こんばんは〜〜〜〜🌛
どうもトギです!
1月9日〜13日まで、新宿シアターブラッツにて上演した舞台「くらげのほね」
皆様の暖かい応援のおかげで無事に終演することができました。
まずは!
ご来場いただいた皆様、応援してくださった皆様
本当〜〜にありがとうございました!!!
舞台を1つ作るってのはめちゃくちゃ大変なことで、時間も手間もかかることで
皆様の応援のお声が無ければ絶対に成り立ちません。
感謝感謝です😭
さて、ここからはトギ的「くらげのほね」の思い出&考察です。
かなりストーリーの細部まで触れますので「DVDを観て初めて楽しみたいんだ!」って方はDVD視聴後に読むことをお勧めします🙇♀️🙇♀️
まずこの公演は「劇団水色革命の活動休止」と「加藤わこ卒業」という大きな冠が2つも乗っかったものでした。
それだけにいつも以上に「絶対に完走するぞ」と意気込んで挑んだ作品になりました。
これはきっと他の劇団員やキャストの方や、スタッフさんもそう思ってださっていたように感じました。
わこちゃんは前々から「卒業公演は脚本書きたいんだよね」って言ってて、私もわこちゃんがどんな本を書くのか気になり過ぎてめっちゃ後押しして笑
本当に脚本書くことが決まって初稿が上がってきた時はとてもテンションが上がると同時に、(なんだかこの世界観すごくよく分かるなぁ)と思ったのが最初の印象でした。
主人公・小鞠の孤独
小鞠には、理想としている世界がありました。
「天国でも地獄でも、死後の世界でもない」世界。
生きている人と死んでしまった人が交流できる世界。
私には夢のような話に聞こえました。
死んでしまった人とはもう会えない。後悔も、伝えたかった気持ちも伝えられない。
それがこの世の摂理ですが、わこちゃんがそんなクソみたいな摂理を飛び越えてくれたような気持ちでした。
「私はずっと1人…。何故かいつも孤独を感じて…」
冒頭の小鞠(演:加藤わこ)のセリフ。これも私の心を読んだんじゃないかと思うようなセリフでドキッとしたのを覚えています。
そこから脚本のブラッシュアップが始まり、脚色・演出のMARUさんだけでなく演者からも色々な解釈や意見が出る中、わこちゃんの世界観をできるだけ崩さず、かつお客様に伝えやすくなるように出来上がって行きました。
私が演じたのは小鞠の妹・桜子。
ストーリーは小鞠が置き手紙を残して旅に出てから3年後の、藺草町という小さな田舎町から始まります。
きっと誰といても、どれだけ話が盛り上がっていても、心の片隅にある孤独を手放せなかった小鞠は、町の中に居場所を見つけられなかったのかもしれません。
それまでも時々は町を出て旅をしていたようですが、その際は必ず置き手紙を残し、長くても〜〜ヶ月後には戻ると明記していました。
最後に旅に出た時も、「短くて2週間、長くて1ヶ月で帰る」と書き置いていたようです。
しかし、その約束を破った小鞠はもう3年も戻ってこない。
桜子の友達や先生が最悪の想像までしている中、当の桜子は漠然と「まぁ、いずれは必ず帰ってくるだろう」と思っていました。
「大丈夫やよ、どっかで、まだもがいてるんだと思うねん、小鞠は」
(小鞠を探しに行くか、との提案に)「こっち(町)来るじゃろ」「そんな気がする」
この辺のセリフ、最初は「漠然とでも信じている」パターンにするか「不安だけど強がってる」パターンにするかめっちゃ悩みました。
ただ、元々の桜子が明るい性格であること、わこの演じる小鞠が生きる理由を、居場所を探しているような動きをしていたことから前者で演じることになります。
これはトギ自身の性格ともリンクして最終的にはとてもやりやすかったです。
一方でどれだけ待っても町に帰ってこない小鞠ですが、彼女は今でも旅を続けています。
これほど長い旅に出るきっかけになったのが、佐山多乃(演:西内琢馬)との出会い。
2人は町の片隅の映画館で出会います。
クソほど退屈な映画を、わざわざ選んで見にくる物好きな2人の若者。
この映画つまんなくない?というか学校は?と小鞠がぐいぐい話しかけ、自己紹介の後に握手を求めたことで、2人は知り合いました。
多乃は後に小鞠に自分の生い立ちを語る際、自分には母親しかおらず、その母親も仕事で家を空けてばかりで、家には酒と煙草とコンビーフが転がっていたと言っており、他にも過去の出来事が原因で死に場所を求めてうろついているような少年でした。
小鞠はそんな多乃に惹かれ、「私が多乃くんに生きる理由を与えます」と共に旅をすることを提案したのでした。
小鞠の中の孤独な気持ちが、多乃の行き場のない孤独に惹かれていったのかなぁと思います。
桜子と藺草町の人たち
前述の「桜子の友達」について。
紬季(つむぎ)(演:ゴんべ)、小海(演:みあ朝子)、煕(ひろし)(演:新八)の3人が桜子と同じ学校に通う仲間たち。
途中桜子は小海から「お前1個下だべ」と言われていたので厳密にはそうだったのでしょうが、田舎の小さな学校なのでその辺の境目はほぼ無いに等しく、誰も敬語など使っていません。笑
後述しますが桜子にとっては家庭が安息の地ではなかったため、この3人と一緒にいる時が心から安心していられる時間でした。
冒頭では近所の兄ちゃんこと、あっくんこと、あくる(演:石川毅)が登場しますが、この人も幼い頃からずっと一緒にいるので3人の友達とほぼ同じベクトルにいます。
ただあっくんの方がそれなりに年上なので、桜子たちがじゃれついてくるのを「も〜〜お前らは〜」と言いながら優しく受け止めてくれてる感じだったのかな。
余談ですがあっくんが桜子を「おふくろさん大丈夫け?」と心配してくれるシーン。
さすがに桜子も「あーうんまあ」とお茶を濁しますが、その次の「まあなんかあったら言うてくれや」って言う時のあっくんの表情が慈愛に満ち溢れすぎていて、毎回心の中でトギと桜子が手を組んで「うわぁ〜〜〜安心感やべぇ〜〜〜」となってました(??)
