+トーチカ〜瑠璃シーン⑥前編13 | みずのこえ こころとからだのほぐし

みずのこえ こころとからだのほぐし

こころとからだのほぐし、は
あなたのかたくなった部分をほどきます。


テーマ:
小説です。

人に言えない嗜好や秘密、官能
人間はそれをどう思うか
自分でどう対処していくのか。

みんな違って、みんないい。
人と違う自分を異常と責めないで。

瑠璃シーン⑥のキャッチコピーは、
俺とお前の攻防戦。
(チカ曰く、なんだそうな。)

じわじわくる、サスペンス劇場。

半年以上続いたトーチカ~神楽シーン⑥が終わり、
トーチカ~瑠璃シーン⑥始まりました。
トップモデルとなった瑠璃の真骨頂とも言える、瑠璃シーン⑥となります。

瑠璃の魅力、瑠璃チカの結婚式、そして妊娠までを書きます。

神楽シーン⑥が男眼線のエロならば、
瑠璃シーン⑥は女眼線のエロとなるでしょう。

神楽シーン⑥での、瑠璃シーン側では、何が起こっていたのか?
真実は、こんなだったという意外性満載!


トーチカ~瑠璃シーン⑥前編12
ファッション雑誌の撮影でパリを訪れる。
そこでパリコレも行っているブランドから、専属モデルとしてオファーされる。
動揺してホテルの部屋で吐く瑠璃。
氣持ちも盛り上がり、撮影もこなして、自分が世界に行こうとしなくても、世界が自分に向かってやってくると確信した。
また、新たに自信がつく。

↑やはり、エロシーン少なかったから一発でupできましたわ。

しかし、新展開で、前回今回と
わたしは大好きです!



わたしが書く小説というのは映像で見えてくるのを文章化しているのですが、この文章で女性の(もちろん男性もね)オ ーガズムのお手伝いにもなればいいな、とも思っています。

トーチカ神楽シーン①
東三河に住む、未来を知っている少女
神楽の眼線
神楽シーン⑥で、東三河から神奈川に嫁入りしました。

トーチカ~瑠璃シーン①
神奈川に住む、ティーンズモデルの美少女
だった瑠璃の眼線
今は世界に立つスーパーモデル

神楽シーン瑠璃シーンの同時期を交互に書いていきます。
どちらにも童顔、永遠の少年の二花(つぐはる)が絡んできます。

トーチカのこれまでの話のリンクはこちらから



トーチカ以前の物語はこちら↓

来る潮帰る波
神楽の母が亡くなったことを、その兄(神楽の父になった人)が回顧する話

実になる花~追伸
モデル瑠璃の母、女優実花と、父、アーティスト椎也の物語。

ロンドンの街並みのざわつき、鳥のさえずりとか聴こえてくる感覚。
BGMにミニーリパートン"Lovin'g you"。

"カルメン組曲"。
前回、チカが語ってくれました。

つるの剛士"You're the only shinin' star"、原曲のミポリンもいいの。 

そして、華原朋美"I'm proud"
これは少し先のお話。
人は人の真実の些細な言葉で癒やしが起こり、突然変わってしまうものなのだと、目撃しました。
話を書いていて、打ち震えた。
わたしの誇り。誰の誇り?


さて、パリコレの舞台に立てる機会を得た瑠璃は、それを選ぶのでしょうか?




トーチカ~瑠璃シーン⑥前編13

レストランに着いて、席に案内される。

「Salut! 」

先に着いていた、あのカメラマンが瑠璃に手を揚げる。

「Salut! 」  

瑠璃も微笑みながら返す。
先程の記者と、もうひとり、シックなワンピースの洒落て凛としている、落ち着いた年の女性がいた。 
ギャルソンが椅子を引いて、席に座らせてくれる。

「This is the chief editor. 」

記者が隣りの女性を紹介する。
この女性が世界的なファッション雑誌のフランス版の編集長なのだ。
ファッションの最先端を知る人だ。
ファッション界の重鎮とも言える。

面白そうに瑠璃とチカは、彼女と英語で挨拶を交わす。

「We checked pictures by the photography, and they are very wonderful! You looked very lively. 」

今日の撮影分の瑠璃が活き活きとして見えたならば、それは計算以上に良い出来映えなのだ。

語りながらも、アミューズから始まり、コースは進んでいく。
少食の瑠璃にはコースは辛い。
食べられないならムリして食べる事はないし、先を見越して残してやめなさい。
チカは瑠璃に、そう教えていた。
忠実に守り、半分は残していった。

