今から15~20年ぐらい前におきましては、「天国の本屋?恋火」や、「深呼吸の必要」や、「欲望」や、「地下鉄(メトロ)に乗って」や、「欲望」や、「真夏のオリオン」などの話題作を凄い勢いで次々と作品を発表してた時の篠原哲雄監督はかなりの凄いものを感じてました。ですが、篠原哲雄監督作品の原点は何といっても「月とキャベツ」だと思ってますので、今回の映画では、あのときのピュアさをいっぱい感じられてよかったです。

 

小説「下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん」などで知られる嶽本野ばらではありますが、映画「下妻物語」が公開されてからもう20年が経ったという事実部分は、やはり時代の流れを感じさせるだけでなく、嶽本野ばらの活動期間の長さも物語ってるなと思わせるものでした。何といっても主役二人の窪塚愛流と蒔田彩珠のキャスティングが絶妙だと思いました。窪塚愛流演じる国木田雪夫と蒔田彩珠演じる山岸由茉のラブストーリーですが、ヒロインが難病で余命一週間といったシチュエーションであるという部分を差し置いても恋愛映画としてよくできた映画ではないかと感じました。

 

こういったヒロインの余命一週間の状況を知ったら、泣き叫んだり暴れたりすような自暴自棄的な描き方もできると思うのですが
、あえてこうした幸せでのんびりした感じで描いてあるところがかなり斬新で興味深かったです。山岸由茉の父親役が山崎まさよしだったため、なぜ??と思いつつも、やはり「月とキャベツ」の原点回帰を考えましたら、ある意味至極当然な流れだったなと思いました。

 

吉田羊演じる母親も、溺愛までいかないぐらいの愛情ぶりと、自身もロリータファッションをしてしまうほどのロリータファッション好きが娘に影響しているという部分などもうまく表現してて良かったです。窪塚愛流が色々な事が一度に起きて動揺しつつも、すべてを受け入れて愛情で山岸由茉を包み込む国木田雪夫を見事に表現していたなと思いました。やはりああいった雰囲気の出し方や感情表現ぶりは、まさに父親であります窪塚洋介がまるで乗り移ったかのようでした。

 

今までかなりシリアスな役が多かった蒔田彩珠がここまで体型や雰囲気もガラッと変えて、死を受け入れながらものんびりと自分の世界で生きているヒロインを見事に表現して演じていて、ある意味まさに蒔田彩珠のプロ根性をまざまざと感じました。「朝が来る」とまるで違ったようなほんわかぶりがかなり入り込めるものでした。よくぞここまで変われたなと思わせるものでした。

 

仲のいいカップルであったくせに国木田雪夫は山岸由茉から突然余命があと1週間しかないことを告げられますが、運命をすでに受け止めてるがゆえに、自分も周りも好きな事して、好きなものを食べて残りの日数を過ごしたいという気持ちが全面に出ててかなり好感が持てました。残された人生を精いっぱい生きようと決めている山岸由茉が憧れていたファッションに挑戦したり、大好きなカレーを食べに行ったりついに、ロリータファッションのブランド・イノセントワールドの大阪本店を訪れる場面もかなり感動的でよかったです。

 

あらゆる意味でロリータファッション映画と難病映画を超越するぐらいの感動若者映画の傑作映画と実感です。

 

890点 最期の一週間を平和に暮らすことの意義ポイント 8.9点