普段の毅さんの面倒見の良さと、あっくんのそれがリンクした感じがして、すごく暖かい気持ちになるシーンでした。
P.S.毅さん多分これ読んでないと思うけど今回色々甘え過ぎてすみませんでした〜〜!!
この後あくるは出張と称して町を出て東京へ向かいます。
渋谷駅前のスクランブル交差点をお上りさん全開でキョロキョロしていた時、彼の目に飛び込んできたのは小鞠の姿。
あくるはとっさに駆け寄り小鞠との再会を喜びますが、なんと小鞠は「ごめんなさい、どなたですか?」と不審がります。
「8つ上の近所の兄ちゃんやん、藺草町の」と必死に食い下がるあくるを尻目に、小鞠は遅れてやってきた多乃の手を引いて逃げてしまいます。
なんということでしょう。小鞠ちゃん記憶喪失だったようです。
ふるさとのことや、ずっと仲良しだった幼馴染のこともすっかり忘れてしまっています。
これでは3年前に自分が書き残して行った置き手紙や、そこに記した約束のことすらも覚えていないのでしょう。
小鞠は約束を「守らなかった」のではなく「守れなかった」のです。
なぜ小鞠は自分の過去をすっかり忘れてしまったのか…。これは最後の最後で明かされることになります。
小鞠との煮え切らない再会を果たしたあくるは、ひとまず桜子に電話をかけます。
桜子はちょうどお昼休みで学生ズ、そして安住先生(詳しくは後ほど触れます)と賑やかに談笑していた時でした。
「土小鞠、東京におったで」
え???????
もう宇宙猫ですよ。無量空処くらったらこんな感じなんですかね。
いやのたれ死んだとは思ってなかったよ。なかったけど。本当に?????
この時はただただ驚き。混乱。それだけでした。
その後自分だけでこの事実を受け止めきれなかった桜子は、授業を抜け出して職員室の安住先生の元へ向かい、その後早退して家に帰ります。
さて、桜子の帰る先も一筋縄ではいきません。
桜子、小鞠、母の凛子(演:鉾田智子)。ウチら3人で土家ファミリー!
元々土家はとても仲の良い家族でした。凛子さんもまた慈愛に満ちていて面倒見が良く、娘2人のみならず学生ズにもいつでも手を差し伸べるような人だったのです。
なぜ全部過去形なのか。
小鞠が3年も帰ってこない、その3年の中で、凛子さんはショックのあまりボケてしまったからです。
あまりにも大きな愛情に自分が押しつぶされて、小鞠が戻らない事実を受け止めきれなかったのでしょう。
そしてそのせいで、桜子のことを小鞠だと思い込むようになってしまいました。
家に帰ればしっかりと桜子の目を見て「小鞠」と呼ばれる生活。
桜子はよく気が狂わなかったなと結構本気で思います。
桜子が家に帰ってくるシーン、最初の演出では玄関のドアを開ける桜子の姿が見えるようにしていました(舞台セットの都合などで没に)。
その時は、ドアに手をかける前、桜子は深呼吸をして笑顔を作ってからドアを開けるんです。
自分の家のドアだよ???面接会場じゃないよ???
もうこれだけでしんどい。しんどい気持ちを作るために、あえて本番中も袖で深呼吸して、ニコッと笑ってから舞台上に出てました。
子供って親からどれほど酷いことをされても、簡単には希望を捨てきれないって話を聞いたことがありまして。
桜子もきっとそうだったんだろうなと解釈して演じていました。
いくらボケちゃったって、今日は調子がいい日かもしれない。今日は、桜子って呼んでもらえるかもしれない。今日は。もしかしたら今日は。
期待するだけ無駄どころか自分が余計に傷つくだけなのに、どうしてもそう思ってしまう。
そしてやっぱり今日もそれは叶わない。
「桜子が帰ってくるまで待とれな?」
「ええ子じゃね。桜子がなつくわけじゃ」
とにかくやるせない気持ちでいっぱいでした。
で、これは結構最後の方に追加された設定なんですが、桜子はボケて錯乱した凛子さんから、時折暴力を振るわれていました。
中盤、東京から来た2人の探偵を町に招き入れるシーン。
凛子さんはついに桜子の顔を見ても「小鞠じゃなか。あんた誰じゃ?」と言い出し錯乱状態になってしまいます。
こうなってしまうと兎にも角にも母を落ち着かせなければなりません。
桜子も必死で「お母ちゃん落ち着いて、小鞠やよ、ほら」「ここにいるやよ、小鞠だが、お母ちゃん」と叫ぶものの届かず。
