わたしね、あなたに会えたから、
この世界に生まれることが出来て良かったって、
そう、思えたんだ。
きみの大きな手のひら。
きみの陽だまりのような笑顔。
きみの体から放たれる甘い香り。
きみの温かなぬくもり。
きみが持つ癖。
きみが見せるしぐさ。
きみが流した涙。
きみの優しさ。
きみがくれた言葉。
きみと過ごした時間。
きみが居た季節。
きみからの想い。
きみへの想い。
どれかひとつを残して、残り全てを捨てなければ
ならないとしたら、わたしはきっとどれを選ぶことも
出来ないまま、ひとつ残らず全てを、捨ててしまうかもしれない。
だって、どれかひとつでも欠けてしまえば、
それはきみでは、なくなってしまうのだから。
きみじゃなきゃだめだった。
他の誰かじゃだめだった。
きみを独り占めしていたかった。
きみの１番になりたかった。
初めての恋。
想いがひとつになって、初めて手を繋ぎ、
初めてぬくもりが重なり合う。
きみにとって全ての初めてが、
わたしだったら良かったのに。
「好きでした」。でも、今ここで、「さようなら」。
「今でも大好きです」。だから、今ここで、「さようなら」。
甘く、儚く、色とりどりの、恋の欠片。
だからこそ、忘れるのに時間がかかった。きっと。
だからこそ、前に進むのに、勇気が必要だった。きっと。
ふたりの恋はこの小さな欠片のように。
・・・・・・・・欠片のように・・・・・・・・・・
「“頑張れ”とか“頑張る”だと
おまえがひとりで頑張らなきゃいけないことになるだろ。
おまえがひとりで“頑張る”んじゃなくて、
これから俺と一緒に“頑張ろう”。
わかった？」
柊太先輩がこんぺいとうを好きな理由。
こんぺいとうは自分の恋愛感に似ていると言った理由。
母がどんな裏切り方をされようと父のコトを今でも愛しているように、
柊太先輩もわたしを、わたし自身を好きでいてくれた。
白色のこんぺいとうのように純粋な彼。
水色のこんぺいとうのように冷静な彼。
黄色のこんぺいとうのように陽気な彼。
黄緑色のこんぺいとうのように自然体な彼。
橙色のこんぺいとうのように温かい彼。
桃色のこんぺいとうのようにたくさんの愛を与えてくれた彼。
どんな過去があろうと、どんな一面を持っていようと、もとの材料は、
中身は同じだったのに。柊太先輩は柊太先輩だったのに。
たったひとつ、過去という色に惑わされてしまったから。
色が変わって見えても、中身は同じ。
好きになった人は好きになった人のまま。
その気持ちを見失ってはいけない。
柊太先輩は、それをわたしに伝えようとしてくれていたんだね。
「風花ちゃんは、将来『手話通訳士』がいいと思う。
そうすれば、本当に大切な人の、叶わなかった夢を、
届かなかった言葉を、今度は違う誰かの心に、
自分の手で、伝えることができるから。」
「こう言ってたよ。どんなに小さくても、大切なメッセージをお互い
見逃すことなく、相手に伝えられるようにするためだって。
それって柊ちゃんのために・・・・」
「あいつの夢は、教師になること。この世界からひとりぼっちになる
生徒を自分の力で、なくすためだって。」
「風花を想って決めた教師の夢。柊ちゃんを想って決めた手話通訳士の夢。
お互いが、お互いのための夢を追う」
「あいつら、離れてもちゃんと想い合ってたんだよ。
知らないうちに繋がってたんだな。」
「あっき。うちね、今改めて感じてるんだ。
「何を？」
「ああいうふたりのことをきっと運命って呼ぶんだって。
それとねもうひとつ」
「大切なのは『過去』より『今』なんだよね。」
風花の気持ちも、柊ちゃんの気持ちもわかってたから、
どっちも同じくらい大切だからこそ、どっちにも力を
貸すことは出来なかった。」
『でもね、勝手だけど、本当は、今も懲りずに願っています。
ふたりがもう一度、隣で肩を並べて同じ歩幅で歩いて
行くことが出来ますようにって。
もう一度、その姿を見ることが出来ますようにって。』
☆わたしが大好きな小説「こんぺいとう」作者美嘉さんです
そして、お気に入りの詩＆セリフをくっつけてみました
☆表紙はこんな感じです
こんぺいとう（上）
こんぺいとう（下）
気になった方はチェックしてみてくださいねっっ