいいか分からなかったんですよ。どう言えばよかったんでしょうね――」

 なるほど世間一般からすれば、それが即収入の糧となるわけではない麻雀プロという肩書きが、奇異なものに映るのかもしれない。しかし、私ならこう答えるであろう。

「では、あなたはなぜ場代をわざわざ払って、麻雀をしているのですか?楽しくて、自分がやりたくてやってるんでしょう。それと同じです。仕事だからやっているのではありません。結果収入を得るために肩書きを利用することにはなっているかもしれないが、競技麻雀そのものが楽しいからやっているんです」

 接客業としては間違っているかもしれないが、伝わるのであれば概ねこういうことを述べたいと思う。

 たとえば今いる競技選手たち、縁者の莫大な遺産が転がり込むとか、宝くじに当たるとか、生きていく上で必要な費用に困らない状況にもしなったとして、それで競技麻雀をやめる人がいるだろうか。相手の思考を読み、手牌を想像し、山に残った牌を予想し、アガリ以外も含む自分の出来るベストの選択を追及すること、それが好きだから、他のどんな趣味よりも心を惹かれるから、少なくはない時間とお金を使って、麻雀プロでいるのである。そこには仲間もいるし、ライバルもいる。フリー雀荘では体感できない深い麻雀との関わりが確かにある。職業のために籍を置いているわけではないのである。

 ところで、タイトル獲得数や知名度で他の追随を許さない麻雀プロといえば、当協会の鈴木たろう選手、RMU代表の多井隆晴選手などがいる。麻雀という不確定要素の多いゲームで、彼らのように実績を重ねている選手は、本当に稀有である。では、我々選手が目指すべき領域は果たしてそのレベルなのだろうか。

 私は、あれほどに卓越した麻雀能力を自らのものにすることは、常人には不可能ではないかと思う。もちろん、自分が常にツイていて、タイトルを大量に獲得するようなことがあれば彼らと肩を並べたような気にはなるかもしれない。また、たまたま1回の勝負で彼らに勝てば、自分が目標としていた選手を超えたような気になるかもしれない。

 もちろんタイトル戦やリーグ戦は、我々の主戦場だ。そこで結果を残すことを選手たちは最優先すべきなのはもちろんだ。しかし、麻雀の結果は本来水物なのである。最善の選択が良い方に転ぶとは限らないし、確率の優位が必ずしも結果に直結するわけではないことを、誰もが知っている。

 麻雀プロが麻雀プロであることは、麻雀に対する思考をやめないこと、研究を怠らないことである。もしも鈴木たろう選手、多井隆晴選手などに勝った、と言えるようなことがあるならば、それは彼らより多くの情報を処理し、深く思考を巡らせ、的確な判断を幾多も繰り返すことができるようになってやっとであろう。

 私自身は、正直なところそう多くのタイトル戦に出場しているわけではない。家庭持ちであるし、余暇のすべてを競技麻雀に費やすことができる状況ではない。

「幾つものタイトルを取って、メディアにも出て、ファンも数多くいる選手じゃないと、麻雀プロとは言えないんじゃないの」

 このように考える一般の方もいるとは思う。麻雀プロ業界は昨今ネット配信の普及などのおかげで、一昔前よりは興行的に成功しているといっていい。確かにファンがあってこそ、麻雀プロにも未来が開かれている。

 しかし、それでも私は、誰かに勝つことやタイトルを取って目立つこと、有名になることが第一目標ではない。消極的なプロ、だと揶揄されることがあるかもしれない。

 たとえ今より囲碁や将棋など他のゲームがブームになって、競技麻雀が廃れても、メディアで誰も見向きもしなくなっても、自分が競技麻雀をやめることはないと思う。同好の士と討論を交わしたり、人の対局を見てその選択の妙に感心したり、新たな戦術の登場に心を揺さぶられたり、そういった競技麻雀に関する全てのことが、自分が表舞台に出て勝つことよりも好きなのである。

 13期にAリーグ降級目前だったとき、自分の対局したリーグ戦の牌譜を全て見返したことがある。自分の麻雀で拙い選択はないか、誤った判断はないかを確認したかったのである。そして、自分が自分のできる精一杯の麻雀をして、しっかりと立ち向かって負けたのを見て、満足した。満足して、そのまま降級した。あのとき後輩の麻雀プロが、

「須田さんこのまま協会辞めたりしないですよね?」

と心配して聞いてきた。

「辞めないよ、絶対に辞めない。自分が競技麻雀に真剣に向き合っているうちは、絶対に辞めない」

 3年かけて、その気持ちは報われることになった。

 結果はまさに水物だ。自分がB1リーグの誰よりも強かった、とはもちろん思わない。ただ一所懸命麻雀に向き合ったとは、胸を張って言える。

 野心のない、ともすれば消極的と思われかねない麻雀プロの在り方に、異論のある人もいるかもしれない。それでも、競技麻雀の楽しさを理解し、共感してくれるファンの方がいるのなら、私はその人たちと一緒にこれからも業界に関わっていこうと思う。私たち麻雀プロとは、言いかえれば誰よりも熱心な、競技麻雀の大ファンなのである。