凛子さんは桜子を突き飛ばし背中を殴ります。
桜子は突き飛ばされた瞬間、とっさに頭をかばって丸くなりました。
今までもこうなることはあって、そのたびに凛子さんが振り回した腕が当たったり、明確に意思を持って殴ってきたり、そういう経験があったのでしょう。
殴られ終わってからもしばらく起き上がらなかったのは、恐怖と惨めさと諦めのせい。
起き上がってからの表情にも諦念が滲み、すぐ凛子さんを追いかけに行こうともしない。
ここが多分桜子がいちばん不憫に見えた瞬間だったのではないでしょうか。
こんな風にないがしろにされ傷つけられ続けて、桜子はただただ耐え続けていました。
もうこれ書いてるだけで悲しい。涙も出ないくらい辛いシーンでした。
このシーンで桜子、凛子さんと出会った探偵2人組が藺草町に足を踏み入れます。
探偵2人は、東京に事務所を構えて活動しています。
上司の加瀬部(A班演:北潟謙太郎、B班演:鈴木聡一郎)と、部下の佐山(演:岩井杏加)の2人組です。
加瀬部がなぜか3年も前に起きた小鞠の失踪事件を急に引っ張り出し、調査のために藺草町に行くぞ!!と佐山を連れて事務所を飛び出してここに来ました。
ここまでの探偵たちの道のりは、このストーリー上は少し貴重なコメディっぽい場面が多かった印象です。
A班・通称がっちゃん、B班・通称そうちゃん、それぞれ元々の雰囲気も演じ方も全然違うので当然全く異なる演出がついて、両班観た人は結構面白かったのでは。
で、がっちゃんとそうちゃん、さらには演出家のMARUさんにまで散々振り回される杏加さん。笑
余談ですがB班では途中、そうちゃん(加瀬部)を杏加さん(佐山)がおんぶして出てくるシーンがあったんですが、この演出が行われているタイミングで私はちょうどビジュアル撮影をしておりまして…
しばらく別室で写真を撮ってもらった後に稽古場に戻ったら何故か杏加さんがそうちゃんをおんぶしてて「何で!?!?wwwwww」って素で声が出ました。そりゃそうだろ。
ちなみに杏加さんはそうちゃんくらいの重さなら余裕でおんぶできるそうです。怖いね。
そろそろ話を戻します。
探偵2人はドタバタしたり道に迷って遭難しかけたりしながらも、なんとか藺草町の付近まで到着します。
いよいよ町に入るぞ!と足を進めた瞬間、見えない壁のようなものに阻まれ弾かれてしまいます。
向こうの景色は見えているのに、町に入れないのです。
混乱する2人。そんな彼らに近づいて行ったのが、錯乱して桜子を殴った後、ウロウロと徘徊していた凛子さん。
凛子さんが2人の手を掴んで町の方へ引っ張り込むと、2人は見えない壁を通過して藺草町に入れます。
どうしてこんなことが起こったのかは、後に明かされますので今は置いておきます。
さて、小鞠を失いボケた凛子さんと、その隣で耐え忍ぶ桜子の様子をずっと見守っていてくれた人がもう1人います。
安住先生(A班演:山口ひろみ、B班演:武井美緒)です。
安住先生は学校で桜子たち学生ズと日々触れ合っている間柄であり、凛子さんとも学生時代からの友人でもありました。
こちらもA班のひろみさん、B班の美緒さんで全く印象の違う先生でしたね。これぞダブルキャストの醍醐味!
ひろみさんは大阪っぽい、チャキチャキしてて元気で可愛い先生。限りなくひろみさんの普段通りの雰囲気を引き出した先生だったと個人的には思います。表情も感受性も豊かでお母さんがもう1人いるみたいな気持ちでした。
普段からガキンチョトギをあらあら〜〜ってひろみさんが見守ってくれてる感じなので笑、なんか一番自然体でいられた相手かもしれません。
美緒さんは同じ関西弁でも京都風の言葉遣いと仕草で、はんなり上品でありながらどっしり構えていてくれてる感じでした。お昼休みのシーンも小海や紬季がわちゃわちゃ動き回ってる中スッ…と椅子に座って絶対動かないし。笑
ちなみに先生と凛子さんは学生時代からの友人、と先に書きましたが、凛子さん役・ほこさんと同年代に見せるため、美緒さんは老け顔メイクをして舞台に立ってました。すごいのよこれが。ビジュ撮の時知らないスタッフさんが来たのかと思ってビビったくらい全然印象が違いました。本当にすごい。
先生としての立ち振る舞いも相まって普段とのギャップが一番大きかったで賞を堂々受賞です(?)
