+トーチカ〜神楽シーン④前編 | みずのこえ こころとからだのほぐし

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こころとからだのほぐし、は
あなたのかたくなった部分をほどきます。


テーマ:
今日もお話です。

怒涛のトーチカ~瑠璃シーン③終わりました。

そんなエロスの流れののちの
神楽シーン④となります。


トーチカ神楽シーン①
東三河に住む、未来を知っている少女
神楽の眼線


トーチカ~瑠璃シーン①
神奈川に住む、モデルの美少女
瑠璃の眼線

交互に同時期を書いていきます。

どちらにも童顔の二花(つぐはる)が絡んできます。

それ以前の物語はこちら


来る潮帰る波
神楽の母が亡くなったことを、その兄(神楽の父になった人)が回顧する話

実になる花~追伸
モデル瑠璃の母、女優実花と、父、アーティスト椎也の物語


特に今回は少し、
来る潮帰る波が絡んできます。


で、今回から
神楽シーンとも瑠璃シーンとも
同じ場面を
各々の取りようで表していきます。


トーチカ~瑠璃シーン③
電話の場面のように
会話してても
互いに受け取り方が異なるという
面白い結果になるのです。

神楽シーン④は
前・中・後編です。

今回は時間枠に囚われず
いろいろエピソードを
ふらふらしつつ書いてます。

このエピソード書いてたけど
あ、このエピソード書こうと
ふらふらさせてます。

怒涛のシーンの
最後の方から書き始めました。


穏やかな神楽シーン、
激変があるのは
④の後編です。


テーマとしての曲
前回の③では“Carnival”でした。

今回の④もテーマ曲があります。

そこらへんの流れもどうぞ。





トーチカ~神楽シーン④




飛行機でお出かけ。
神楽は、初めて乗る飛行機の離陸に興奮していた。

「わーっ!」

歓声を揚げて、晴天の窓の外をずっと見ている。
そんな神楽の様子が、二花はとても可愛く思えた。

「すごーいっ!」

眼をキラキラしている。
連れてきてよかった、二花はそう実感した。
水平飛行になってからも、窓の外の空をずっと眺めている。

「楽しい?」

「うんっ!どっ楽しい!」

無邪気に笑って、眼線は動かさずに神楽は、そうこたえた。
下降の時も、少し怖がったが、楽しそうに窓の外を見ていた。

「とにかく飛行機で日帰りっていう目的からなんで。」

観光に重きを置くのではなく、帰りのフライト時間を考えて、せかせか観光に廻るのではなく、ゆったりプランで考えていた。

「観光プランはいろいろ考えたけど、まあ、その時その時で、見たいトコ、ゆったりしようよ。」

二花は神楽に笑って、そう言った。

「俺も松山を敢えて観光した事ないんたよね。ツアーでは来たけどさ。」

「どうして松山にしたの?」

「そう、観光した事ないし。セントレアから定期便のあるトコで、時間との兼ね合い、だね。沖縄や北海道なら泊まりで行きたいし。」

とりあえず、日帰りで。
泊まりでも別段、神楽との関係で間違いは無いだろうけれど。
とりあえず日帰りで、飛行機に乗せてあげたいと、二花は考えた。

空港からバスに乗る。
知らない場所で知らない町並みを通るのは面白い。
神楽は、ずっと外を見ていた。
それを二花は、にこやかに眺めていた。

彼女は本当に、十三歳の中二の少女らしい外見だ。
瑠璃とは違う。
瑠璃が激しく、普通と異なるのだが。

瑠璃も、別れた頃とは全く様子が変わってしまった。
それはメディアで確認するしかないのだけど。
もっと大人の女に様変わりした。
あれが十四歳の中三とは、説明が無かったら、誰も到底思わない。
素敵な大人の女性になっていた。

バンドのPVに出演して、それが噂のマネージャーとのラブシーンもあり、話題沸騰になった処だ。
婚約しているとの報道もあった。
何処でももう、自然に仲睦まじくしているので、逆に嫌味がないと、マスコミに賛同されるようまでになったのも、不思議な話だ。

