『恋の蛍 山崎富栄と太宰治』松本侑子 | 夕焼けのむこうの国

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山崎富栄の生い立ちから、太宰治と出会って心中するまで、そしてその後の富栄の家族の苦悩などを、山崎富栄の父親の視点を交えながら綴った小説です。

 

富栄と太宰とのやりとりや富栄の心情など、本人たちにしかわかりえないような部分を、よくここまで描けたな~と感心してしまいます。

2012年の小説なのでかなり新しいと思いますが、関係者への取材も入念に行っているようで、すごいな~と思いました。

小説ではありますが、ほぼ事実に近いんじゃないかと思います。

 

意外だったのは、富栄がお嬢様育ちでかなりの英才教育を受けていたこと。

富栄と太宰をあまりよく知らない人は、おそらく富栄のことをカフェの女給のようなイメージで捉えていて、そんなしっかりした家の娘だったという印象は持っていないんじゃないかと思います。

 

富栄の父親は美容学校を経営する実業家で、富栄のことを自分の後継者として最高の教育を与えて、非常に大事に育てていたようです。

さぞ、将来を期待していたんだろうなーと思います。

戦争が全てを狂わせてしまったんですね。

 

しかも、よりによって太宰に出会ってしまったことが、富栄の運命をさらに狂わせてしまった。

戦争が無く、夫も死ぬこともなく結婚生活を送れていたら、富栄も幸せな人生を送っていたのかもしれません。

 

富栄と太宰の心中の後、富栄の家族がどんな思いで暮らしていたかというのも、今まで考えたことのない視点でした。

世間は太宰には注目するけれども、その相手の富栄やその両親の気持ちまで、なかなか思いを馳せることは無いですよね。

 

しかし、太宰ってホントにダメなクソ男ですね( 一一)

富栄は太宰のことをほんとに心底愛していたんだろうけれど、太宰の方は、富栄のことをいいように利用してただけじゃないのかなと思います。

若い富栄をかわいく思う気持ちはあったでしょうが、実際は、貢いでくれて、かいがいしく自分の世話を焼いてくれる富栄が都合が良かっただけじゃないのかと思います。

 

結局、太宰は自分が一番かわいいんですよ。

妻も子も愛人も、二の次で、優先順位は自分が一番なんだと思いました。

それと小説を書くこと。

自分の書きたい小説を書くためには何でも利用するっていう感じがします。

ダメ男なのに、なぜが小説を書く才能だけはあったんですね~。

 

なんでこんなダメ男がモテるのかほんとに不思議です"(-""-)"