さて、ダブルキャストで印象の違う部分もあったとは言え、やはり先生の愛情深さ、大人として子供を見守る暖かい眼差しは共通でした。
職員室に桜子と2人きりになった時も、「凛子、最近どう?」「あんまり無理せんとこ、な?」と親身に寄り添ってくれ、「なんかあったら何時でもきてええし、連絡だったって、よこしてええんよ」と少しでも桜子の負担が減らせるよう気を遣ってくれます。
(↑ゲネ写真なので日替わりゲストのところをB班の美緒さんがやってくださってます🙇♀️)
先ほどの、錯乱した凛子さんが桜子を殴った騒ぎの後も、大きな音を聞きつけて家に駆けつけてくれました(同タイミングで煕も)。
ただ、先生は大人なので、寄り添いはするけどそれ以上介入することができず、良くも悪くも「見守っていただけ」の状況でした。
仮に桜子と凛子さんを引き離したところで、桜子はどこに住むのか?凛子さんが今以上にボケてしまうのでは?みたいな現実的な話もあっただろうし。
そんな「凛子さんか桜子のどっちかが死ぬまで、耐え続けるしかない」という残酷な現状を打破しようと動いてくれたのが煕でした。
先生と共に土家を訪れ、相も変わらず桜子を小鞠、小鞠と呼び続ける凛子さんに
「小鞠…帰ってますよ」
「桜子だって桜子として生きてるんず、あなたのそばで生きとるとです、あなたの娘として」
と叫びます。
ここ、桜子は先ほどの探偵・加瀬部と佐山を町の民宿(=紬季の家)に案内しているので家にはおらず、会話も聞いてません。
だけどトギはことの顛末を全部裏で見てるので、毎回勝手に感動し、それを次のシーンに持ち越さないよう勝手に必死でした。笑
煕は普段とても穏やかでおっとりした性格ですが(新八さん曰く足を組んで座るのすら解釈不一致らしい)、実は正義感の強い子なんだなぁと安直ながら思いました。
このギャップを平然と叩き出せる新八さんすげぇ。
あと今回学生ズの女子がみんな声高い人たちだったんですが、ここで凛子さんに現実を叩きつける時は男性の低い声の方が迫力も説得力もあるなぁ〜とこれもまた安直に感じておりました。
キャラ的にも、ここは紬季や小海ではなく、まして「耐え続ける」という選択を自ら取っている桜子でもなく、やっぱり煕だったんだね。
煕ありがとうね。
話を戻すと、正義感を抑えきれなくなった煕が先生に「だったら桜子はいつまで耐えればいいんだが!」と心境を吐露したことが、ストーリー上の大きな転換点になりました。
煕がその場を去った後、先生は一冊の本を取り出し「これ、見てもらおう」と呟きます。
先生が大事に抱えていたのは、この町の人々の情報が載った名簿。
誰が生きていて、誰が何年前に死んでいて…
そういった情報が全部載っている名簿でした。
あ、そうそうストーリー上では最後に明かされますが、この町の住人はほとんど全員が「死んでしまった人」なんです。
「天国でも地獄でも、死後の世界でもない」空間とは、まさにこの藺草町のことでした。
ただし、住人たちは自分がすでに死んでいることを自覚していません。
そんな歪な空間で数少ない「現在も生きている人」があくると安住先生です。
劇場で観てくださった方であれば最後のお墓参りのシーンで気付いた方もいると思います。
安住先生はその真実を知っていながら、生徒や他の住人たちが幸せであるなら、彼らが知る必要はない、と考えていたようです。
しかし桜子と凛子さんの埋まらない亀裂、それをそばで見続けてきた煕の悲鳴を目の当たりにしたことで「今彼らは幸せではない」と感じ、「それならばいっそこの世界を閉じてあげた方がいい」と判断したのでしょう。
ここから物語は終盤に向かって進み始めます。
さて、ストーリー的にはそこそこ遡りまして、先刻のスクランブル交差点であくるから逃げた多乃と小鞠は、ネットカフェで夜を明かすことになります。
多乃はあくるの口から出た「藺草町」を検索しながら「今はこう書かれてるんだ…」と意味深に呟きます。
なんだか気になる小鞠も画面を覗き込み、しばらく見つめた後「ねえ行く」「知りたいの、だから」と藺草町に行くことを決意しました。
何やら焦った様子の多乃が逃げるように外に出ると、そこには2人のあとをつけてきたというあくるの姿が。
ギョッとする多乃に小鞠の様子を問いただすあくる。
同じ頃、藺草町では桜子が小鞠発見の報告を受けたことを知った学生ズが集結。
このシーン、ふたつの場所で別々に進む会話が、セリフを互い違いに話すことで表現されています(これ以上は書きようがないのでぜひDVDを見てください)。
(↑手前が藺草町、奥が東京。)
これ本当〜〜〜〜〜〜〜〜に稽古大変だった……向こうがセリフ1個言ったらこっちが喋る、ということは向こうの会話も聞いてないといけなくて、向こうの言い終わりでテンポよくセリフを言わないといけなくて、でも焦るとミスるし、感情が乗らないのも違うし…………
ここに関わってる全員でヒェ〜〜〜〜!!!!となりながら稽古してました。なんとかうまく行ってくれてよかった…
まぁとにかく小鞠の周りの人々が大混乱の渦中にいる中、東京ではやはり一番大人のあくるが小鞠に改めて始まりの自己紹介をして小鞠もこれに応じ、3人は一緒に藺草町に帰ることになります。
帰ってきた小鞠と藺草町の真実
多乃、小鞠、あくるが藺草町に到着して第一に再会したのは小海ちゃん。
小海は驚きと喜びで小鞠に抱きつきますが、記憶のない小鞠は「誰!?」と言い放ちます。
なんて残酷な。せめてあくるとかにこっそり聞きにいけばいいのにね。笑
最終的に小鞠たちは民宿に向かい、小海は家に帰るということで別れます。
民宿では3人は紬季に再会します。なんせその民宿は紬季の家でもあるので。
3人を迎えた紬季は、別室に探偵たちと桜子がいることを伝えます。あくるは少し躊躇う様子を見せながらも、とりあえず部屋に進んでいきます。
桜子、加瀬部、佐山は宿泊する部屋ではなく待合室的なところに集まっていたので、あくるたちともすぐに出会うことになり…
桜子が小鞠とのドラマチックな再会を果たすより先に、なぜか多乃が声を上げました。
「え…お母さん?」
なんと探偵の佐山さんは多乃くんの実の母親だったのです!!