隣りのチカは満足そうにソムリエが選んだワインを飲みながら三ツ星フレンチを味合っていたが、瑠璃には細かい味の違いは判らない。

とにかく、口に入れた時の重みではなく軽い、普通の料理より素材の味がよくして美味しい、とは判る。

「Are you not palatable?」

残しているので、味が不満かと記者に問われたが、瑠璃は否定する。

「It's very delicious. But I'm a light eater.」

残念そうに少食だと伝える。

「She is not eaten at the time of the photography in particular. 」

チカは、瑠璃が撮影時には特に食べられなくなると補足した。
先方からすれば、え?じゃあ、こちらのリクエストに対して、三ツ星フレンチに拘ったのって誰?となるだろう。

この人よ、この人。
瑠璃は微笑みながら、内心はチカを指差していた。
チカは涼しい顔で、上品に食べ続けている。

瑠璃が美味しいと完食したのは、フォアグラのテリーヌだ。
フランスパンと食すのが絶品だった。

鶏モモ肉のコンフィも美味しかったが腹と相談して三分の二を納めた。

チーズからデザートもほんの少しのみ、口をつけた。

カメラマンが何かを言い、それを記者が訳してきた。

「He said that you should be based in Paris. I agree to the opinion, too. 」

瑠璃は微笑む。
カメラマンだけでなく、記者にも同意された事が純粋に嬉しい。

「You caused a revolution in fashion business. 」

編集長が、さらに口を挟む。
この重鎮がそう言ってくれるとは。
瑠璃は内心、ドキリとした。

「You have charms to let the world change completely. 」

そこまでの存在だとは、自分で考えていなかった。
隣りでチカは満足げに笑んでいる。

「Ruri, You should come to Paris. 」

編集長に、そう断言された。
瑠璃は満面の笑みを見せる。
さらに自信が、腹の底から漲ってくる。

「Thank you so nuch. 」

しかし、それだけの礼に留めた。

「Merci pour le repas délicieux. 」

帰りに瑠璃がフランス語で食事の礼を言いたいから教えて欲しいとせがんだら、チカは先方を見て、そう口にしていた。
どうせ数回口にしただけでは、瑠璃は覚えられないと踏んだのだろう。
瑠璃は微笑みながら、密かにヒールでチカの革靴を踏んだ。

「Merci beaucoup.」

なので、知っている言葉で礼を言った。
カメラマンは瑠璃の手を取り、手の甲にくちづける。
瑠璃は艶やかに微笑んでカメラマンを見た。

「Je veux vous servir. 」

瑠璃の耳元で、彼はそう言った。
何を言われたのか判らなかったので、微笑むのはやめて、つんっとした。
そのまま、呼んでくれたタクシーに乗った。

「あなたが私の足を踏むからですよ。」

チカは、くすっと笑った。

「え?」

何の事を言い出したのか判らず、瑠璃は隣りのチカをまじまじと見つめた。

「あなたが女王さまと確信したんですね、あのカメラマンは。」

「そう、言ったの?さっき。」

チカは聞き取れていたのか、あの小声を。
瑠璃は赤くなった。

「誤解されたわ。」

「男は、そういう女性の仕草を、よく観察しているんですよ。大いに誤解されていなさい。」

そう、とられているのか、ヨーロッパの男たちに。

「イヤだわ。」

「いいんですよ。あなたが超ドMと思われるより、安全です。このドMちゃんは、押し倒されたら男に身を任せますから。」

そういうものか。
瑠璃は複雑な氣持ちになった。

短い距離なので、あっという間にホテルに着いた。
料金は先に支払い済みのようだったが、チカはチップを運転手に渡していた。
短い距離だからこそ、ありがとうの氣持ちだろう。

