
恋愛体育教師・水野愛也
「義務教育に恋愛を!」をモットーに、恋に悩む老若男女に恋愛技術を叩きこむ、熱血恋愛体育教師。著書に「LOVE理論」(文庫版は「『美女と野獣』の野獣になる方法」)、講演DVDに「スパルタ恋愛塾」があり「スパルタ恋愛塾」の様子はNTTナレッジスクエアの主催する「N-Academy」でも見ることができる。
http://n-academy.jp/renai/
【第1講】 覚悟を決めよ
女よ。
そう、お前だ。今この文章を読んでいる、貧乳のお前だよ。
今からお前に「理想の男と結婚できる恋愛技術」を授けたい。
この言葉を聞いたお前は「そんな技術あるわけねーだろ。つーか誰だよお前」と言うかもしれない。そんなお前に向かって俺は竹刀を真っ直ぐに伸ばし、こう叫ぶだろう。
「俺は、愛也だ。恋愛体育教師・水野愛也だ!」と。
するとお前は言う。「だからそんなやつ知らねーし。つーかマジでウザいんだけど」。
それに対して俺はこう返す。「うるせえ、貧乳が!」。
こうして、お前と俺は掴み合いのケンカになり、
その結果、かなり高い確率で俺は負けることになるだろう。
俺は過去に2度、ガチの暴力で女に泣かされたことがある。
(そのうち一度は灰皿でこめかみを殴られ流血し、数針を縫う大怪我となった)。
しかし、それでも俺は――お前と取っ組み合いのケンカになり、泣かされることになったとしても――「理想の男を結婚できる恋愛技術」を授けなければならないのだ。
少し長くなるかもしれないが、これからする話はお前の人生を変えることになるかもしれないので心して聞いて欲しい。
――さかのぼること5年前。俺は、男性向け恋愛マニュアルである「LOVE理論」(文庫版は「『美女と野獣』の野獣になる方法」)を上梓した。
この本は出版されるや否や「目からウロコが千枚単位で落ちました!」「愛也先生のおかげで生まれ変わりました!先生の本を読むまでが『前世』でした!」こんな反響が多数寄せられた。「LOVE理論」は空前のベストセラーとなり、一種の社会現象を巻き起こしたのでお前の記憶にも残っているだろう。「そんな記憶はない」と言うお前は、即、病院に行きMRI検査を受けよ。記憶をつかさどる脳の「海馬」に損傷の可能性がある。
こうして「LOVE理論」はベストセラーとなり、俺は読者とサイン会や講演会で交流をはかることになるのだが、その結果、俺は、マリアナ海溝よりも、コルカ渓谷よりも深い失望を味わうことになった。
「愛也先生のおかげで人生が変わりました!」そうやって満面の笑みでサイン会会場に現れた男たちは、全員、俺よりイケメンだったのである(実話である)。
中学・高校の6年間でまともに話した異性は母親のみ。唯一、女と接点のある文化祭では、早朝から「どの女に声をかけようか」と鷹のような目で女をにらみつけ、結果、誰にも声をかけることができず、鷹のようだった目をウサギのように真っ赤に腫らして一人帰路につく――それが、俺の青春だった。
そして俺は、高校3年の9月に「大学デビュー」を決意し、上京した足で新宿の紀伊国屋書店に駆け込み、そこに置いてある恋愛マニュアル本をすべてレジに積み上げ徹夜で読破し、サークル、アルバイト、大学生活のすべてを「恋愛研究」に費やし、その結果、就職活動で「君、学生時代何してきたの?」と聞かれ「恋愛マニュアルの読書および、実践です」と答えたところすべての企業に二次面接で敗退することになるのだが、就職の話は今はどうでもよくない?
とにかく俺が言いたいのは、水野愛也は大学に入学した1994年から、卒業までの1999年、この日本において「恋愛というジャンルにおいて最も努力した人間」であるということだ(大学に入るために1日10時間以上勉強していた俺は、大学に入ってからは、1日12時間、恋愛研究に費やしていた)。
つらいこともあった。苦しいこともあった。投げ出したくなることもあった。
しかし、俺には、夢があった。
これほどまでに女と縁のない俺が、研究と実践を重ね、いつか胸を張って誰かに「女とはこういうものだ」と男たちに伝えることができたのなら、それは自分がイケメンに生まれなかったという現実を昇華できるのではないか。そう己を鼓舞し、地獄のような恋愛特訓の日々に耐えてきたのだ。
しかし、そんな俺の努力の集大成であるところの「LOVE理論」は、結局、イケメンをさらにモテさせるだけという、まさに敵に塩を送る行為に他ならなかったのである!