お母さんこと佐山は多乃の姿を見るなりフリーズしてしまいます。理由は後ほど。
とにかく佐山親子の再会がこのシーンのハイライトです。
当日パンフレットを見て、あれ?佐山ヒカルって人と多乃の苗字一緒じゃん!!って最初から気づいてた人どれくらいいらっしゃるのでしょう…。ちなみに私が観客だったら読み流してると思います。にぶちんなので…。
多乃くんが言っていた、仕事で全然家に帰らず、酒とタバコで部屋を散らかし、申し訳程度にコンビーフを置いていた母親とは佐山さんのことだったんですね。
加瀬部との関係性を見ているとそんなぶっきらぼうな人には到底見えませんでしたが、肉親には甘えてしまうものなのかもしれません。
あとは多感な時期の多乃が自分の印象だけで喋っているので、多少偏りがある可能性も否めませんが…。
突然の再会に驚いた多乃は民宿を飛び出してしまい、佐山も慌てて後を追いかけます。
とにかくギクシャクしていたらしいこの親子、母の方は急にいなくなった多乃が目の前にいる驚きで、多乃は藺草町で再会した驚きで、やはりぎこちなく会話が進みます。
しかし、多乃は佐山に「どうやってこの町に入ったのか」と問い詰めます。なんでそんなところが気になるんでしょうねえ。これも答え合わせは後ほど。
結局多乃は佐山の元から逃げるように去ってしまい、佐山は心配して追ってきた加瀬部からこの町の不審な点を聞かされます。
そしてそこに現れたのが安住先生。手にはずっと大事に抱えていた町内会名簿を持っています。
先生は、町の秘密が書かれたその機密文書を探偵たちに読むように促し、真実に気づいた彼らに「その情報、公表してください」と迫ります。
この町に押し込められた住人たちを解放してやりたい。たとえその真実を知ることになっても、彼らなら大丈夫だと。
探偵たちは困惑しながらも、加瀬部の「この町の人たちの思いを尊重したい」という言葉で真実を住人たちに告げることを決めます。
そして住人たちを町の広場に集め、藺草町の真実を全員に伝えるための集会を開きます。
この集会で、これまでに張られた様々な伏線が一気に回収されていきます。
ちなみにこの舞台は上演時間が約90分。私個人の体感では集会の前までで半分、集会が始まってからようやく後半戦、くらいの気持ちでした。
重いのよ集会が。情報量も多くて多乃や住人たちの感情の揺れ動きも激しいし。
ちゃんと集中して挑まないと空気に飲まれる!と稽古の時から毎回必死でした。
さて、そんな最重要シーンたる集会の場面ですが、冒頭で加瀬部から住人に「先ずあなたたちは日本各地で行方不明になった方々です」と告げられます。
続けて動揺する住人たちに、藺草町で名乗っている苗字と、外の世界のそれが違うことが説明され、これにより藺草町の人々は「名前を変えてこの町に集められた」のだと話が続きます。
もちろんそれは小鞠も例外ではありません。
そして小鞠は藺草町では20歳だったのに、外の世界に出て記憶を失った状態では「17歳です」と言います。
この年の差が何を意味するのか。
外の世界では、もう小鞠の時間は進んでいないということ。
藺草町で「生きていた」時間は、本当は存在しないということ。
つまり、小鞠は17歳で亡くなっていたのです。
そのことが佐山の口から出た時、「なんなんそれ、僕は信じひんよ」と声をあげたのが煕。
「証拠あるんか」と探偵に迫る煕に、加瀬部は例の町内会名簿を渡します。
覗き込んだ住人たちは絶句。
そこには、今生きているはずの自分たちが「既に死んでいる」と記載されているんです。
ショックを受ける藺草町の人々を見て、小鞠は「そういうこと」と何かに気づきます。
「ここはほんとはないんだね?」
「記憶がなかったのは、遺体で見つかったからなんだね?」
そう、藺草町は実存する町を使いながらそこに無理やり情報を上書きして作った空想の世界。
「天国でも地獄でも、死後の世界でもない」場所。
行方不明になって、生きてるか死んでるかも定かではない人々を無理やり集めて築き上げた空間。
そんな状況に、煕は「じゃあ、僕らはずっと家族ごっこしてたってわけなん!?」と声を荒げますが、紬季がすぐに「うちらの関係に嘘あったか?」「たとえそんな事実があったとて、うちらの関係は変わらんだべ?」と諭します。
小海と桜子も同調する中、なんと凛子さんが「桜子」と呼びかけます。
ここ毎回心臓が飛び出しそうでした。なんでこのタイミングだったのかは分かりません。残酷な事実を突きつけられて、子供達を守らないとと本能的に思ったんでしょうか。
でも、数年ぶりにちゃんと自分の名前を呼んでもらえた喜びの前ではそんなことどうだっていいんです。
凛子さんの声で「桜子」と再び呼んでくれただけでとても幸せでした。
しかしそんな喜びも束の間、「ここでの皆の関係は何も変わらない」となぜか多乃が言い出します。
なぜ部外者がそんなことを、と煕に聞かれた多乃は、更に衝撃的なことを口にします。
「それは…僕がここを作ったんだよ?」
「行方不明になった成仏しない魂をここに集めた」
東京から遥々やってきた加瀬部と佐山は、現実世界を今でも生きている人たちなので、本当はここには出入りできないはずでした。