すぐにホテルの部屋に向かう。

「フランス語なんて全く知らないのに、あなたはニュアンスで判るのか、まさにエスパーなのか。適当な思い切りのいい性格が効を成しているのか。」

あそこで、つんっとした表情をしてよかったのだ。
微笑んでいたら、了承したと思われただろう。

「適当だから、でしょ?」

「間違いないな、それは。」

チカはくすくすと笑って、瑠璃を後ろから抱きしめた。

「愛してるよ。」

その黒髪に顔を埋める。

「愛してる、僕の女王さま。僕は一生、あなたに仕えるんだ。」

「そうね。チカは生涯、あたしをマネージメントしてね。」

「勿論。」

瑠璃の手の甲を舐 めている。
カメラマンにキスをされたからだ。

「瑠璃、君はここまで来たんだ。さあ、次はどうする?」

「どうって。慢心したら、蹴落とされるわよ。」

まだ、実績が少ない。
しかも、まだ世界的に認知されたとは言えない。
ここでちやほやされて満足して終わりでは、想い出づくりにもならない。

「世界の人が、あたしに注目するの。そこまでは、確実にいくわ。」

瑠璃は艶やかに笑んで、身体中をキスされていく。

「僕は何処までもお伴します。」

「当たり前よ。」

チカが隣りにいないのならば、何の甲斐もない。
いやむしろ、チカがいないとムリだ。
チカがいつも煽ってくれないと、瑠璃はカメラの前で集中出来ない。

「さあて、女王さま。本日はとても最高の舞台でした。ご褒美を差し上げますよ。何処を縛りましょうか?」

ドレスを脱がしながら、チカは瑠璃の身体中に舌を這 わす。

「……全身。」

「言うと思いました。このドMは。」

チカは長い舌を出しながら、ニヤついている。

「リボン、一巻持ってきて、良かったですよ。」  

その言葉と、チカの舌の動きに、瑠璃は震える。

「僕は緊 縛すらも、特技のひとつになろうとしてますよ。縄では無いですけどね。」

リボンを持ち、チロチロと 舌先を動かし、乳 首を舐 めている。

先日、レクチャー動画を見ながら、よし、とチカは言っていた。
一回見ただけで、あの難しい縛り方を憶えるだなんて、瑠璃には到底信じられないが。

「あ……ああっ、」

瑠璃は、ぶるぶると小刻みに震えた。
内股が生温くなっていく。

「あーあ。想像しただけで漏 らしちゃったんですか?」

瑠璃の手首をまとめて摑んでいるチカは、嬉しそうに、瑠璃の脚から先を眺めていた。
後ろ手にして手首をリボンで 縛っていく。

「とんでもなく、いや らしい人だな。この女王さまには、格別なお仕置きが必要だ。」

「あ……お仕置き、して、ください。瑠璃になんでも、してください。」

涙が出てくる、嬉しくて。
とうとう、全身を 縛られるのだ。

その瑠璃の悦びの様子を見て、チカはガリっと 乳 首を 噛んだ。

「あっ!」

仰け反る瑠璃に、チカは嬉しそうに眼を薄くしている。

「痛い事、氣持ちいい?」

「あ、は、はい。氣持ち、いいの……。」

「変態 女。」

縛りながらも、チカはパーンと瑠璃の 尻を 叩いた。

「ああっ!あー ん つっ……、」

「また、尻を 叩かれ、こんなにヒク ヒクして ぐち ゃ ぐち ゃにして。お前は 痛くされて 感じるのか?」

チカの耳元での低い声が最高だ。
どんどんと溢 れてくるし、子宮が熱くなり、きゅんきゅんと疼 く。
もう、訳が判らなくなる。
ただ、判るのは、もっと、いじめて、という、はっきりとした瑠璃の欲望だ。

「痛いの……感じるの。瑠璃、ヘンタイなんです。お仕置き、もっと、お願いします。登規さんの好みに、瑠璃を躾けてください。」

声も身体も震える。
嬉しくて、震える。

「痛いのが いいのか。変態だな、お前は。ああ、俺の可愛い変態 女。もっと、痛くしてやるよ。」

その罵りにも愛の深さを感じられ、胸がきゅんっと鳴る。
本氣での罵りは不快でしかない。
二花に罵られた時は、悲しくて仕方なかったのだ。
二花は、嫉妬から本氣で瑠璃を蔑んでいたから。