アレは全部、チカの作戦なのだろうか。
あの、ラテン的に適当に遣り過ごしているように見えて、実はチカは勝算があってこそ動く人間ではないかと、二花は読んでいる。

バスを降りて、新緑を背景に、城を見上げる神楽を、二花は観察していた。
一年前とそう身長は変わらないけれど、身体の丸みは、かなり出てきたように見える。
痩せ気味で胸も小さいけれど、女性的な身体になったと、客観的に観察していた。
性的な眼では無く、むしろ保護者的な視点だった。

「二花くんーじゃないですか?」

ふと、二人組の女性に声を掛けられた。

「はい?」

その二十代くらいの女性たちを見やると、ほらっ!とキャーキャー騒ぎ出した。

「わあっ!すごーい!本物!かわいーっ!ファンなんです!こないだの椎也のライヴも行ってー」

手を差し出されたので、その手を握る。
もう一人の手も握る。

「ありがとう。」

ニコッと自然に笑う。
ぼーっと二人とも、その笑顔に見惚れていた。

「隠し子ですかぁ?」

神楽を見て、うふふふと笑っていた。

「残念!友だちの娘だよ。」

「いいなーっ!今日は観光に?」

「うん。ツアーだと観光出来ないから。」

そんな他愛も無い事を会話している。
神楽は、ふっと笑った。
あたしはやっぱり、子どもなのね、見た目も。
隠し子というのは冗談だろうけど、結局、例えば彼女?、なんて風には言われんよね。

「ごめんね、時間無くなっちゃうから。声掛けてくれて、ありがとう。」

彼女たちに微笑んで、神楽の肩を叩いて歩き出す。

「いいの?ファンの娘なのに。あたしは待っとるけど?」

笑んでいる二花を見上げる。

「いや、いいよ。折角の神楽との時間が少なくなるだろ?」

キザ。
神楽は、ヘラっと笑って前髪を掻き上げた。

「そういえば神楽はずっとショートだね。伸ばさないの?」

神楽の頭をポンポン叩いてくる。

「二花くんの好みを押しつけんでくれる?」

イラッとして、神楽は二花を睨んだ。

「そうじゃなくて。」

二花は、その眼にたじろんだ。

「もしかして、観てきた映像の神楽がショートだったから、ショートにしてるのかな、と思って。」

その二花の台詞に、神楽は、ハタっと考えた。

「そう言われれば、そうだわ。疑いが無かったわ。」

確かに、ずっとショートだった。
もし、髪を伸ばしたら、未来も変わるのだろうか?
未来が変わると。
二花を見上げた。

「へえ。じゃあ、伸ばしてみるのも、面白いかもよ?」

まさか。

「このままでいい。」

怖いの?神楽。
二花との未来が無くなるのが、怖いの?
神楽は自分に問うていた。

他の人は、誰も未来を知って生きている訳ではない。
確証のない先の事を信じたり、願ったりして、必死に生きている。
だからといって、神楽の生き方がラクな訳ではない。
むしろ、緊張感満載である。

もし。
予定調和を崩しても、未来が変わらないとしたら。

「うん。神楽のいちばん好きな方にしたらいいもんね。」

二花は笑っていた。

「そうだね。」

答えが判らなかったので、そう返事をしておいた。

隣りの二花を、そっと観察する。
去年の今頃よりも、少し痩せたように見える。
実際、痩せたろう。
でも、夏や秋よりも、戻ってきた。
そう思う。
いちばん辛かった時期を越えて、そして、ふたりが二花を裏切っていた事実を受け入れた。
それは自分がふたりにしてきた仕打ちを思えば、納得がいったのだろう。
でも。

「あたしは二花くんに酷い事を言った。」

二花は突然の神楽のその言葉に、神楽の横顔を見つめた。

「あなたがロリコンだとか、制服フェチだとか、だからプレイしたくてJCとつきあったとか、巨乳好きだから、谷間に顔を埋めたくて、ちょうど二花くんを好きな瑠璃ちゃんに焦点を当てた、とか、散々な事を言った。」

