能登半島地震では既に多くの死傷者が出ている中、行方不明者も多数存在するなど、いまだ被害の全容が見えない極めて深刻な状況となっています。能登半島は広い面積に山間部が多く、その中に集落が点在しており、行政機関自身も被災しているため状況把握が遅れています。国を挙げての支援が求められており、私も微力ながら年明けより首から募金箱を下げて活動しています。ご理解いただけますと幸いです。
 現在は命に直結する救援に注力する段階ですが、その後は生活インフラの再建が必要になります。建物、道路、上下水道やガス管も造り直さなければなりません。集落が点在しているため、数多くの復旧作業が予測されます。液状化現象による被害も広範囲で多発しており、資材・重機そして人員が今後間違いなく必要となります。このような中、資材や重機や人員がどこにあるのかと言うと、現在は大阪・夢洲の万博会場に集まっています。リソースは有限であり、優先順位を考えれば、被災者の方々の生活再建にこれらを割くべきであることは言及するまでもありません。
 なお、大阪府の吉村知事は今回の震災を受けて「万博と復興が二者択一ではない」と述べたそうですが、限りある資材や重機、技術者の労働力という観点では、「万博と復興は二者択一である」ことは明白です。具体的な事例として、大阪市の万博・IRの工事の進捗計画表が挙げられます。計画では、2023年から24年にかけて、今まさに夢洲の北側のIR計画エリアにおいて、上下水道やガス管の工事をしている最中となっています。その他、夢洲全体に及ぶインフラ工事も進行中です。明らかに復興で求められている工事と重なっています。
 さらに維新の馬場代表は、万博が「北陸の皆さんにも、新たな夢や希望を持ってもらえるイベントになるのでは」と述べたそうですが、被災地の方々の1番の希望は【震災前の日常を取り戻すこと】なのではないでしょうか。万博開催の直接経費は国費だけでも1647億円発生しています。その他、道路や鉄道を含むインフラ整備事業費などの間接経費を含めると10兆円を超えます。一部でも良いので、寒空の下で救助や支援を待つ被災者の方々に回せたらと願わずにはいられません。
 維新の目玉政策である「大阪カジノ・IR計画」を実現するために、海外パビリオンが少なくても、被災地の復興に影響があっても、万博は無理矢理にでも予定通り開催する…。大阪の行政を担う人々が自己中心的な考えで行動をすると、復興を妨げることに繋がりかねません。現在「万博も復興も」と話している方は、①土木建設リソースは有限だということ、②現在全国の開発が「万博シフト」でリソース不足となっていること、以上二点の現実を直視すべきです。そして万博は早急に延期や縮小等の対応を決定し、大阪が抱え込んでいるリソースを被災地に送る準備を始めるべきです。