チカには信頼がある。
瑠璃の嫌がる事は絶対にしない。
痛すぎる事はしない。
無理をしない。
その安心感がある。

全身をリボンで縛られて 尻を パシンと叩かれ、美しい瑠璃は泣きながら微笑んでいた。

お仕置き、もっと、ください。

もっと、瑠璃をいじめてください。

もっと、いや らしくなるよう、調 教してください。


…………………………………………………………………………
 


「瑠璃たん。」

チカは瑠璃の髪をかき上げ、うなじに顔を置く。

「はふん。瑠璃の汗ばんだ匂い、堪らにゃい。」

「チカこそ。汗臭いの。これが大好き。」

瑠璃はチカのうなじから耳の後ろの匂いを、くんくんと嗅いでいた。
街中を歩きながら、雑貨や化粧品を見て歩いている。

「パリの方が暑いわね。湿気がないけど。」

「まあ、世界地図を見れば、気温差は一目瞭然だよね。」

また貶された。

「瑠璃たんは、多分、EnglandとFranceの位置関係も判ってないと思う。」

「そんな訳ないじゃないの。」

なんとなくは、判っている。
その近辺の国の位置関係は判らないが。

「いいにょ。瑠璃たんは、知らにゃいでも大丈夫にゃー。」

よく判らないアニメキャラが出てきた。

「僕が世界を案内してあげるにょ。」

「そうよ。新婚旅行は、どうなったの?」

「秘密にゃ。」

なんでも秘密にされてしまう。
自分の結婚式の概要も知らなければ、新婚旅行の行き先すら知らない。
そんな事ってあるかしら?
瑠璃は膨れながらも、可笑しくなった。

「あたしの人生、チカにお任せするわ。」

「そうにゃのにゃ。瑠璃るりの人生は、僕が請け負うにょ。瑠璃は僕の言いなりにゃのにゃ。」

この愉快なアニメキャラに任せておけば、楽しい日々が送れるのだ。

瑠璃のリクエストで凱旋門に向かう為に歩いていく。
歩き回るので、今日はクロップドパンツにスニーカーとしたのだ。

「お尻、堪らないにゃー。」

チカは瑠璃の後ろを歩きたがった。
パンツの時の、ぷりぷりとした ヒップが大好きだという。

「ストリートスチールの時、僕は半ぼ っきぼき状態だったにゃ。」

「良かったわね、半、で。」

てなければ、捕まっていたかもしれない。

「どうしてにゃ?僕の愛する人の綺麗なお尻 のカタチ見て 反応するのは当然にゃ。」

「うん、でも、外ではやめて。」

「男の生理現象に、やめてもよいもないにゃ。」

とはいえ、理性でコントロールはするだろう。

「僕が常に考えてる世の中の最大の苦労は、男性の産婦人科医の苦悩だにゃ。可愛い娘の内診で、時に勝手に反応しての生理現象あるにゃろうから、大変だろうにゃ。応援してるにょ。でも、瑠璃っちを診るにょは、女医さんしかダメにゃよ。」

「チカは、お医者さんにはなろうとは思わなかったの?」

「割りと真剣に、そっちの道も悩んだにゃ。」

実は私生活が変態な有能な医者は、チカの好きそうなシチュエーションだからだ。

「しゅ、手術とか、考えただけで興奮するにょ。だから、やめたにゃー。」

興奮するんだ。
手術の最中に、はあ はあしているチカの手術着姿を想像して、瑠璃は微笑んだ。

ロンドンの上流階級の家で幼少期を過ごし、人を使う事に慣れた頭脳の優れた男が、何を好んで芸能マネージャーの道を選んだか。
それも天才ならではの、人生の組み立て方だろう。
自分がマネージメントする人物を上げるのだ。
その、人生ゲームを楽しんでいる。

「人生ゲーム、面白いにょ。有り得ない事で負債とか。最高の遊びにゃ。」

「あたし、遊んだ事ない。」

あの、人氣のボードゲームだ。

「日本に帰ったら、遊ぼうにゃ。」

「そうね。」

チカとなら、かるた取りも面白そうだ。

「それにゃら、百人一首にゃ。」

どちらも読み手がいる。

「にゃら、神経衰弱するにょ。」

「そうね。楽しそう。」

話があやとりにまで発展した処で、凱旋門に着いた。
凱旋門の屋上までは、一回地下に入り、厳しい螺旋階段を延々と登っていく。
直線距離で五十メートルの高さだ。
これをチカから宣告されていたので、覚悟を持って来たのだ。

「僕も登った事にゃいにょ。Mumの心臓が持たなかったし、今みたいにエレベーターもなかったにょ。」

「じゃあ、楽しみね。」

チカはいたずらっ子のような眼をして瑠璃を、じっと見ていた。
何をするのかと思いきや、チカは瑠璃を置いて、階段を駆けて上がって行った。

「ちょっとっ!」

いつもはしっかりエスコートしてくれるチカに置いていかれた。
瑠璃は唖然として、階段を見上げた。
チカは笑いながら、子どものように駆けている。
周囲の観光客が、何事かとチカを見ている。

「もうっ!」

そんなチカが可笑しくなってきて、瑠璃も階段を登り、追っていく。
最初は瑠璃も駆け足だったが、すぐにゆっくりとなった。
チカに毎晩運動させられているが、最近走っていなかったし、タクシーの移動も多かった。
運動不足を痛感していた。