二花は興味深そうに、その可愛い顔をすっかり神楽に向けた。
歩みを止める。

「でも、そんなのは二花くんだから、じゃなくて、多くの男の人が潜在的に持っとる欲求だよ。あなたは謂わば運が良いだけ。それを必然的に叶えたんだから。」

二花は新緑の桜の樹の下のベンチに神楽を促した。

「だからねえ、アレは酷い言葉だった。ごめんなさい。」

神楽は少し恥ずかしそうに、謝った。
二花は呆然として、そんな神楽の様子を見ていた。

「いやー神楽、神楽は悪くないよ。」

大きく首を横に振る。

「むしろ、ああキツく言ってくれなかったら、俺はどんどん調子に乗ってたと思うよ。ああ巨乳だ、ああ制服だ、ああJCだって、深みで溺れたと思う。ーまあ、溺れたんだけど!」

自分でそう言って、二花はそれがおかしくて笑った。

「何やったんだー俺!生まれる前から見ていた、世話してきた女の子に溺れたんだぞ?最悪だな。」

「サイアク。」

神楽は、二花のその自分への呆れ様に、悪態をついた。

「だよなー?」

笑っている二花を見ていたら、溜まらなく胸が痛んだ。
二花は泣き出した神楽を見て、慌てて神楽の髪をぐしゃっと撫でた。

「ただ、瑠璃ちゃんを本当に好きだったのに!それなのに、あたしは嫌味をいっぱい言った!」

どれだけ真剣に瑠璃ちゃんとの未来を考えていたか。
あたしは知っている。
なのに、それに邪な情報を、どんどん吹き込んだ。
それが、あたしのすべき事だったとして、どんだけ辛い想いをさせたか。

「二花くんが悪人だって、酷い男だって、いっぱい罵った!あたしは、あたしは、二花くんに、最低な事をいっぱい言った!」

「神楽っ!」

二花は神楽の両肩を掴み、泣いている神楽の顔を自分に向かせた。
涙がボロボロ溢れて止まらない。
その顔で二花を正面に見ないといけなかった。

「神楽は悪くない!神楽は、ちっとも悪くない!」

抱き寄せて、背中を撫でた。

「神楽、ごめん!神楽に酷い事を言わせたのは俺だ!俺だから!神楽は悪くないんだ!」

今の二花の叫ぶような声に、未来の二花が告げた事を思い出した。

苦しかったよな。
お前、顔変えないし、泣かないから判らなかったよ。
後になって、どれだけ神楽が我慢してたか、よおく判った。

後って、この時のコト……?

「こんなに苦しかったんだな、神楽。ごめん、神楽、ごめん!」

ぎゅうっと強く抱きしめられる。
それは決して恋しくて、とかではなく、こんな娘に大きな負担を掛けさせて申し訳ない、という意思の表われ。

過ぎる人が不思議そうに見やって行っても、二花は気にする事なく、神楽を抱きしめていた。

だから、余計に泣けてきた。
何で、わざわざここに来て、観光せずに、あたしは苦しくて泣き出したのか。
バカみたい。
アホじゃん。

ああ、だから。
あたしは少し勇気を出して、髪を伸ばしてみようと思った。



……………………………………………………………………………



落ち着いてから、ロープウェーに乗った。
急がないから、と、ロープウェーを降りてから、ゆっくり歩いていった。
気恥ずかしくて、二花の顔が見れなかった。

「こういうトコ、来るもんだね。お陰で、神楽の本音が見えた。」

二花は笑っている。
あたしは照れている。

「アルバムのレコーディング、全部アップしたから。また、アルバム完成したら神楽に渡すね、いちばんに。」

一番なのはそうかもしれないけれど、きっといちばんが、あともうひとりはいると思う。
実花ちゃんには、きっと一番に渡す。

延期していた二花のオリジナルアルバム。
椎也のツアーが終わってから、真剣に取り組んでいた。

最近の二花は、何か意気込みが違うように感じられる。
あれは、去年の夏、いきなり人が変わったかのように、真剣に自分に向かい出した。
そして、チカと瑠璃を両方切った。
でもそれが辛くて、二花は生きる気力と笑顔を失った。