しかし凛子さんに触れたことで藺草町の内部とつながり、結界を通り抜けることができました。
多乃が佐山と再会した時に必要以上に驚いていたのは、「藺草町にいる人=死んでいる人」のはずだったからなんですね。
お母さん死んじゃったの!?という驚きと焦りだったようです。結局佐山から「町の人に手を引いてもらった」と聞かされて杞憂だったとホッとすることになりました。
一方で、こちらも生きているはずの多乃は、藺草町の人に手を引かれることなく藺草町に入れています。
これがまず多乃が藺草町の関係者であるという証拠ですね。
ではなぜ架空の町を丸々1個作り上げたのか。
それがなんと小鞠のためだと言います。
小鞠が既に亡くなっていることは前述の通りですが、その亡くなった要因は、交通事故に遭いそうになった多乃を庇ったせいだというのです。
「小鞠のいない世界なんて無理なんだよ」
大人からしたら少し幼稚に感じるかもしれません。でも自分の家に安息を感じられず育った多乃にとっては、小鞠が人生の全てのように思えてしまうのも無理はないのではないかとも思います。
とにかく、そんなたった1人の感情だけで作られた町ですが、真実が明るみになった以上、もう長くは持ちません。
加瀬部「みんなを成仏させてあげてくれ」
安住「あなたのお陰、ここでたくさんの思い出ができたわ。でももう皆無理やねん。ここでこうしていることに限界があるんや」
という大人たちの説得により、多乃はこの町を終わらせることを決めます。
しかし次の瞬間、多乃は近くにいた小鞠や佐山を突き飛ばしてナイフを取り出しました。
この世界が終わるなら、自分も死んで小鞠と同じ死後の世界へ行く、と言い自分にナイフの切先を向けますが…
「好きよ!」と小鞠が叫んだことで動きが止まります。
小鞠に死ぬ前の記憶はもう戻らない。それでも、なぜか再び出会った時から多乃に惹かれていた。
自分が死んでまで多乃を庇ったのは、多乃に生きて欲しかったから。
生きてさえいれば、心の底から楽しいと、幸せだと思える瞬間が必ず来る。
多乃の目をしっかりと覗き込んで、小鞠はそう伝えます。
「あなたには死なないでいてほしいって思うの。
生きてれば、生きてさえいれば、必ず心から笑えるようになったり、幸せを感じられるようになる」
ここはわこちゃんが、この物語で一番伝えたかったことなんじゃないかな、と私は感じています。
彼女がこの物語を書いた理由は、本人が明かさない限り私から話すことはありませんが、このセリフは限りなくわこちゃんの本心に近いものなんだと思います。
すごく、すごく大切に演じているのがひしひしと伝わってきて、とっても大好きなシーンでした。
結局多乃はこの言葉で自殺を踏みとどまり、藺草町に集めた人々に亡くなった理由を話し、遺品を返してまわります。
小海は生前、学校でひどいいじめを受けていたそう。尊厳を踏みにじるようなむごい仕打ちが続き、耐えきれなくなって自殺したそうです。両親は学校と加害者と、今でも戦っているよ、と髪飾りのポンポンを小海に手渡しました。
小海はそのポンポンに触れた途端、当時の記憶がフラッシュバックして絶叫して泣き出してしまいます。
小海の絶叫はそばにいる私たちまで切り裂くような悲痛な叫びでした。普段の明るくて不思議ちゃんな朝子さんや、これまでのシーンで天真爛漫にはしゃいでいた小海からは想像もつかないような姿。
びっくりはしますが他人行儀に突っ立ったままなのは気持ち悪くて、うずくまった小海に真っ先に桜子が駆け寄れるようにさせて頂きました。
続いて、紬季は好きな男性に振られたショックで自殺。「それで!?」と本人も驚いていましたが、小鞠を失った多乃のように自分の世界はもう終わった、と思ってしまったのでしょう。その後紬季を幼い頃から好いていた別の男性が元凶たる(?)男性をぶん殴り、今でも紬季を忘れることができないんだって、と多乃は紬季にリストバンドを返します。
この時ショックを受けた紬季の元へは凛子さんが歩み寄ります。
元通り優しく愛に満ちた凛子さんが本当に帰ってきたんだ、と心の片隅で暖かい気持ちになる箇所でした。
煕はシングルファザーの元で障がいを持つ弟と育てられますが、弟の世話、学校、バイト…と多忙な生活を送る中でノイローゼになってしまい服薬自殺をします。しかし煕の自死の後、鉛筆を使うこともままならなかったはずの弟が煕との思い出を執筆し出版。売り上げは同じ境遇で苦しむ人々への寄付に充てているよ、と眼鏡を返しました。
桜子と凛子さんは、死ぬ前も本当の親子だったそうです。「小鞠は?」と凛子さんに尋ねられるも多乃は沈黙。
「作られた家族」と桜子が呟くと「そんなわけねえ、小鞠はおらの娘だ」「そんなこと言わないでくれよ」とまた混乱状態に。
桜子が止めに入りますが、多乃はそんな親子に、2人は生前も親子で、色々なことに疲れて心中をしたのだと告げます。
「理由は調べたのですが分かりませんでした」と続ける多乃を、「分かる」と小鞠が遮ります。
この後の、桜子と小鞠のセリフと動きがシンクロするシーン。
劇場入りする2日か3日前くらいに急にまるさんが付け足したシーンです。