それにしても、チカの体力は凄まじい。
首にかけたカメラを手にしつつ、こんな急な螺旋階段を駆けていけるのだ。
普段、筋トレもしているのを見ないのに。

「瑠璃ちゃーん!」

チカに上から呼ばれた。

「おいでー!待ってるよ!」

可愛い声が響いて聴こえてきた。
流石に人が聞いていると、にゃにょ言葉は使わないのかと、瑠璃は笑った。
あと少し、頑張ろう。

少し先のホールでチカは、にこやかに瑠璃を待っていた。
瑠璃がそこに行くと、カメラを構えたチカはシャッターを切ってから、嬉しそうに瑠璃を抱きしめる。

「久し振りだね!」

「置いてったくせに。」

だけど、チカはこうして待っていてくれた。
それが、嬉しい。
たった数分なのに、寂しかったのだ、チカが隣りにいないと。
キスを交わして、手と手をしっかり恋人繋ぎをして、チカのエスコートで階段を登っていく。

「もう、置いてかないでね。」

「勿論だよ。」

この、いたずらっ子め。
この先も、どんないたずらを仕掛けるのか。

「チカ、スゴいわね。体力あるのね。」

「運動してるからね、毎日。」

「あたしだって。でも、チカも別に普段走ってないし、筋トレもしてないのに、よく、この階段を駆け上がれるわね。」

そして、相変わらず逞しい身体つきなのだ。

「俺のお前との運動は凄まじいんだぞ。脚も鍛えられるぞ。」

「そうなの?」

とはいえ、密かにチカは筋トレをしているのではないかと瑠璃は踏んでいる。
チカの方が早起きなので、瑠璃が寝ている間に走ってきていても不思議ではない。

「バスケ部だったのよね?」

「高校の時な。高校は部活やらずにバイトと女の子と遊ぶ事に専念しようとしてたのに、入部させられたんだよ。」

身長の高い人物は、バスケやバレーにスカウトされやすいのだ。

「日本に来てから、中学三年までフットボールやってたんだけどさ。……ずっと、フットボールやりたかったの、ロンドンでもホントは。」

しかしながら、母親と旅をしていたり、学校に通わないで家庭教師に習う生活では、集団運動のサッカーも出来なかったのだろう。

「サッカーとバスケ、どっちが好き?」

「―」

チカは、すぐには答えなかった。
聞いてはいけない質問だったのか、瑠璃は戸惑った。

「バスケ、て言っちゃうと、なんだか負けなような氣がして。」

という事は、イヤイヤやってみたら、バスケが楽しかったんだ。
チカは時折、ひねくれた物の言い方をする。
それはきっと、恥ずかしいからなのだろう。

「好きだったな、アリウープ。」

「アリウープ?」

バスケ試合は見るのが好きだが、その技の名前は知らなかった。

「ダンクの種類だけど。ジャンプしながら受け取ってシュートするんだ。決まるのが嬉しくて、かなり練習したな。」

「スゴいわね。チカ、ジャンプ力あるのね。」

階段の先にいるチカの見える表情が、活き活きとしている。
バスケ、本当に好きなんだな、と判る顔だ。

「じゃあ、サークルとかでやったら?バスケ。」

「俺の何処に、そんな時間があると?」

そう言った後に、チカは気まずそうな顔をした。

「いや、瑠璃。社会人になって、本当に時間を他のダチと合わすのが難しいんだ。こんな仕事は。」

「でしょうね。」

マネージメントするのが瑠璃でなくても、勤務時間は不定なのだ。

「でも、そうだね。」

チカは楽しそうに笑っていた。

「ひとりでも、ボールで遊べるよな。」

「家を建てたら、ゴール作るといいじゃない?」

そして、子どもたちにチカがバスケを教えている。
そんな光景が、瑠璃の脳裏に浮かんだ。

「うん。いいね、それ。」

はにかむように笑っていた。
瑠璃は、チカの、そのジャンプが見たいと新たな夢が出来た。

ようやく屋上に出て、見晴らしの良い景色に感激する。

「わあっ!」

頑張って登ってきた甲斐がある。
凱旋門から星形に道路が伸びているのがお洒落だし、エッフェル塔もビル群もモンマルトルの丘も一望出来る。

「お前と見れて、良かった。」

手を繋いで隣りにいるチカは、うっすらと涙ぐんでいるのが判る。
何に琴線が触れたのか、母親とのパリでの想い出が蘇ったのか、それは判らないけれど。

「お前と、ここに来れて、良かった。」

瑠璃は微笑んでチカを見つめる。

「Lilyと約束した。いつか、一緒に凱旋門に登ろうねって。」

「……胎児のリリーが、凱旋門なんて知ってるの?」

チカは、不思議な事を言い出す。
約束?
母の腹の中の胎児と?