それから浮上してきて、椎也のツアーも始まり、そして今度は瑠璃のチカとのスキャンダル発覚だった。
でも、アレは予想する程、二花は落ち込まなかったけれど。

そして、椎也のツアー後、アルバム制作に真剣に取り組んだ。

「それは楽しみにしとる。」

「楽しみにしてて。」

そして新緑の頃、こうして日帰りの旅になった。
ゆっくり歩いていても汗ばむ。
時折、二花がぐしゃっと神楽の頭を撫でる。

「実際に歩かないと、判らないことっていっぱいあるよな。」

どういう意味かは判らなかったけれど、家の中で二花に毒舌をぶつけているより、こうして外に出た方が気分はいい。
二花と一緒に出掛けるのは、楽しい。

あたしは間違いなく、今、この人が好きだ。
何故なのか、理由は判らないけれど。

して欲しい事、したい事。
欲求が、どんどん増えてくる。
知識としてある、未来に予定されている事柄として、ではなく。

天守閣に昇り、そこから二花と一緒に見る光景が、新しい世界だった。
他の世界を二花と見る事、それが楽しかった。

降りてきてから、商店街で適当に店に入り、遅めの昼食を摂った。
別にご当地名物ではなく、普通のパスタランチだったけれど。

その店で、恐らく有線が流れていた。
“糸”が流れてくる。

「あっ。この曲、こないだ合唱で唄ったんだ。」

「えっ?そうなの?」

二花は何故か慌てていた。

「いい曲だよね。逢える時は判らんけど、大切な相手と出逢えたら、いいのに。そんな想いが込み上げてくる。……あたしは相手も判っとるのに、それでも。」

結局、いつどうして、二花の心が動くのかは判らない。

切なそうな表情の神楽を見て、二花は少し見惚れた。
この娘も、こんな表情をするんだ。

「でも、結局、俺はお前との出逢いは凄いもんだと運命だとかに感嘆するよ。……神楽のお母さんを、俺が海で発見するんだから。」

あの時はもう、彼女は既に息絶えていたけれど。
でも、腹の中の神楽は生きていた。
そんな奇跡。
あの朝、海に行くのが、もう少し遅かったら、どうなっていたのか。
そして、もっと早くに海に行っていたら、今はどうなっていたのか。

だから、奇跡。
この出逢いは、成るべくして、その時に出逢えたという、幸福。

「みんなそうなんだよね。相手に出逢えるっていうのは奇跡だね。それを忘れがちなんだけど。それだけで凄いのに。」

いつか。
神楽と恋に落ちる。
その奇跡。
それを知っているけれど、その軌跡は判らない。
だから。
そして、彼女はもう、眼の前にいる。

「で?何驚いとったの?」

「えっ?」

二花は慌てた。

「この曲、何かあるの?」

神楽の眼。
それを見て、二花はドキリとする。

「何か、隠そうとしとる。言えん事?」

見据える眼。
だから、慌てる。  

「い、言えないっていうか。まだーまだ内緒。」

何故、こんなにドギマギしているのか。

「内緒?」

尋問されているみたいだ。

「内緒だから、内緒!」

二花は額の汗を手の甲で拭った。

「何故?内緒にする?」

「それはー」

そこで、頼んだランチが運ばれてきた。
二花は神楽に気づかれないように息を吐いた。
今のは何だったのか。
神楽は普通に食べ出していた。
その後も、この事を何も言わなかった。

