こんにちは。本当の愛と幸せを届ける講演家 中村美幸です。

ご訪問下さり、本当にありがとうございます。

このブログでは、小児がんを患った長男(渓太郎)との闘病、別れを通して知った「幸せ」や「愛」、「命」「生きること」について綴らせていただいています。

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(あと何日、こうしていられるんだろう・・・)

 

余命を数える単位が「月数」から「日数」になった。

 

その日、病室に顔を出した腫瘍科部長が、食事を取ることも忘れ、ただ付き添い続ける私にかけてくれた言葉は、たった一言だった。

 

「お母さんは、大丈夫ですか」

 

それは、我が子との別れを間近に控え、現実を受け入れるしかない私の心を邪魔することなく、ひたすら静かに支え続けてくれた一言だった。

 

(その時のことは、こちらをご覧ください↓)


 

私との会話を終えた先生は、私が添い寝をしているのと反対側のベッドの脇まで歩いてくると、スっと床に膝まづいた。

 

 

(先生・・・)

 

 

白衣を着た先生が膝まづく姿は、渓太郎に懺悔しているようにも見えた。

 

 

(先生が悪いんじゃない・・・)

 

 

 

そう思っていると、上を向いたまま荒い呼吸を続ける渓太郎に、先生はそっと声をかけた。

 

 

「渓太郎くん・・・」

 

 

その声に反応することのない渓太郎の顔をしばらく見つると、先生は、ベッドの柵と柵の間から手を伸ばし、渓太郎の小さな手を包み込んだ。

 

 

その時・・・。

 

 

渓太郎を見つめる先生の口元がかすかに動いていることに気がついた。

 

 

 

(先生は、心の中でなにかを語りかけている・・・)

 

 

(渓太郎だけに伝えたいことがあるんだ・・・)

 

 

 

私はゆっくりと体を動かして、二人から目を離した。

 

 

 

先生の会話を邪魔しないように天井を見つめていると、身を挺して渓太郎の命を守ろうとする先生の姿が蘇った。

 

 

―――抗がん剤を投与する直前「渓太郎くんの体に、こんな薬はいれたくないんだよね」とつぶやいた先生。

 

 

―――渓太郎の体が限界だと伝える先生に食ってかかる私を、全身で受け止め続けた姿・・・。

 

 

 

「渓太郎と離れたくない」という私の思いと、それによって、過酷な延命治療を強いられた渓太郎の苦しみ―――その二つの痛みを同時に受け取ることになった先生は、どれほど辛かっただろう・・・。

 

 

先生の無言のつぶやきが聞こえてくるような気がした。

 

 

「渓太郎くん、苦しい思いをさせてしまってごめんね」・・・と。

 

 

先生がそれを声に出さなかったのはきっと、私の気持ちを守るため・・・。

 

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