1981年のアイルランドの田舎町が舞台であり、かなり独特な雰囲気を感じました。よくよく考えましたら、この映画のヒロインは年齢的にも自身と同じくらいの年齢かもと思い、そういった部分かなり衝撃的でした。この映画を観ながら自然と自身も父や母の田舎の実家に夏の間に行ったことをとても思い出してしまいました。そうやって思えば、国は違いますが同じ時代があるがゆえの感じ方もできたかなと。

 

英語での原題がクワイエットガールということもあり、やはり内気な子の少女の物語なのだなと。大家族の中でひとり静かに暮らす寡黙なキャサリン・クリンチ演じる少女コットがヒロインであり、夏休みを親戚夫婦でありますキンセラ家の農場で過ごすことになるという展開もよくわかりましたが、どのくらいの期間過ごすのかがとても気になってました。父親が車でキンセラ家に送り届ける時の様子も印象でした。

 

ギャンブルでうまくいってない父親の焦燥感もダイレクトに伝わってきました。相手先に着いてからも、コットの父親が食べ残した食事にタバコを押し付けるところはかなりショックでした。そういったこともあり、よりいっそうコットが愛おしく思えるところもありました。さらにまさかの持ってきたコットの洋服などの荷物を持ち帰ってしまうハプニングも、後半に判明する事実部分につながっていく事もあり、シナリオもうまく書けてたのではと感じました。

 

やはり何と言ってもキャサリン・クリンチのここまでのコットそのものになりきったアプローチにつきるのかも知れません。はじめのうちは慣れない生活に戸惑っていたコットが行動や心理で次第に変化していくところもじっくりと巧妙に描かれていて、かなりダイレクトに心に響いてきました。酪農の場面や、井戸のところも含めて、ひとつひとつの場面をじっくり見せていてかなり好感でした。

 

キャリー・クロウリー演じるアイリン・キンセラとアンドリュー・ベネット演じるショーン・キンセラの夫妻の愛情をたっぷりとコットは受ける事によって、彼女がかなり閉じこもった心の殻から抜け出していく様子もかなり見入ってしまいました。夫妻への親しみを覚えることによってコットはかなり変化していき、コットがこれまで経験したことのなかった生きる喜びを実感していく過程は本当に見事でした。夫妻の間にいた亡くなった男の子エピソードの部分も色々考えさせられました。

 

立ち去るキンセラ夫妻の車を追っかけていくコットの姿が全てを物語ってたのかもしれません。あらゆる意味でコットの気持ちがダイレクトに伝わってきたひと夏の経験を描いた貴重な少女佳作感動映画と実感です。

 

895点 コットの成長ぶりと心境の変化こそが何よりも大切ポイント 8.9点