この後を調べた二花が、市内電車の坊っちゃん電車に乗れそうだという事で、一区間だけ乗った。
結局、それだけで観光は終わった。
空港のカフェで出発を待つ。

「あたしがあんなトコで、わあわあ泣いたもんで時間無くなったね。」

神楽は気まずそうに笑った。

「いや。観光目的じゃないし。第一の目的は飛行機だし。俺は楽しかったけど。神楽とこうして過ごせて楽しかったけど。」

「うん。あたしも楽しかったな。」

飛行機乗れたし。
今から、また乗るし。
二花と一緒に、違う景色が見れたし。

「また、どっか行こうよ。泊まりだったら、遠くも行けるし。神楽、何処か行きたいとこある?」

二花に他意は無い。
泊まりだとしても、何も無いと信じている。
自分が神楽に何もする気が無いからだ。

「行きたいトコはいっぱいあるけどさあ。」

「じゃあ、一個ずつ、そこ巡ろうよ。」

「それもいいけど。」

笑っている二花。

「じゃあ、まず、二花くんのウチに行きたいんだけど。」

神楽は少し恥ずかしそうに言った。

「神奈川の、海の近くの二花くんち。」

「え?そんなトコ、わざわざでいいの?」

二花は少し呆れて言った。

「うん。そこに行きたいから。」

「じゃあ、ついでに、いろいろ廻ろっか?そこらで行きたいトコは?離れててもいいよ。」

「実花ちゃんと椎也くんのお家。」

都内とか、海辺の有名な観光地とか、そういう場所を考えていた二花の想像の範疇を超えていた返事だった。

「え?」

「ダメだった?」

神楽の落胆の声。

「いやーダメな事は、全然、無いんだけど。」

楽しそうに笑い出した二花。

「判った!そういう感じでね。夏休みにしよっか。」

「うん、楽しみね。」

笑っている可愛いらしい二花を見て、神楽も笑えてきた。

帰りの飛行機も、楽しんで窓の外を眺めていた。
ずっとずっと飽きずに、雲と青い空と見下ろす海と日本の風景を眺めている神楽に、二花はとても充足感を感じていた。


……………………………………………………………………………





「で、泊まりで?」

父の瞬は、呆れていた。

「ああ、瞬。別に変な計画がある訳じゃなくて。ただ、神楽を楽しませたくて。」

二花の眼を見ていれば、そこに他意があるのか、意図があるのか、大概判る。
だから瞬は、それが純然たる願いだという事は理解していた。

「ま、いいけどさ。約束はしてくれよ、『何もしない。』って。」

「当たり前だろーっ!」

瑠璃とチカの記事を読んでおかしくなった二花が神楽に迫り、それが神楽の大きなショックになった事は、瞬にも大きな十字架である。
いずれは確かに、このふたりは結ばれるにしても、今はまだ、それを許す訳にはいかない。
神楽はまだ中学生だ。
神楽の為にも。

「行き先がお前の家?そして、お前の片割れの家?神楽は、そういう娘だな。」

ふっと面白そうに笑って、煙草の煙を吐き出す。

「あの、個性的な面白さは、アレは誰に似たんだか、な。」

瞬は一瞬遠い眼をして、煙草の火を揉み消した。

「俺はそんな神楽が可愛いよ。」

「俺だって、そうだけどー」

神楽の部屋は、元々、彼女の母親の部屋だった。
だから、あの部屋から神楽が出てくると、時々びっくりする。
判っていても、びっくりする。
あの娘が生きていたら、今、どんな風になっていたろう。
もはや、想像も出来ない月日が流れてしまっていた。
後悔でもあり、安堵でもある。

