何といっても谷崎潤一郎の世界観かなと。「卍 リバース」と比べてかなり愛憎の深い感じと男女の1対1の駆け引き部分が切迫感強めで文学的で迫真な部分が多かったかなと感じました。桝田幸希演じるなおみと林裕太演じるゆずるに尽きるかもしれません。今回の映画もかなり広めの一軒家であり、間取りもいい感じでゆったりしていて暮らしやすそうで理想的だなと思いました。

 

教師のなおみが道端に座り込んでいるゆずるを放っておくことができずに広い家に引っ越して一緒に暮らし始めるという事も含めて、一見昔のホームコメディになりそうな展開もしっかりと信ぴょう性をもって描いてて納得できるものでした。なおみがゆずるを見つける場面も、映画の最初と最後に出てくるところにかなりの意味の深さと重要度があるのではと思いました。あそこが鍵になってるなと。

 

奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」という事も含め、奔放な美青年に女性教師が惑わ
されるということも含めてかなり現代風にアレンジされててグッドでした。しっかりと学校には行ってはいないが、なおみが家庭教師となって勉強を教えるということも含めて、男の甘えん坊な部分は過剰すぎるかなと思うところもありました。ですが、やはりそうやって束縛しながら、勉強を教える以上の男女の関係に発展していくといったところも含めて納得できるものでした。

 

ヒロイン自身がなおみの名前にこだわっているというところもかなり興味深く思えました。なおみ役の桝田幸希が全身全霊ですべてをさらけ出しながら演じているのがかなり強烈に思えました。林裕太もゆずる役を自分のものとして、一見甘えてるだけの男がだんだん自我に目覚めていくという心理部分もうまく表現しててさすがだなと。事実婚を認めるまでに発展した関係になって一安心で絶対関係まで到達したのかと思いきや、ゆずるが演劇を初めて変化していく態度や行動の変化と成長部分などもかなり観ててゾクゾクさせられるものでした。

 

演劇関係の知人の若い女性を家に連れてくるようになって変化していく部分がかなりリアルかつ絶妙に描かれててグッドでした。休みなのに仕事に行くふりをしてゆずるを驚かせようとしたなおみがゆずると若い女性との情事を目撃してしまい、写真までとってしまうといった部分もかなりありえそうと思いつつもスリリングで驚異的なものでした。結局、約束を守らなかったがためにゆずるが家を出ていく羽目になったにもかかわらず、何かにかこつけて家に来るゆずるの心理部分もかなり納得できるものでした。

 

あらゆる意味で男女逆転した「痴人の愛」を巧妙に映像で見せて意欲的愛憎映画の傑作と実感です。 

 

865点 束縛できない関係性の行く先が重要ポイント 8.6点