突貫工事にはなってしまいましたが、追加してもらえてよかったなとも思いました。
2人が語るのは桜子の生前の記憶。
当時も桜子は凛子さんの介護を一身に背負っている上に、この時も虐待を受けていたようです。
「そんなに私が嫌い?嫌いなら殺してよ」
「毎日毎日私を殴ってばっかりで、それが娘への愛情表現のつもり?ふざけんなよ、クソババア」
もうどうしようもない。これ以上事態が好転することはないだろう。
どっちかが死ぬまで耐えるしかないんだ。だったら、今死んで終わらせてやる。
桜子が崖の方へ歩き出すのを凛子さんが引き止めます。
桜子は悪くない、悪いのは私なんだから私が死ぬ、と今度は凛子さんが崖に向かい歩き始めます。
一旦はそのまま見送ろうとした桜子ですが結局凛子さんの腕を掴んで止めました。
この後の凛子さんのセリフ。
「貴方は私のたった1人の娘」
「どんなことがあっても、私は貴方を愛してる。貴方以上に大切な人なんていないんだから」
「私から離れていかないでね」
なんて大きな愛なんでしょうか。母から子に注がれる無償の愛とは、かくも大きなものなんでしょうか。
仲の良い親子としてこのセリフを聞いていたら、素直に感動することができたと思います。
でも、この時の桜子にとってはそうじゃなかった。
自死を選ぶほどに追い詰められていた桜子にとっては、この言葉は重い重い呪いとして響きました。
母が私を殴るのも、ボケて何も分からなくなるのも、全部わざとじゃないことなんて分かってる。
散々ぶん殴った後で、心の底からこんなことを言われたら恨みきれないじゃないか。
母を憎む自分が悪いのかもしれないとさえ思ってしまう。
たった1人。愛してる。大切。離れていかないで。
あぁ、私の人生はこの人と切り離して存在することはできないんだ。
この人が死んでも、私は心の底から幸せになれることはないだろう。
上記のセリフを言われている間、桜子はだらんと両腕を垂らし俯いたまま。愛してる、と言われた時に初めて凛子さんの目を見ます。
私から離れていかないでね、と抱き寄せられた後、あぁ、私1人で幸せになることは許されないんだ、と覚悟した時に初めて母を抱きしめました。
私だけ幸せになれないんだったら、最後まで一緒にいるしかないのなら、今ここで、一緒に、死んでくれ。
虚無感と絶望感の中で最後の「死にたい」を絞り出しました。
ここは本当にほこさんに引っ張っていただいたシーンだったなと心の底から思います。感謝しかありません。
前述したように本番直前に急に突っ込まれたもので、私はびっくりしてワタワタするしかなかったんですが、凛子さんの愛情深さをほこさんが最初から全開に出してきてくださったので、「感動」するのではなく「絶望」に襲われる桜子も比較的早いタイミングで作り上げることができました。
「水色革命あるある・本番直前にセリフ増える!!」をまさかこのタイミングで私が食らうことになるとは……。
私だけはないだろうと油断していたのでまさに青天の霹靂でした。あーびっくりした。
ただ今回に関しては、桜子と凛子さんの関係にまるさんがかなりご自身を投影していたように(あくまで私が勝手に)感じ、その上でこの追加シーンだったので、これは責任持ってやり切らないといけないな、と気が引き締まる思いでした。
ほこさんと、わこちゃんと、トギの3人にここを任せてもらえたことは素直に嬉しかったです。
で、不思議な回想シーンが終わり藺草町に戻ってきた後、小鞠は「なんか私…生前はあなたたちと知り合いだった気がする」と話しました。
ここはわこちゃんと話し合い、生前は小鞠と桜子はとても仲の良い親友で、桜子の苦労を一番そばで見ていた小鞠の微かな生前の記憶が桜子の回想とリンクして、セリフも動きもリンクしたのかな、と解釈しました。
なので生前は桜子と小鞠は親友で、凛子さんも小鞠と面識があった、のです。きっと。
この後、小鞠と多乃は最初のシーンで2人で見ていたつまらない映画のことを思い出し、愛を伝え合います。
こうして、過去を思い出ししがらみのなくなった藺草町の住人と小鞠は成仏し始めます。
「小鞠、まだいかないで」とすがる多乃に小鞠が「生きる選択をしてくれてありがとう」と告げ、空想の町は静かに消え去るのでした。
最初に書いた通り、物語の冒頭、小鞠と多乃が出会うシーンは映画館。いつ見にきても客席はガラガラのつまらない映画をわざわざ選んで見にくる2人の物好きな若者、という構図でした。
小鞠にとっては多乃との初対面の瞬間ですが、多乃にとっては違います。
死んでしまったはずの小鞠を再現して再び「初めまして」から始まる関係。
小鞠の方に記憶はありませんが多乃は全てを覚えているので、実はその後の2人のシーンにそんな感じの伏線が少しだけ張られていました。
多乃が月が綺麗だねって言って勘違いした相手は生きてた時の小鞠だし(慌てて友達、と誤魔化してたけど)、「私には誰か家族がいるのかな?」と小鞠が言った時「小鞠は…」と言って黙ったのは、きっと彼女の家族構成はこうだったんだよって教えそうになったのを踏みとどまったから。
こういうのがあるから今回ばっかりは2回以上見たらより面白かったんですよ〜〜〜!!!
