ゆめののゆめみ

** 予告 **




 少しずつ、季節が冬に足をかけ始めましたね。西日本ではこれからが紅葉本番ですが、景色からはだんだん色が失われていきます。その無彩に引きずられるようにして、例年この時期には、わたしの編む文章のトーンがどうしても乾いてきてしまいます。

 一番極端だったのは、2015年の同時期に『鉛』というサブテーマでえとわを展開した時かな。わたしが手がけたものの中では一番メタリックで重い話になりました。もっとも。いろんな話を書きたいというわたしにとって、エッジの効いた話を書けるのはありがたいこと。それはそれでいいんですけどね。

 でも、毎年同じトレンドではおもしろくないので、これからお届けする小説では逆張りを試して見ることにします。あえて、輪郭のぼやっとした話をお届けしようかなと。最初はえとわでやろうと思ったんですが、どうしてもその尺には納まらないんです。なので、骨組みを決めてしっかり書き込むことにしました。




(キチャハツ?)



 タイトルは『ゆめののゆめみ』です。文字通り夢絡みの話になりますが、例によってがっつり変化球。まあ、わたしがまともな話を書かないことは、みなさんもうご存知だと思いますが。てへ。

 主人公……というか、狂言回しを高二の女の子が務めます。その子の名前が斉木夢乃(さいき ゆめの)。全ての話に彼女が登場しますが、彼女だけが話を駆動するわけではありません。夢乃の主な役割は、一種の憑座(よりまし)なんです。

 夢乃は、誰かが直近に見た夢の記憶にアクセスして中身を引っ張り出す、夢視(ゆめみ)という能力を持っています。夢を見た人が内容の断片しか覚えていなくても、その大元を復元したり、夢に出てきた人や光景を特定できるんです。再現できたものは文章やスケッチなどの形で具体化し、依頼者に示すことができます。
 しかし。本人にその能力を積極利用するつもりはなく、頼まれれば「いいよー」という感じで引き受けます。ボランティアですね。夢乃自身はごく普通の女の子ですから、夢を解析するとかアドバイスするとか、そんなのは一切できませんし、やりません。「こんなん出ましたけど」って感じ。(^m^)

 読み切り連載の形になりますが、それぞれの話が完全には独立しておらず、時系列に沿ってゆるやかに進みます。それを、順次アップしていこうと思います。一話が四百字詰で三十枚くらいの文量になりますので、話を束ねていけばかなり長くなります。最終的には二十万字くらいになるかもしれません。一話がそこそこ長いので、いくつかに分割して何日かかけてアップしていきます。一応十数話ほどで完結させる予定ですが、アップは不定期になります。もう構想は固まっていますし、十万字以上のストックは作りましたので、話ごとに色がふらつくことはないと思います。
# 一週間で十万字クリアは、新記録だ。(^^;;

 トーンは話ごとに変わります。いろいろなものがもやっと混じり合う形になるかと。夢乃のキャラがぴっかり明るいのでトータルでは明るめだと思いますが、決してきらぴかな話ではありません。まあ……いつも通りですね。

 各話が独立していながら時系列に沿って緩やかに進行するので、雰囲気としては『羊飼い』『らいぶらりあん』に近いかな。でも、内容はずっとごついです。カクヨムでも同時展開しますので、読みやすい方でお目通しいただければ。




(ニオイコベニタケ)



 さて。
 夢は、本来すぐに忘れ去られるものです。夏目漱石の夢十夜にしたって、おそらく夢のあちこちに欠損があり、それを漱石自身が創作で埋めているのでしょう。

 ものすごく鮮明で具体的な夢を見たところで、細部に至るまでしっかり記憶されるってことはありません。印象に残る部分だけ、強調して覚える感じ。覚醒しているわたしたちが無意識にするように、日常の中で繰り返される行動やそれに対する印象は、もし夢の中で再現されたとしても常に記憶から消去されてしまうんです。
 でも、夢の中身がどのように忘れ去られるかは一様ではありません。断ち切られたようにすっぱり消える場合。穴が空いて抜け落ちていく場合、ぼやけたり薄れていく場合。いろんな忘れられ方があり、反対に忘れられず焼きつく夢の記憶もあるわけです。わたしたちは、夢の中ですら記憶の優先順位を定めているのでしょう。

 そして。夢というのはもともと儚くて理不尽ですが、どんなに非現実的に見えても元になっているのは全て現実。夢に形を与えているのは、結局現実なんです。その一方で、夢がいくら鮮明で示唆的であっても、それが直接現実に還元されることは決してありません。
 夢と現実は、不可分の関係でありながら直接のリンクを持たない。そういう観点に立って、一風変わった編み物に挑戦することにいたします。

 各話のタイトルは全て『夢の○○』という形になります。
 普通、『の』で繋げられる構文は前の単語が後ろの単語を修辞することが多いんです。紺の制服、普通のおじさん、多くの聴衆……のように。『夢の』という表現も、形容詞的に使えば(例えば、夢の新素材、みたいに)そうなりますが、夢から装飾を剥ぎ取って単なる名詞にすると、後ろの単語が『夢』を修飾することになります。そんな虚実逆転の感触も併せて味わっていただければ幸いです。

 今回取り上げる『夢』はあくまでも睡眠中に見る夢であって、希望や願望を表す夢ではありません。そこだけは、きっちり切り分けておきますね。

◇ ◇ ◇

 明日から早速、第一話をお届けしてまいります。お楽しみに。(^^)/





  心悲(うらがな)し夢にまで霜降りる朝






Inside A Dream by Mark Ridout



《 ぽ ち 》
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しまする。(^^)/


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