「見てみてーっ!じゃーんっ!」

三実が振袖姿の神楽を連れてきた。

「可愛いなーっ、神楽。」

二花は素直に神楽の可愛さを褒めた。

「でしょ?やっぱ可愛いやあ、神楽ちゃん。似合う!」

「……そう?」

褒められて、神楽は悪い気がしなかった。

「あーあ!お正月に着せてあげれば良かった!抜けてたわーっ!」

三実は、はーっと溜め息をついた。

「いろいろ処分しようとしてたら、着てないの、いっぱいある事に気づいてね。神楽ちゃんにあげる、何着か。」

「三実ちゃんだって、まだ振袖着れるじゃん。」

神楽は未婚の三実を見て、そう言った。

「幾らなんでも、こんな可愛らしいのは着れません。で、瞬くんは?娘に可愛いって言ってあげなよ。」

三実はボーッとしてる瞬を見て、そう付け加えた。

「ああっ、ごめん。似合うよ、神楽。可愛いよ。」

少し照れ臭そうに、娘をそう褒めた。

「お父さん、ありがと。」 

「何かなー。思い出しちまった。アイツ、成人式は振袖なんていいからって振袖着なかったんだよな。多分、レンタルにしても金額的に気を遣ったんだろうなあ。母親が生きてればなー。そういうトコ、気遣ってあげれたかなって。」

瞬の琴線に触れたようだ。

「だから、神楽が振袖着て、嬉しかったよ。三実、ありがとな。」

三実に礼を言った。

「あたしは、処分するの勿体無かったからあ。」

三実は照れて、そう言った。

「貰ってくれる?神楽ちゃん。」

立っている神楽を見上げ、三実は、そうお願いをした。

「うん。喜んで。」

だから、神楽は笑った。

「三実、どうして急に処分を?」

二花は真顔で、そう尋ねた。

「え?いろいろ、要らないもんを随分抱えたままだったなあって思って。捨てなきゃいけないもん、いっぱいあったわ。」

それは眼に見えるものだけでなく、数々の古い感情も含めて。

「俺はまた、引っ越すつもりかと思ってさ。」

「引っ越し?計画は無いよ。」

二花は少し照れ臭そうに、瞬を見た。

「この家に越してくるつもりかと、思って。」

二花の、予想出来なかった言葉に、三実は、頬を押さえた。

「バカな事をー二花!」 

三実は、そう、軽く怒鳴った。

「バカな事かな?瞬はバカな事だと思うワケ?」

二花が、そう尋ねる。
神楽は、父の顔を見やった。

「俺はーまあ、いずれはって思ってるよ。事実婚ってヤツ?まあ……タイミングで。」

そこで、もう一言!
神楽は、父に無言で念を送った。

「いつか神楽が家を出てく、きっと。そうしたら、って思ってたけど。まあ……いつでも、来いよ。いいよな?神楽。」

もうちょっとロマンチックに言えたらな、もっと、心打つのに。
神楽は残念に思いつつも、微笑んで頷いた。

「もちろんっ!楽しみにしとるよ、三実ちゃん。」

一所懸命、表情を保とうとしている三実の頭を、切なそうな瞬が撫でた。

「何で、お前らがいる、こんな場で、こんな……。でも、来てくれ、三実。」

ふたりきりでなかったら、これが精一杯かも。

神楽は同じ事を考えた二花と眼が逢い、二花の出してくれた腕を握って、居間から出ていった。

後から、そのふたりの様子は、何だか結婚式のようだったと、三実は笑って語った。



トーチカ~神楽シーン④中編に続く


……………………………………………………………………………


よし、松山に行こう。(二花談)


……松山ですか?
何も情報ありませんが。

そういえば折々テレビで見てたね
と調べたけど
殆ど観光しませんでしたよ、彼らは。

セントレアのフライトスケジュール見ると
松山、それが妥当だと思います。

行き先は何処でも良かったのだから。



これは昨年から引き寄せられてきた曲です。

息子が昨年、先生たちが歌ったと
いい曲だと教えてくれました。

わたしも知らなかったのだけど。
聞き覚えはあるかなーくらいの。

そして、先日の玄花さんのエナジーワークでも唄ったり。

面白い流れだな、と。

そういう糸に
この物語を読んだ方が巡り逢えますように。

もう既に出逢っている方も
大切に紡いでいけますように。


大切な巡りあわせの話。


だから、強く引き寄せられたんかい?
という展開でもあります。



お読みくださり、真にありがとうございます。







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