そして、藺草町が消え去った後の世界。
多乃は映画館でまたあの映画を見ています。その後ろにはあくると安住先生の姿が。
映画を観終わって、あくると先生は会話を始めますが、なぜか多乃には気づきません。
途中から小鞠も現れるものの、こちらも先生たちには見えていないようです。
なんで…と混乱する多乃の脳裏に、母親の声が蘇ります。
その声は多乃が小鞠を失って自殺した後、多乃の遺品の靴と遺書を見つけ、「息子を助けてください。私のたった1人の息子なんです!」と泣き叫ぶ佐山の声。
そこで多乃は、小鞠を追って自身も自殺していたことを思い出します。
多乃がひとりで藺草町を出入りしても問題なかったのは、多乃が町を作った人であるから、そして、「多乃自身も死んでいて行方不明の人だった」からなのでした。
その間に、あくると安住先生は映画館を出て墓地に到着していました。
2人が手を合わせているのは多乃のお墓。2人は藺草町に出入りしても、町そのものが消えても影響を受けていません。
それは彼らが最初から生きている側の人間で、多乃に協力して藺草町を作る手助けをした人たちだからです。
あくるは、行方不明者を町に集めるために触媒として使ったのであろう、住人たちの遺品が入っていた箱を多乃のお墓に返します。
先生は「多乃くんが始めたことや、自分でカタをつけなさい」と声をかけます。
あくるは小鞠の幼馴染、先生は多乃の学校の先生だったようです。虚構の中だけでも、2人に幸せになってほしいと願った結果の行動だったのでしょう。
ちなみにあくるが東京に出張に行っても記憶が混濁しなかったのもこれで説明がつきますね。
ちょっとだけオマケ的な話
ちなみにちなみに、この作品ではたっっっっっくさんの方言が登場します。
すでに死んでいた藺草町の住人たちは、1人で複数の方言を喋っていました。これは違和感を感じた人が多かったようですね。
かくいう私こと桜子も、関西弁、広島弁、なんか東北の方の方言…と喋るごとに違う方言を使ってました。
今までにない試みだったので斬新でとても楽しかった一方で、口に馴染みやすいのと馴染みにくいのとがあったりして大変でした。でもトギは方言フェチなので、さまざまな方言が飛び交う環境はなかなか居心地が良かったです。
1人で複数の方言を使ってしまう点は、それぞれ別の場所に住んでいた魂を無理やり架空の町に突っ込む際に起きたちょっとしたバグだったのでは、と私は解釈しています。
そんな中数少ない「生きてる組」ことあくると安住先生は、関西弁に統一して喋っていました(美緒さんの安住先生は京都弁)。
こっちに気づいた人はあまりいなかった印象。皆さんはどうでしたか?
また、「別の場所に住んでいた魂を無理やり架空の町に突っ込」んだことは住人たちの服装によって表現されていました。
学生ズが同じ学校に通ってるはずなのに、全員バラバラの制服を着ていましたよね。
あれは服装自由の学校だったからではなく、生前は皆別々の学校に通っていて、その当時の服のまま再現されているから、なのでした。
凛子さんは桜子と、冬の山のなかで心中したので、藺草町で家の中にいても、マフラーとニット帽、ダウンの上着を着ていました。
桜子もその時のままの服装なので、学校でも家でもコートを脱がなかったんです。
これはまた面白い表現だな〜と思いました。
世界観をしっかり確立させるのにひと役買ってくれた設定です。
P.S.女子の制服はほとんどのパーツをゴんべからお借りしました。制服選び楽しかった!笑
ゴんべありがとう〜〜!!!
それから、振り返りの中では飛ばしてしまったのですが、日替わりゲストの皆様についても触れさせてください。
世羅りささん、日向小陽さん、キラ☆アンさん、菅野真紀さん、高橋春菜さん、網倉理奈さん
以上6名ものゲストさんが出演してくださりました。
改めまして本当にありがとうございました!!!
出演シーンは短いものでしたが、職員室に入ってきて安住先生に惚気話をして、桜子たちの心配をして、また上機嫌に去っていくというものでした。笑
それぞれ登場の仕方や惚気話の内容が違ったり、小陽さんの回にはお子さんもいらしててんやわんやになってたり……笑笑
皆様の個性をあの短い時間で大爆発させてくださっててめちゃくちゃ面白かったです。
ゲストさんが帰っていくきっかけが桜子の登場だったので、私も数少ないゲストさんと絡める人でした(超一瞬だったけど)。
あ、じゃあ桜子バイバイ〜ってスっと帰ってく人もいれば、アラァ〜〜〜桜子じゃんか〜〜!!!って粘ってくる人までいて、でも次がすごいシリアスなシーンだから私はあんまり悪ノリできなくて…
私ももうちょっと遊びたかった!悔しい!!って思い出でした。笑
物語は終幕へ
話は戻って、物語の最後の最後。
いつもの映画館にて。
私たちは死んでいてもう体もないのに、ここに2人存在しているね、と不思議そうな小鞠。
小鞠はそんなヘンテコな状況を「くらげに骨がある状態だ!」と笑います。
2人は手を繋いでどこかへ消えていくのでした。
終わり。
なんてドラマチックでロマンチックな終わり方でしょうか。
手を繋いで笑い合う2人が、一瞬でも幸せでいられたのなら、藺草町に存在していた甲斐があったってものです。
わこちゃんの脚本はとても壮大で、でも多乃や小鞠には子供っぽいあどけなさもあり、劇的な感じとリアリティがすごく不思議なバランスで共存しているな、と私は思いました。
生きること、死ぬこと、私もよく考えていた時期があったので、また改めて色々と考えさせられました。
わこちゃんすげえよ。私はこの脚本大好きだよ。
私の解釈で間違ってるとこあったらこっそりLINEしてくれよ。笑
ということで、とんでもなく長くなってしまいましたが「くらげのほね」の振り返りはここまでとさせていただきます。
また、本公演をもちまして、劇団水色革命は活動を休止させていただく運びとなりました。
解散じゃありません。一休みです。
きっとまた帰ってきます。
忘れないでね、時々思い出してね!!!
これ以降トギナナミの個人ブログはnoteの方で書いていくつもりです。
既に過去執筆した短編小説などを公開しているので、お時間がある時に眺めてみてもらえたら幸いです。⤵️
https://note.com/togi_nnm
私はまだ劇団入ってから3年くらいしか経ってないけど、もう3年も経ったってよ!!!
色んな思い出をありがとうございました!!!
再開する時はもう2回りくらいビッグになって帰って来れるように頑張ります!!
じゃあの!!!!!!
以上とぎでした!