特にイベントごとが好きな質でもないけれど、割引のポッキーがたくさん並んでいるのを見てもったいないからと思って買ってしまう自分に性根の安っぽさを感じてしまう。
(……このポッキーの新作、美味しいな)
仕事の休み時間にぽりぽりかじりながらパソコンと向き合っての仕事は正直しんどい。
「大分行きたいな」
高瀬先輩や多佳子さまの暮らす大分とこの東京を行き来する生活も、最初は大変だったけれど慣れてしまえば楽しく思える。
もちろん仕事なので全面的に休める訳ではないけれど、東京よりも空気がスローな気がしてそれが心地いいのだ。
そんなことを考えていると電話が鳴った。
「はい田み『高瀬だ、来月分の公務のご予定表は出来てるか』
間髪を入れない簡潔なメッセージに小さくため息が漏れる。
先輩のこういうせっかちすぎるところ、ちょっと嫌いだ。
「まだもう少しかかります。出来たら直接お持ちしますんで」
『年末年始のご予定なんだから早めに頼むぞ』
「分かってます。ああ、それと昨日ポッキー食べました?」
『多佳子さまがあまおうのポッキーを分けてくださったが、どうかしたか』
「そういえば昨日ポッキーの日だったなあと。あまおうポッキー今度行ったら探そう」
『……田宮の分なら俺が預かってる、早く終わらせて大分に来ることだな。それじゃあ』
ぶつっと電話が途切れる。
あの微妙な間は絶対に嘘、というかアレだ。本当は私の分ないのに高瀬さんがこっそり私に用意してくれる奴だ。
「なんか餌つるされちゃったなあ」
けれど今日は乗っかってあげよう。
だってこれは先輩の優しさなのだから。



ポッキーの日の田宮+高瀬