「胎児は本当は何もかも知っているんだよ、瑠璃。母親の記憶は全て受け取ってるんだよ。」

「……スゴいのね。」

「忘れちゃうんだよ。この世に産まれ出てきたら、忘れちゃうんだよ。約束も、全て。」

「約束?」

時折、隣りのこの人が、全く判らない。
何の誰との約束を憶えているのか、チカは。
何を知っているのか。

「たまに胎児の時の記憶が、うっすら残っている人間もいる。神楽もそうなんだけど。あれだけ記憶の保ってる神楽でも、最重要な約束は忘れてしまってるんだ。」

「そうなのね。」

どうして、この人にそれが判るのか。
不思議な人。
そして、神楽の最重要な約束とは、なんの事なのか。
チカは瑠璃の腹に手を当ててきた。

「こんにちは、赤ちゃん。」

その、ぼそっとした言い方に瑠璃は笑った。

「赤ちゃん、いるの?出来ちゃった?」

「いや、今はいないけど。瑠璃の身体が妊娠しやすくても、流石にもっと入れてないと出来ないのかな。一回出してからなら、アウトだったかも。とにかく、今回は出来てなくて良かったね。」

チカはそのまま黙って手を当てていた。

「安産、安産、安産、安産、安産、」

そう呟きだした。
何故、凱旋門の屋上で安産祈願なのか。
瑠璃は吹き出していた。

「よし!今日は僕がマグロににゃるにょ。瑠璃たんが、上で存分に動くのにゃ。」

「それが神さまのお告げ?安産の為の?」

「そうにゃにょにゃ。神のお告げは絶対なのにゃ。」

「怪しい宗教ね。」

「僕が教祖なのにゃー。」

そんな宗教も地道に流行りそうだが。
景色を堪能してから、ゆっくりと階段を降りていった。

凱旋門もそうだが、シャンゼリゼ通りに戻ると、時折、声を掛けられる、様々な人種に。
みんな、瑠璃がモデルだと知っている。
綺麗だと褒めてくれる。
あなたみたいになりたいとも言われる。
応援しているとも言われる。
それだけ、世界的に認められてきたという実感が、ある。

カジュアルレストランに入り、牛肉の赤ワイン煮込みとムール貝の白ワイン蒸しをシェアして食べた。
階段で体力消費したからか、瑠璃も珍しく腹が減り、沢山食べた。
チカは安いテーブルワインを飲みながら、楽しそうにしている。

「ん?」

口に肉を頬張りながら、瑠璃は微笑んで見つめているチカに眼を合わす。

「いや。しあわせだなって。」

嬉しそうにはにかんで、チカは白ワインを口にする。
その仕草がセクシーで、瑠璃は見惚れて胸がきゅんっと鳴った。

「氣が緩むと親父喰いをする瑠璃を間近で眺めているのも、幸福なんだよ。」

また、貶されて溺愛された。

「氣をつけるわ。あたしも、ワイン飲んでみたい。」

アルコールで酔ってみたいのだ。

「お酒は二十歳になってから。」

「判ってるわよ。チカは子どもの時から飲んでるくせに。」

「迂闊な飲酒を目撃されてみろ。日本はうるさいから、そういうの芸能人は致命的。」

「判ってますって。」

「ま、パリなら十六歳から飲めるし、Englandは十六歳から店でビール飲めるよ。全てのアルコールは十八歳からだし。実はEnglandは保護者の了承済みなら、家でのみ五歳からアルコールが飲める。」

「あら、そうなの。」

十六歳からならば、もうすぐだ。

「けど、瑠璃は妊娠するデショ?その後も授乳があったりするデショ?」

「そうね。まだ、先になるわね。」

しかし海外でなら、日本の二十歳よりも早く酒が飲めるのだ。
その日が楽しみとなった。

アルコールの件は日本ならバッシングとなったとしても、あたしの男の件はスルーされるのね。
瑠璃は微笑んでチカを見ている。

チカだとて淫 行と世に騒がれる危険も、婚約した事で回避した。
世間もあの、セクシーなボディの見た目成人の艶やかな瑠璃には、男関係の批判が出てこない。
そう、仕向けたのだ、この人が。
じっと、見つめる。

内心がどうだろうとて、あたしはこの人に任せる。
だって、こんなに愛されていると判るから。
触れないでも、その眼線で抱かれているし、指の動きで瑠璃の何処に触れたいか判るし、その瑠璃への愛しさが全身から滲み出ている。