なぜこんなことになってしまったのか――。調査を重ねた結果、俺は衝撃の事実にたどりついた。
それは、ある程度モテている男たちはさらに努力をしようとして、恋愛における様々な情報を吸収する姿勢があるのだが、まったくモテていない男たちは、そんな面倒なことするくらいならネットの無料エロ動画見ますわ、ということだったのだ。
心理学者リチャード・セリグマンは10年にもわたる研究で「学習性無力感」というものを発見した。それは、長期にわたって困難な状況に置かれた人は、その状況から抜け出そうとしなくなる――つまり、「無力を学習してしまう状態」になってしまうのだ。だからこそ、俺の恋愛理論を吸収できたのは、すでにある程度モテている男ばかりであり、俺は、そいつたちの中に青春時代のみじめな自分を見出すことができなかったのである。
が、しかし。
「LOVE理論」という本は、同時に、俺の予想しなかった現象をも引き起こすことになった。
LOVE理論を読んだ女たちから「すごく勉強になりました」「速攻で会社の男性に勧めました」そんな手紙やメールが何十通も、何百通も俺の元に届いたのである。
そしてその手紙の中には切実な恋の悩みを訴えてくるものもあった。
「年齢も40歳にさしかかり、なんとか結婚したいと思っている。でも、婚活や恋愛に努力することに疲れてしまった。どうしていいか分からない」
「結婚できると思っていた男から、ある日『お金を貸して欲しい』と言われた。あの男を見返してやりたい」
「親から『勉強しろ』と言われ続け、勉強を頑張って国立大学に入った。しかし最近になって『結婚しろ』と言われる。でも自分は勉強しかしたことがないから突然結婚しろと言われても何をしていいか分からない」
――そんな女たちの声に自分の姿を重ね合わせた俺は、部屋で一人手紙を読みながら涙したのである。
どうして、恋愛という分野において、女はこれほど切実に悩むのだろうか。
その真の理由は、男である俺には分からない。
男が経験することのできない「出産」が女の本能を呼び起こすのかもしれない。「ウェディングドレスを着る」という行為は、男にとって「天下を取る」以上に意味のあることなのかもしれない。
ただ一つ言えるのは、俺が上梓した「LOVE理論」という本は、どうしたら理想の女と付き合えるのかを記した男向けの恋愛マニュアルであり、大半が下ネタだった(本文の最初のページで、まず俺の陰毛の写真が登場する)にもかかわらず、LOVE理論を読み「女向け恋愛マニュアルを出して欲しい」と訴えてくる女が後を絶たなかったということなのだ。
この現実を目の当たりにしたとき、俺は「もしかしたら――」と思った。
もしかしたら、自分が地獄のような生活の中で培ってきた恋愛技術は、本当は男ではなく、女のために役立てるべきなのではないか。
そして、そのとき俺の理想郷を――天から特別なものを与えられたわけではない者こそが、地道な努力と不断の勇気によって、誰よりも魅力的な存在なれるという世界を――作ることができるのではないか、そう考えたのだ。
ちなみに俺は、大学時代から現在に至るまで、恋愛を研究する上で「女の気を引くためには、まず女の気持ちを知らねばならない」という方針の元、男向けの本のみならず、女向けの本も徹底的に読破してきた。たとえば恋愛の経典と言われる「ルールズ」「ベストパートナーになるために」「サレンダードワイフ」などはもちろんのこと、日本でベストセラーになった女向け恋愛マニュアルはすべて読破している上、それらの知識に対して男の目線から「これは男に使える」「これはまったく使えない」というジャッジをすることができ、さらに俺の個人的な好みと混同しないよう、様々なタイプの男たちと議論を交わし、本当に使える技術に辿り着くための同性のマーケティングをも行った上、そこに愛也独自の理論を盛り込んだ完全無欠の恋愛技術を教えることができるのだ。
さらに、ルックスに自信の持てなかった俺は大学時代、単に「モテる」ことの研究にとどまらず、「ルックスが魅力的でないのにモテている人」をメインテーマとして研究しており、その研究対象は男よりもむしろしばしば女になることがあった。なぜなら男より女の方が「美」という価値観を重視される現代社会において、美しさを持たず、かつモテている女ほど研究対象として優れた存在はいなかったのである。
ここで具体的な名前を出すと問題になるので伏せておくが、名前を出せば誰もが知っている有名ミュージシャンや芸能人と結婚した、ルックス(より具体的に言うなら「顔」)の魅力がない女を俺は数人知っている。そして、彼女たちには明確な共通点を見出すことができたのだ(そのあたりの理論も今後詳しく教えていくことになるだろう)。
正直、これからお前たちに発表していく技術は、大げさな話ではなく数百万円の価値はある。
なぜならこの理論を知ることで、お前たちのパートナーを――ひいてはお前たちの人生を大きく左右することになるからだ。
しかし、これを俺は今からタダ同然で発表したい。
なぜか。
繰り返すが、俺はお前たちに期待しているのだ。
女であるお前たちならば――理想のパートナーを手に入れるために切実な努力を選ぶお前たちであるのなら――俺の培ってきた技術を吸収し、まさに蛹から抜け出す蝶のように飛躍することができるかもしれない。
もちろん、俺が示すのは楽な道ではない。つらい道、というレベルですらない。
もしお前が本当に変わろうとするなら、確実に、地獄のような苦しみを味わうことになるだろう。
しかし、俺は、お前にその覚悟を求めたい。
なぜなら、「自分を徹底的に成長させる」という覚悟を決めることで、人は、とてつもない変化を手にすることができるからである。
そして、お前たちが、いつの日か理想のパートナーを手に入れたとき、恋愛という分野だけではなく、自分の見ている「現実世界」が変化していることに気づくだろう。
俺は、その世界を、お前たちに見せたいのだ。
多くの女が一生知ることのない「もう一つの現実」を、お前たちに見せたいのである。
(第2講につづく)
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