この長引く不況の中、「若者の消費が冷え込んでいる」ことが問題視されており
「トレンディドラマに車を登場させれば若者が車を買ってくれるかもしれない」
そんな話すら出ていると聞きますが、
やはりこの問題で一番難しいのは
若者が一番嫌うのが「大人たちにナメられること」なんですよね。
若者っていうのはドラマが好きだから、ドラマに車登場させときゃ買うだろみたいな安直な発想。これが若者から一番嫌われます。
むしろ若者たちの消費には「大人たちへの反抗」が含まれているケースが多々あり、
たとえば中学生が煙草を吸ったりするのも「やべえ、マジ煙草うまそうなんだけど」なんて思っている人は一人もおらず、そのほとんどは「大人たちが禁止してきやがるから、あえて吸う、そんな俺、最高じゃね?」で吸っています。
そこでどうしたら若者の消費を活性化させられるかを、若者の立場に立って考えてみたんですけど、
これはもう「サプライズ消費の流行」をおいて他にはないと思います。
「サプライズ消費」という言葉は聞きなれないと思いますが
これは、僕たちの高校で伝説の男と呼ばれていた「粕山」という男の手によって導入された概念です。
当時、よくみんなで中華料理屋に行くことがあり、
彼は中華料理屋の「くらげ」が大好物だったのですが、
彼は必ず店員の前でメニューを見ながら
「まず、くらげと……」
そしてしばらく間を置いてからこう言いました。
「あと、くらげください」
「くらげ2つ」ではないのです。
彼はまず、好きな「くらげ」を頼み、メニューに目を通したあと、結果、やはり、くらげだなと、くらげ以上のものはないなと、そう結論づけてくらげを注文する俺、そんなストーリを「くらげ注文」という小さな行為の中に盛り込んでくるのです。
そして、粕山という男のすごさはここにとどまりません。
くらげを2つ持ってきた店員さんに対してこう言うのです。
「くらげください」
こうして食卓にはくらげが3つ並ぶことになるのですが
どれだけ粕山がくらげ好きと言っても、くらげ3つは彼にとって明らかにトゥーマッチであり、
というか、あんなに味のぼやっとしたもんを3つも食えないのであり、
結局、くらげのほとんどは僕たちに食べられるのです。
しかし、彼は、中華料理屋に行くたびに、必ずくらげを「3回に分けて」注文しました。
「消費」という人間の欲望が直接現れる何の面白味もない行為において、そこに笑いを見い出していく。
そんな粕山は僕たち同級生の誇りであり、今だ僕が憧れ続けている男であり、いつか彼のようになりたいと、大人になった今でも彼の背中を追い続けている僕がいます。
というわけで、AEDを買いました。
今、ウチの事務所の扉がこういう状態になっています。
「普通、自分の部屋に置かんだろ」というところを「あえて」の購入です。
佐川急便から荷物が届いて組み立ててたらアシスタントたちが
「水野さん、何買ったんですか?」
ってのぞいてきたのでAEDを見せて
「いやー、これでお前たちがいつ心臓発作起こしても助けてやれるわ~」
って言ったら笑い転げてました。
車を買うわけでもない、ゴルフセットを買うわけでもない、普段から節約に節約を重ねて、からのAED。
この面白さ、大人たちには分からないと思うなぁ。
でも、今このブログ読んでる若者たちは
「さすが水野、AEDで来たか!」
と笑い転げてますからね。
若者たちの心をつかむっていうのはこういうことなんですよ。
というわけで若者の皆さんは
必死にマーケティングして商品を作っている大人たちを裏切る意味でも
「あえて、こんなもの買ってみたよ」
「欲しくなかったけど、逆に、買ったよ」
というサプライズ消費に挑戦してみましょう。
これで日本は不況から脱出できるはずです。
※ビックカメラでたまたま見つけて「これで粕山を超えられる!」と鼻息荒げて購入しましたが、今冷静になってみると完全に勇み足でした。正直、後悔しています。しかも使う機会が無い方がいいはずなのに、使わないと40万円がパーという、過去経験したことのない種類のジレンマに襲われています。サプライズ消費には思いもよらない後遺症が存在するので気をつけてください。