「あなたに尽くすからね。」

瑠璃の頬を優しく撫でた。

「ええ、尽くしてね、一生。」

あたしに一生を捧げて。
あたしも、あなたに一生を捧げるの。


……………………………………………………………………


一回ホテルに戻ってから、モンマルトルの丘に行った。
ここも階段だらけというし、疲労を考えてケーブルカーで寺院まで登る事とした。
これが観光氣分で、とても楽しかった。
やはり、乗り物は旅には嬉しいのだ。

そこから散策するのも、また、坂道をひたすら歩き回る。

「体力勝負よね。」

「make loveと一緒だ。」

そうなんだけれども、それとも違う脚の使い方だ。

「だから、上に乗るんだよ。足腰鍛えて、瑠璃。瑠璃はすぐに脚ガクブルだから。」

「……はぁい。」

「あ、あ ん、」

チカは急に、わざとらしい悶 え声を出した。

「―何?」

「お前に乗られてんの妄想したら、つい。」

チカはそこを指差す。

「もうっ!こんな外で。」

「これは男の生理現象です。お嬢には判るまい。チチブルブル、ブルブルチチ。」

チカは何故か無敵に、腰に手を当て、ふっふっふと笑っていた。
人通りの少ない場所だから、よかった。
瑠璃はチカを石垣の方に向ける。

「瑠璃、ここには葡萄畑があるんだよ。」

「あ、ホントだ。」

通りの向こうに葡萄畑が見えた。
新緑の葉が陽射しに透けて鮮やかだ。

「ここでもワインが作られてるんだよ。」

「へえ。」

「モンマルトル産じゃないけど、ワイン、瑠璃の生年のを取り寄せて、瑠璃の飲酒のお祝いに飲もうか?」

「わあ!それ、嬉しいわ。」

自分が酒を飲める頃には、周囲の環境はどうなっているのだろう。
仕事は?
この人とは?
子どもは?

見当が全くつかない。
まだ、先の先の話だ。
それでも。

微笑み合いながら手を繋いで歩いて、葡萄畑の方へ行った。

「チカ、あたし決めたの。」

「うん、お嬢。何?」

しかし、チカは穏やかに微笑んでいる。
判っているのだろう。

「あたしは、パリには移りません。」

「うん。」

チカは頷いた。

「プレタポルテなのに、チャスはあたしにぴったり合うように、最後の最後まで力を惜しまず衣装を作るもの。それが最高に似合うのよ、あたしに。」

「そうだね。とても、似合うよ。」

「その服を、売りたいと思うわ。」

モデルは自分が目立つだけではない。
そのブランドの売上の貢献度が大なのだ。
ブランドを愛しているからこそ、身に着けたいし、表現をしたい。
だからこそ、身に着けている服を魅せる為の技術が必要だ。
自分を一歩抑えても。

