彼女の好奇心は
底知れぬ深淵のように広がっていた。

それは無慈悲で
道徳の欠片も持たない。

本を開けば
ページの隅々まで目を通し
街を歩けば
誰も気づかぬ影まで注視する。

彼女の目には
世界が隠している全ての秘密を
暴き出す力が宿っていた。

ある日
彼女は町外れの古びた図書館に
足を運んだ。

錆びついた扉を押し開けると
埃まみれの書棚が無数に並んでいた。

その一冊一冊が
長年誰にも触れられることなく
眠っていた。

彼女の手が自然に伸び
古びた革表紙の一冊を引き抜く。

それは禁じられた知識を
秘めた本だった。

ページをめくるたびに
彼女の心は興奮で高鳴った。

だが
その高鳴りは
やがて恐怖に変わった。

彼女は
知ってしまった。

人間の持つもっとも不徳な欲望が
好奇心という名の怪物であることを。

その怪物は
理性の鎖でしか制御できないことを。

震える手で本を閉じると
彼女は深呼吸をした。

知識の甘い誘惑に打ち勝つためには
理性の力を信じるしかない。

彼女はその図書館を後にし
再び日常の中へと戻っていった。

だが
その目は以前よりも鋭く
何かを探し求めるように輝いていた。

神咲みずほ

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