「自分を抑えるって、ラルフに学んだの。ステキなモデルの先輩に出逢えて感謝だわ。」

「そうだね。ラルフはとてもいいモデルだ。だからこそ、いい役者になれると思う。」

「役者?」

初めて聞く関連ワードだ。

「ラルフは契約が切れるんだよ。俳優に転向したいんだと。」

「俳優!うん、でもそうね。ラルフは役者向きね、確かに。」

整ったハンサムな顔立ちの白人。
母が米国人の英国人。
写真で収めるよりも、動きの方が目立つ。

「成功するといいわ!」

「きっと、成功する。」

チカがそうと請け負うならば、そうなのだろう。
ラルフの今後の活躍も楽しみだ。

「なので、吉田。こちらの話は断ってください。

「はい、承知しました、お嬢。」

チカは嬉しそうに頷いている。
他のモデルやモデル事務所からしたら、こんないい機会を逃すなんて阿呆だと、思われるだろう。

だが、仮に今後、パリコレに出たいという夢が湧いてきたならば、その機会はきっと訪れるだろう。

もう、怯まない。
世界は、あたしに向かってやって来る。

チカは瑠璃の顔を喜々として覗く。

「なあに?」

「Ameliaが、年収の金額を向こうよりも上げて提示してきてました。」

「ウソ……!」

チカは、その事を瑠璃に告げなかった。
いずれにしろ、それは瑠璃の判断基準ではないと知っているのだ。

「嘘なんか、言いませーんっ!」

チカの無邪気な笑顔。
Ameliaに、それ程の価値があると自分は認められたのだ。
瑠璃は口を押さえて震えている。

「これで、自分にはコネがどうだと今後ゴネたら、逆さ吊りの刑ですよ。」

「それは……、」

「ああ、わりぃわりぃ。お前には、それはご褒美だな。」

チカはニヤニヤとしている。
この言い方が、沖縄の時を彷彿させる。

「でも、それで、逆さに吊るされて嬉しいのか?この、変態 女って 罵 って欲しいの。」  

「お前、ほんっと超超ドMだな。」

チカは呆れていた。

「逆さ吊りなんて、絶対にしないし。健康を害するわ。普通に吊るすとしたら、胴体からだよね。いや、もう、吊るすなんて装置が必要だからね。」

具体的な提案が出てきた。

「家作るなら、そんな部屋を作って。装置ばっちりの、お仕置き部屋。遮音性の高い部屋にしてね。あたしたちの声、子どもたちに聞かれないようにしないと。パパがママを縛って 叩いて いじめてるって、トラウマになるから。そうね、子どもたちには永久に見つからないような隠し部屋風にしとかないと。トイレもシャワールームもつけてね。あたしを存分にいじめたいなら。」

「あのなあ。」 

呆れてはいるが、チカは綿密に考えているだろう。
夫婦ふたりの、愛のお仕置き部屋を。

「ほら、どうするんだよ、このぼっ き ぼき。」

チカはまた、豊かな膨らみを指差した。

「お前の所為だぞ。お前が超超ドM発言するから。」

「知らないわよ。外じゃ、あたしは何もしてあげられないもの。」

「ソウネ。咥 えたいんだろうけどね。」

誰もいないと確証されているなら、ね。
瑠璃は想像して赤くなった。

「こういう時は痛々しい歴史を考えるんだ。数字だと、俺は逆に興奮するから。」

「いつ?何処の歴史?」

「今日は古の中国を考えよう。職業として自ら望んでの宦官ではなく、それ以前の刑罰としての官刑……痛っ!」

想像するだけで痛いらしい。
顔を歪めて押さえていた。

「いや、真剣な話。瑠璃るりは、幸運の女神だよ。あなたがあなたで艷やかにいれば、勝手にギャラが上がったんだよ、結果的に。」

押さえながら話す内容ではないが。

「僕も、これで月給が上がります。」

チカはいや らしい顔つきで指で丸を示した。

「登規さんのおかげよ。」

「いや、僕はお手伝いをしてるだけだよ。あなたの美と安全の門番。」

よく意味が判らないが、チカが煽ってくれなければ、瑠璃は今ここにはいないのだから。
瑠璃は微笑んでチカを見つめ、くちづけた。

「瑠璃……」

「愛してるわ、トウチカ。」

「僕も。もっと、愛してるよ、瑠璃たん。」

瑠璃の両頬を手のひらで優しく押さえ、輝く緑の眼で見つめている。

「お願いだ、瑠璃。」

チカは切羽詰まった声を絞り出した。

「なあに?登規さん、なんでも言って。」

瑠璃の手をはしっと摑み、その手を誘導する。

「あ……」

「もう、我慢出来ない。」

チカは、はあ はあと荒い呼吸をした。

「ほら、聞こえるだろ?」

「鳴ってるわ。」

「そうだよ。飢えてんだ。」

「もう、お腹空いたのね。」

「うん、腹ペコりんなう。」

かなり歩いたからね。
瑠璃は、ぷっと笑った。

「いいわ。夕食には早いけど、何か食べましょ。」

そこらに可愛らしい店はある。

「うん。祝杯をあげようよ。」

「祝杯?」

手を繋いで歩き出す。
何処までも、一緒に歩いていく。

「あなたの、また新しいスタートだ。お祝いをしよう。」

「―ええ!」

あたしはロンドンを拠点にしていく。
これから、しばらくは。
このパリはきっと、遊びに来るからこそ、美しさが際立つのだ。
生きていくスペースでは、なかった。

そして。
あなたと、生きていく。
これからも。


トーチカ~瑠璃シーン⑥前編14に続く
…………………………………………………………………………



にゃにょ言葉を聞きながら、わたしは思った。
―ニャース?
(チカ曰く、そうではないらしい。
今氣づいたが、そういうことか。)

フランス語は前後が繋がって発音するから、その喋る一節が全て呪文みたい。
単語として聴き取ろうとしてもムリっぽい。
文として覚えないと。


パリで活躍しないとモデルは一流じゃない、とも思われます。
特に日本では根強いかな~パリコレが。

瑠璃の自信は、その常識すらも上廻ったのだ。

どの味のニュアンスを好むのか、にもよると思うの。
ファッションのセンスって。


瑠璃のドMさで、ついに緊 縛まで出てきた。
それすらも、今やチカの悦びになっている。
チカがあんなに嫌がっていたS Mもね。
俺とお前の攻防戦。

次回、次次回で前編のケリがつく。
俺とお前の攻防戦。
第一章結末的な。
ドーンと。


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